昨年から本格的に始動したエレクトロニックコマースだが、昨年まではそのほとんどが実験的に行なわれるもので、実際に使える所は少なかった。しかし今年になってようやく私たちにも利用できるものが増えてきた。一口にエレクトロニックコマースや電子決済と言っても、クレジットカードを使った支払いから、カラオケを一曲歌ったときにわずかな金額を支払うといったような使い方まで幅広い。このシリーズでは、WWWサイトのセキュリティの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素を検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。
さて、2回目はプリペイドカードでデジタルコンテンツを買うことができる『BitCa
sh』をお送りする。
BitCashは、インターネット上で画像や音声といったコンテンツを買うための小額決済用プリペイドカード。BitCashの最大の特長は、匿名性があるところだ。このビットキャッシュカードは書店を中心に販売されており、カードを書店に買いに行くという手間がかかる反面、名前を名乗ってカードを購入するわけではないので、誰がカードを購入し、インターネット上でどんなコンテンツを利用したかが解らない『匿名性』が実現されている。
現在売られているビットキャッシュカードは、1,000CREDITと2,000CREDITの2種類で1,000CREDITは1,000円となっている。つまり1CREDIT=1円というわけ。カード自体は特殊なものではなく、4文字×4行のひらがなと12文字×2行の英数字が銀色の膜で隠されているだけだ。この膜をコインなどで削り、出てきた文字列をWWW上で入力することで支払いができるしくみ。テレホンカードの様な磁気タイプのプリペイドカードと違い、カード自体には利用金額や残高情報は持っておらず、BitCashセンターで一元管理されている。仮に落としたりコピーされた場合は利用されてしまう恐れはあるが、買ったカード額以上の被害はない。このようにカード自体よりも、カードに記載されている文字に秘密が隠されている。よってカードの利用範囲を限定することができるので、単に現金の代わりとしてではなく、雑誌や本の付録など利用回数を限定する情報提供手段としての利用も考えているようだ。
購入までの大まかな流れ
まず、BitCashのWWWサイト、カード取扱店一覧からビットキャッシュカードが買える書店を探してみよう。現在、紀伊國屋書店や三省堂など全国約100店舗でしか扱っていないため、まだ手に入りにくい地域も多いだろう。
実際に松戸の伊勢丹内にある紀伊國屋書店へ行ってみると、レジ近くにBitCash正
規取扱店シールとパンフレットがあった。店員に「BitCashください」と言うとすぐ
に分かってくれた。2種類のカードが置いてあり、1000CREDITのカードはBitCashの文
字がデザインされているカードだったが、2000CREDITのカードはTOKYO DECADENCEがデザインされたカードだ。これもいつの日か「プレミアが付くのかな」と思いながら1枚ずつ買ってみることにした。
BitCash使用時の大まかな流れ
BItCashは6月6日にスタートしたばかりなので、利用できるWWWサイトはまだ3店舗と限られている。現在のサービスの中で村上龍氏の小説が読める「TOKYO DECADENCE」があるので、これでBitCashを試してみることにした。ちなみにTOKYO DECADENCEとは、坂本龍一氏と村上龍氏が共同で行なっているサービスで、英訳版の「トパーズ」や書き下ろし連載「THE MASK CLUB」などが坂本龍一氏の音楽を聞きながら見ることができるというもの。詳しくは本誌記事('97年6月6日号)を見て欲しい。
TOKYO DECADENCEへの入会申し込みはWWW上で行なえる。料金は、1,680CREDIT(1,680円)。BitCashでの決済を選択すると(ほかにFirst Virtulでの決済方法もある)、カードに書かれているひらがなの情報を入力する画面が表示される。入力すると確認画面になり、最後に『購入』ボタンを押すとIDとパスワードが発行される。IDとパスワードがあればTOKYO DECADENCEに半年間いつでもアクセスできるというしくみだ。
ちなみに、カードに残っているCREDITが足りなかった場合にどうなるのか試してみたところ、「残高が足りない」というメッセージが表示された。またカード情報を間違って入力した場合は、「カード情報が間違っている又は残高が0の場合は利用できない」というメッセージが表示された。
TOKYO DECADENCEのホームページより、ENTRANCEへ入ってみる。後は先ほど取得したユーザーIDとパスワードを打ち込めばOKだ。さてデカダンスとは一体?これより先は入会して貴方の目で確かめて欲しい。
カードを使っているうちに、カードにいくら残っているか分からなくなるだろう。そんなときは、カード残高の確認をしよう。確認方法はWWW上のフォームでカードに書かれている文字を入力し、送信ボタンを押せば即座に確認することができる。
またBitCashでは複数のカードを使って1つの支払いをすることはできない。そのため少しずつ残ってしまったCREDITをまとめる方法が用意されている。カード残高の引継(では、2枚分のカードのひらがな情報を入力すると、1枚目のカードにCREDITが合算され、2枚目に入力したカードは残高が0CREDITになり同時に利用できなくなる。残高などの結果を表示させるときは、SSLが実行されていて安全性にも考慮がなされている。
購入から支払いに至るまで、名前や住所といった個人情報を全く必要としないBitC
ash。現時点では店舗でカードを購入するしか方法が無いため、これらの販売場
所をさらに増やして行く必要があるだろう。
また、TOKYO DECADENCEは「18歳未満の入場は禁ずる」と表示はされているのだが、BitCashの性格上利用者のチェックは行なえない。決済技術では無い部分で問題点が残るところだろう。
ちなみに、カードの銀色の膜に覆われていた部分を見ると、4文字×4行のひらがな以外に12文字×2行の英数字のカード情報がある。これはひらがなが使えないコンピュータで、BitCashを利用したいときに使うものだが、現時点では残念ながら対応しているところはない。
●購入にあたって
入会条件:
特に無し
●利用にあたって
プラットフォーム:
1.SSLが使えるブラウザ(SSLは使わない方法も用意される)
費用:利用料のみ(年会費等はない)
利用技術:SSL
評価基準(三段階評価)
設定の簡便 :★★☆
安全性の配慮:★★☆
利用金額 :★☆☆
コメント:
○設定はまったく無く、日本語環境でSSL対応のWWWブラウザさえあれば、即利用できる。
○安全性ではWWWブラウザで利用番号を流すときにSSLを使っている。SSLが使えない環境のためにやや安全性は落ちるがSSLを使わないようにもできる。カードの利用可能金額が少ないため、利用キーワード自体が解読されなければ大きな問題にならない。
■BitCash
http://www.BitCash.co.jp/
■Book Park
http://bookpark.topica.ne.jp/
大手出版社のコンテンツを販売する「Book Park」。現在は以下のものが利用できる。
■ドリーム・アーツ
http://www.dreamarts.co.jp/da/press/970611.html
7月18日からデジタル・アニメーション・ショップを開設
('97/6/27)
[Reported by Watcher小林]