[通信事業/NTT] ---------------------------------------------------------------------------- NTTが「ADSL実証実験」の模様を報道陣に公開 「全加入者に対して伝送速度を保証してのADSL適用は無理」 ---------------------------------------------------------------------------- 日本電信電話株式会社(NTT)は、5月30日に新聞、雑誌などの記者を対象にした 「ADSL実証実験見学会」を茨城県つくば市のNTTアクセス網研究所で開催した。ADSL は、既存のメタル電話線を使って高速通信を可能にする技術で、導入についての同社 の動向が注目されている。 NTTアクセス網研究所では、実際に電話線として使用されていたメタル線を用いて、 研究所構内に約7kmのアクセス網を構築し、現在は「一次技術評価」期間としてADSL の持つ可能性や問題点を探る実証実験を行なっている。使用されるメタル線は、実際 の条件に沿って紙絶縁のものと、プラスチック絶縁のものが用意され、また、ADSLモ デムについては、8社の9製品が評価の対象になっている。 一次技術評価の段階で問題となっているのは、各社から発表されているADSLモデム の機能。特に最大伝送距離が問題となっており、電話局から家までの距離によりかな りの変化が出る。実際に実験を見たところ、距離が1kmに設定した場合、毎秒7.6Mビ ット出るが、3km離れると毎秒5.1Mビットにまで減衰していた。また、ISDNの干渉も 大きな問題となっている。複数の回線が束になっている電話線ケーブルの中で、ISDN 用の回線とADSL用の回線が同じ束にまとめられるか、または、隣接した束にあるだけ で干渉を引き起こす。つまり、同一区域、例えば隣の家でISDNを利用している場合に は、ASDLの利用は事実上困難になるということだ。ほかには、ブリッジタップ(分岐 線路)による干渉による伝送速度の不安定さも問題点とされている。 現状の実験結果をもってNTTでは、「全加入者に対して伝送速度を保証してADSLを 適用すること」はできないとしている。また、メタル線を増設して全加入者にADSLを 適用することは、「NTTの事業経営上耐え難い」ともしている。同社では2010年の全 家庭を光ファイバー網でつなぐ計画を持っており、ADSLについては、過渡期をうめる 技術としての採用もありえるといったスタンスで実証実験を進めているようだ。また ADSLを導入するとしても、適用方法(伝送速度を保証する代わりに加入者を限定する か、加入者を限定しない代わりに伝送速度を保証しない)をどうするかといった問題 が残されている。この点については、望ましい形についてユーザーやベンダー、郵政 省らによって議論する必要があるとしている。 [Reported by okiyama@impress.co.jp] (97年6月2日)