[木曜コラム]
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パソコンなくてもインターネット
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 今週の26日、ネットスケープコミュニケーションズ社は、パソコン以外の機器での
インターネット利用技術を開発する会社として、ナビオコミュニケーションズを設立
したと発表した。つまり、テレビや電話、ゲーム機などで利用できるNetscape
Navigatorのようなソフトを専門に開発する会社を作ったわけである。
 統計資料を持ち出すまでもなく、現在のインターネット利用者のほとんどはパソコ
ンユーザーである。逆に言えば、パソコンが使えなければ本格的なインターネット利
用はむずかしいのが現状だ。しかし、本来インターネットが持っている公共性から考
えれば、老若男女だれもが利用できることが理想である。特権階級だけが握ってきた
情報を広く一般に公開したインターネットだが、このままでは情報の集中が特権階級
からコンピュータユーザーに移行したに過ぎないことになってしまう。そういう意味
で、コンピュータプロパーでなくともインターネットを利用できる環境の普及は、極
めて重要な問題だと思っている。
 ただ、テレビやゲーム機などの家電に搭載するインターネット利用ソフトは、常に
パソコンのそれよりも機能が低下することになるだろう。CPUの速度、メモリの量、
ソフトのバージョンなど、日々進化を続けるデジタル技術を反映したパソコンは、あ
る意味で「永遠の実験商品」である。逆に、安定した技術と安い生産コストを求めら
れる家電は、進化する技術をどこかで止めてしまわなければならない宿命にある。
 問題は、どこで止めるかだ。電子メール機能は必要だろうか?音楽再生は、動画再
生は、など悩むところは多いはずだ。早めに止めてしまえば見向きもされない商品が
できるだろうし、やりすぎるとパソコンと変わらないほど重たい商品ができてしまう。
 今回の新会社は、そういった問題を本体とは別の判断で行なえるところに期待が持
てる。ちなみに、日本でも、家電で利用できるインターネット利用ソフトの開発が進
んでいる。たとえば、有力ソフト開発メーカーであるアプリックス社は、すでにゲー
ム機などに組み込めるブラウザーソフトを開発しており、セガサターン・インターネ
ットなどで製品化されている。今後は、テレビやカラオケなどへの展開が予想される。
電子手帳、ワープロ専用機など、非コンピュータの情報機器市場を創り出した日本だ
けあって、この分野では米国より先行していると言えるかもしれない。
 ここ数週、ネットスケープ社とマイクロソフト社の熾烈なブラウザー争いが続いて
いるが、もっと広い目で見れば、インターネットを一般層へ普及させるための技術も
また重要である。NCも含めて、今後に注目していきたい。
(編集長 井芹:internet-watch-info@impress.co.jp)

(96年8月29日)