[木曜コラム]
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既存メディアを模倣するインターネット
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 インターネットがメディアであることは、すでに広く認識されてきた。しかし、イ
ンターネットは、私たちが今までなじんできた新聞やテレビなどのメディアとは少し
趣きが違う。その最大の違いはデジタルという点だ。
 既存のメディアでは、その物理的媒体(たとえば新聞なら紙)と内容(記事)は常
に一体になって意味をなしている。つまり、文章は紙に印刷されなければ存在するこ
とすらできない。しかし、100%デジタルメディアの場合は、コンテンツは数字で表さ
れるデータの形で独自に存在することができる。たとえば、それはハードディスクの
中に、またはCD-ROMやWWWサーバーの中にだ。それがひとたびWWWブラウザーなどのア
プリケーションソフトによって呼び出されれば、人の目に見える形になって画面上に
現われる。また、そのデータはワープロでも読み込むことができる。
 つまり、インターネットの世界では媒体と内容が別々に存在している。このことか
ら、最近、内容のことを特に「コンテンツ」と呼び、メディアと区別するようになっ
てきている。
 このようなメディア特性ゆえに、インターネットはあらゆる既存メディアを模倣す
ることができる。たとえば、ラジオはRealAudioに代表されるストリームオーディオ
により、テレビはVDOLiveのようなストリームビデオソフトにより実現されている。
また、いま読者が読んでおられるこのWatchも、電子メールソフトにより新聞を模倣
したものに他ならない。つまり、ソフトウェアさえ作れば文字放送だろうが、FAXだ
ろうが模倣できてしまう。これが「インターネットはメディアの王様」と言われるゆ
えんである。
 ちなみに、それぞれの模倣がどこまで進んでいるかといえば、ラジオはAMラジオレ
ベルならもうすでに実用の域に達している。驚くべきは、その放送設備は数十万円程
度でできてしまうことだ。
 テレビに関してはまだ実用といはいえないが、11日に開局した「W vision
( http://www.w-vision.com/ )を見た人の意見(342人)から総合すると、「画面
が小さい」「音がきたない」「モデムでは遅い」などのネガティブ意見もあるが、
「アメリカで日本のテレビが見られるとは思わなかった」「地上波では見られないレ
アものがあるのがうれしい(クレージーキャッツの秘蔵フィルムのこと)」など、メ
ディアとしての価値を認識されている意見も多かった。パソコンでテレビなど見るの
だろうか、という意見も聞かれたが、やはり動画に期待する声は多い。インターネッ
トが次にクリアすべき今後の大きな目標だろう。
 ところで、「インターネットの真骨頂は既存メディアの真似ではなく、Webに代表
されるインタラクティブメディアにある」、という意見は正論だろう。しかし、上記
したような模倣もまた非常に重要だと思う。なぜなら、既存メディアはすでに広くコ
ンセンサスを得ているからだ。特に産業として考えた場合、その名称(ラジオやテレ
ビなど)、作り方、読み方、値段、広告形態などに長年蓄積されてきたノウハウを使
えることが大きい。また、インターネット初心者でも簡単に入っていける点も見逃せ
ない。
 今後も、既存のモデルを模倣するツールや企画がどんどん出てくることだろう。そ
して、その1つ1つを踏み台にし、真のインタラクティブメディアが完成されること
を期待したい。
(編集人 井芹昌信:internet-watch-info@impress.co.jp)

(96年12月12日)