[木曜コラム]
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ホームページ作成における知的所有権について
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 最近のホームページの増加には目を見張るものがある。先日、ディレクトリサービ
スを運営しておられるサイバースペース・ジャパンの細江さんにお聞きしたところ、
毎月5000件の新規登録があるとのことだった。
 ところで、ネットサーフィンしていると、「これは知的所有権をクリアーしている
のだろうか」と思われる事例に出くわすことがある。たとえば、有名アニメキャラク
ターの画像などである。インターネットはすでに公開メディアになっており、ホーム
ページの公開は出版活動と同様にとらえることができる。ということは、出版社がや
っているように知的所有権について配慮する必要が、ホームページのオーナーにも生
じるわけだ。個人の方からみれば、「これくらいはいいだろう」と思うかも知れない
が、個人でも出版できる対価として義務も生じることを理解しなければならないだろ
う。
 私は法律家ではないので具体的事例の判断基準を決めようというつもりはないが、
少し早くから出版を生業にしている者の一人として、意見を述べさせていただきたい。
 かつて、ある弁護士の先生に、「法」というのはみんなが安心して生活していくた
め、また社会や文化の発展に寄与するためにある、と教えていただいた。そうならば、
法律を完全に熟知していなくともかなりの部分で一般常識が通じるはずだ、と私は思
っている。実際、私たちは六法全書を読破していなくとも、常識を元に日常生活を送
ることができている。
 私の知的所有権についての常識は1つ、「原著作者に敬意を払う」である。一般に、
自分がゼロから作ったもの以外は、なんらかの権利が原作者に発生していると考える
のが自然である。特に、絵や写真、イラスト、文章などは明確な例である。これらを、
無断で自分のページに貼り付ければ権利侵害になる。では、どういう場合がそれに該
当するかというと、ページを作っているとき「楽をした」、または「得をした」と感
じたら、疑った方がいいだろう。一般に、自分で労力を払っていないのに効果が出る
のは誰かの力を借りている可能性が高い。もしそうだと思ったら、原著作者に敬意を
払おう。
 「敬意を払う」というのは、必ずしも金銭の問題だけではない。実際、インターネ
ットでは、営利目的ではなく、自分の主張や作品を広くみんなに見てほしい、または
使ってほしいと思っている人が多いことだろう。そういう場合は、主旨を著作者に伝
えれば、許諾が得られるケースも少なくない。
 ただし、キャラクターやタレントの写真のように営利が絡んでいる場合は、一般に
許諾を得るのはむずかしい。この場合は、金銭を払うことになるだろう。個人のホー
ムページでどうしてもそれが必要なケースは少ないと思うので、交渉がめんどうな人
はまず使わないことだ。ただ、本の表紙やCDのレーベルなど、それ自体を(前向きに)
紹介する目的で利用する場合は、許諾される可能性もある。たとえば、本紙を紹介す
るために本紙のロゴを使いたいという申し出があれば、内容はチェックさせていただ
くとしても、弊社は無償で許諾するだろう。
 ところで、著作物のコピーではなく「URLを掲載する場合にも許諾が必要だろうか」
という質問をよくいただく。私は、この場合は原則として許諾の必要はないと理解し
ている。なぜなら、それは著作物ではないからである。サーチエンジンなどに登録さ
れているURLは、電話帳に登録されている電話番号と同様、公開情報だと解釈できる。
公開情報、つまり事実の記述は自由だということだ。もしそれまで制限すると、オー
プンなメディアだというインターネットの最大のメリットが失われるのではないかと
心配になる。もし、リンクや紹介をしてほしくないと思う著作者は、その旨をページ
に明記しておく方がいい。
 ただ、許諾はいらないといってもモラルは必要だと思う。明らかに、小人数での利
用を前提としているようなページ、たとえば研究目的などの場合は、関係ない人から
のアクセスが増えることは迷惑かも知れない。また、悪意のある文脈で自分のURLが
登場したら、誰だっていい気はしない。そもそも、この場合は敬意を払う以前の問題
である。
 上記した以外に、著作権法では「引用」という形が認められている。引用なら原著
者の許諾の必要はないが、引用の定義がむずかしく、実際、ホームページの場合は内
容の引用をするよりURLリンクの方が一般的なのでここでは触れなかった。
 インターネットが価値あるものになるためにはコンテンツが重要なのは言うまでも
ないが、そのコンテンツが健全に育つためには知的所有権の問題もまた重要である。
私は、著作権者はオープンな気持ちで、その利用者は著作権者に敬意を払って、利用
していくことが発展につながると考えている。
 最後に、最終的に大事なことは、みんなが共感できる「インターネットの常識」の
ようなものを早く作ることだろう。様々な立場の方のご意見をいただき、次の機会に
ご紹介できれば幸いだと思っている。
(編集長 井芹:internet-watch-info@impress.co.jp)

(96年7月11日)