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特集 閉幕寸前! インターネット1996ワールドエキスポジション(IWE'96)
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●インターネット1996ワールドエキスポジションとは?
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http://park.org/ (セントラル・パーク)
http://park.org/Japan/ (日本ゾーンの入り口)

 1996年1月1日、インターネット1996ワールドエキスポ ジション(IWE'96)が開幕
した。IWE'96は、企業や個人がインターネット上に『パビリオン(=WWWサイト)』
を開き、1996年12月31日までの1年間にわたって世界同時に開催するという、これま
でに例のなかった方法の博覧会だ。
 IWE'96では、「国際社会とインターネット」「個人とインターネット」「マルチメ
ディアとインターネット」などのテーマに沿って、45Mbpsのバックボーンを敷設した
り、一般の人が高速回線を使ってインターネットを楽しめるパブリックアクセスポイ
ントを世界各地に設けるなど、インフラ整備推進の原動力となった。
 日本ゾーンでは、StreamWorksなどを使用した「イベント動画中継実験」や、常時
インターネットに接続できる128Kbps回線を無料で一般に提供する「128KTTHプロジェ
クト」、個人の情報発信を支援するためのリンク「パーソナルパビリオン」などを行
ない、次世代のインターネット利用環境の在り方を探る上でも重要な役割を果たして
いる。
 IWE'96の各サーバーは、基本的には当初の計画どおり12月31日をもって閉鎖される
予定とのこと。コンテンツを他サーバーに移行したりなどの措置は、各国の判断に委
ねられることになりそうである。
 12月31日まで、開催期間もあと2週間あまり。閉幕を目前に控え、ここでIWE'96を
駆け足で振り返ってみたい。

●クロージング・イベント レポート
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 12月6日、神戸ファッションマートにおいて、「インターネット1996ワールドエキ
スポジション クロージング・イベント」が開催された。これはIWE'96に参加した各
地の代表が1年間の成果と今後の課題を報告するというもので、IWE'96創始者のCarl
Malamud氏や、日本組織委員会の村井純氏らによる発表が行なわれた。
 まず、Carl Malamud氏は統括報告の中で「世界中でインターネットの利用者と需要
が爆発的に増えた96年にこうしたイベントを開催できたことは、非常に意義がある。
これまでにインターネットに繋がっていなかった国々が、IWE'96をきっかけにして積
極的な活動を始めるなど、大きな役割を担ってきた」と述べた。
 アジアからの報告は韓国のKilnam Chon氏から行なわれ、「インターネットに接続
されていなかった国が接続されていった、非常に意味の大きい1年だった。特に東南
アジア地域での発展が目覚しく、フィリピンで開催されたAPECやタイ王在位15周年記
念行事などの情報提供を行なうことができた」と語った。
 IWE'96の来場者数については、International Workingの篠田陽一氏より発表があ
り、「サーバーが世界中に分散しているので正確な数字を出すことは難しいが、10月
31日までの来場者数から算定すると、延べ人数で4800~5000万人にのぼる」とのこと
だった。
 しかし、128KTTHプロジェクトのモニター力武健次氏からは、「多数のプロジェク
ト参加者は、WWWでの情報発信に成功している」としながらも「主催者側のサポート
が不十分なため、接続までに苦労した人も多かった。また、日本では有名人参加のイ
ベントが多かったが、インターネットによって変化していく普通の人達の生活を見せ
るというIWEの意義から考えると、本来は128KTTHのようなプロジェクトを積極的に支
援するべきだったのでは」という指摘もあった。

●今からでも間に合うイベント情報
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開催期間の残りは約2週間。IWE'96の代名詞ともいえる「イベント中継」も、あと2件
を残すのみとなった。なお、IWE'96全体を振り返ることができる賞品付きパズルも行
なわれている。

■坂本龍一氏とグラフィックアーティスト岩井俊雄氏のコンサート生中継
http://park.org/Japan/1216/
・中継時刻:12月16日(月)
      リハーサル:15:00~
      コンサート:18:30~ (1時間半程度)
・使用ツール:StreamWorks2.0、RealAudio3.0
水戸芸術館で行なわれるコンサート「MUSIC PLAYS IMAGES × IMAGES PLAY MUSIC」
を生中継する。また、ユーザーがWWWブラウザーの入力フォームから1~88の数字を入
力すると対応する音がコンサート会場のMIDIピアノで鳴るという仕組みを使うとのこ
と。音声・動画からまた一歩踏み込んだ、新しいかたちの中継になりそうだ。

■「ハウステンボスカウントダウンショー'96」ライブ中継
http://park.org/Japan/Kyushu/htb/
・中継時刻:12月31日(火)18:00~26:30
・使用ツール:StreamWorks2.0、RealAudio3.0、VDOLive
今年で5回目を迎える長崎のハウステンボスの年越しイベントを生中継。国内外のア
ーティストによるコンサートのほか、レーザーと5000発の花火によるページェントも
予定されている。なお、ホームページでは「21世紀への夢と希望のメッセージ」と、
イベントの最後を飾る「Beatles Festival in HUIS TEN BOSCH」で演奏してほしいビ
ートルズ・ナンバーのリクエストを募集している(12月31日まで)。メッセージはホ
ームページでも紹介される。

■正解者の中から抽選で賞品が当たる「Walking Rally 第2回IWE'96パズル」
12月20日(金)まで
http://park.org/Japan/Puzzle/
IWE'96日本組織委員会が主催するスケルトンパズル。正解者の中から抽選で当たる賞
品は、東芝リブレット20(1名)、IWE'96 オリジナルTシャツ・マウスパッド&マグ
カップ(10名)、Sun Super Major Series Tシャツ(5名)など。パズルのタテ・ヨ
コのカギは、IWE'96全体や各パビリオンの出展内容に関係するものが多いので、おさ
らいになる。

●ここだけはおさえておきたいお勧めパビリオン
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企業から個人、自治体など、数え切れないほど出展されているパビリオン。このコー
ナーでは、ここだけはおさえておきたいという、編集部お勧めのパビリオンを紹介し
よう。

■sensorium(日本テーマ館)
http://park.org/Japan/Theme/index.html
日本組織委員会が提供するテーマ館。地球上で発生した過去14日間分の地震のデータ
をアニメーションにした「BREATHING EARTH」や、東京工業大学・大野研究室のネッ
トワーク上のプロトコルを音に変換してリアルタイムに聞かせる「NET SOUND」など、
「sense(=感覚)」をテーマにしたコンテンツがある。

■小錦や三島由紀夫など盛りだくさん(日本IBM)
http://www.ibm.park.org/Japan/planet/home.html
日本IBMのパビリオンは、相撲の小錦関のページ「小錦の部屋」や、三島由紀夫文学
館の完成にさきがけて作られた「三島由紀夫Cyber Museum」、VRMLでお伊勢参りする
「伊勢神宮」など盛りだくさん。「小錦の部屋」では、12月31日の小錦関の誕生日に
向け、バースデーカードを募集している。

■オノ・ヨーコの詩を1日1編掲載(大日本印刷)
http://dnp.sv.expo96.ad.jp/yoko/
大日本印刷パビリオンでは、「ACORNS」と題して、オノ・ヨーコの詩(インストラク
ション)を1日1編、100日にわたって掲載している。また、読者がオンラインでメッ
セージを送ることにより、テーマが発展していくというコラボレーションも試みられ
ている。

■自動追尾カメラやVRMLなどを実験(ソニー)
http://park.org/Japan/Sony/
ソニーパビリオンは、自動追尾カメラを使って水槽の魚を追いかける「お魚追尾
NetCam」や、VRMLで江戸の街や展示会などを再現する「Virtual Sphere」など、実験
的な試みを展示している。

■広島パビリオン(広島県)
http://park.org/Japan/Public/Hiroshima/html/index2.htm
県の国際貢献に対する取り組みや、厳島神社と世界文化遺産にも選定された原爆ドー
ムを3次元CGで紹介するなど、「世界の中の広島」を意識したページづくりになって
いる。

●128KTTHプロジェクト
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http://park.org/Japan/128KTTH/

128KTTHプロジェクトとは「128Kbps To The Home Project」の略で、常時インターネ
ットに接続できる128Kbps回線とパソコンを、無料で一般に提供するというもの。300
の家庭に提供され、WWWによる情報発信などに活かされてきた。すでに、97年1月に回
線および機材を回収することがアナウンスされているので、各ユーザーがほかのサー
バーに移行しない限り、128KTTHモニターによるホームページは見られなくなってし
まうとのことだ。

■Moto's Web Server
http://tky068.tth.expo96.ad.jp/
ソニー株式会社のサーバーで運営されていたミュージシャン佐野元春氏のホームペー
ジも、128KTTHプロジェクトに参加している。12月16・17日の武道館ライブのレポー
トや、12月24日にはRealAudioによるクリスマス特別番組が予定されるなど、活発な
活動を見せている。128Kbps回線の回収後は、商用プロバイダーへ移行してサーバー
運営を続ける予定とのこと。

■クムスタ オンライン(KUMUSTA Online)
http://park.org/Japan/128KTTH/tky111/
「KUMUSTA!」は日本語/タガログ語バイリンガルの月刊誌で、そのオンライン版がこ
のページ。日本語版とタガログ語版ページが用意されているので、フィリピンからの
アクセスも多いとのこと。

■128KTTHプロジェクト:その計画と現実
http://www.nn.iij4u.or.jp/~kenji/diary/128ktth.html
クロージング・イベントで報告を行なった128KTTHプロジェクトのモニター力武健次
氏は、自身のホームページに発表の内容を掲載している。実際に128Kbps回線を使用
した実感や、様々な問題点が指摘されており、興味深い。なお、こちらは個人の日記
なので、無断転載は厳禁だ。

●The Medal Pavilion
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http://park.org/Pavilions/Medal/

日本ではあまり知られていないが、IWE'96では優秀なパビリオンに対して賞を贈って
いる。開催に貢献したスポンサー企業に贈られるプラチナメダルは夏に発表されてい
るが、個人パビリオンに登録した中から選ばれる金メダルと銀メダルについてはビジ
ター投票で随時決められることになっており、12月16日現在も投票を受け付けている。
既に決定している金メダルの中から、いくつかのパビリオンをご紹介しよう。

■葡萄酒(ワイン)Wine Vin Vino
http://www.wizvax.net/yuichi/
日経NetN@viやHanakoなどの雑誌でも紹介されている、日本の吉田裕一さんが作成し
たワインのページ。ビンの写真と飲んだ感想でつづる「ワイン日記」や、ワイナリー
の見学記などがすっきりとまとめられている。日本語版だけでなく英語版も用意され
ているので、日本のワインを世界に紹介するという意味でも、素晴らしいページだ。

■The Classical Music MIDI Archive
http://www.prs.net/midi.html
膨大なデータ量を誇るクラシック音楽のMIDIファイルのページ。ピアノ曲からオーケ
ストラ作品まで、3050曲が揃っている。検索エンジンやアルファベット順のインデッ
クスがあるので、曲名や作曲家名から目当ての作品を探し当てることができる。

■Egypt's Information Highway project
http://www.idsc.gov.eg/
エジプト政府観光省のホームページ。「文化」「観光」「環境」などのカテゴリーに
分けて、エジプトの歴史や現在を紹介している。英語から古代エジプトの象形文字に
変換してくれる「Automatic Transformation from English to Hieroglyphics」など
があり、日ごろなかなか触れる機会が少ないエジプトの文化を知ることができる。
[Reported by takasaki@impress.co.jp / masaka@impress.co.jp / Watchers]

(96年12月16日)