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奥さんに使ってもらえるサービスを作りたい アイビィ・コミュニケーションズ社長 永沢和義氏(後編)
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● 社長業に執着はない
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手の表情が豊かで、身振り手振りを交えてハイペースでさまざまな話題が飛び出す。内容的には一歩引いた、冷静なコメントが多いのだが、ついついお話に引き込まれてしまう
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僕は社長業には執着はありません。だから、もし他に「おもしろいな」と思った仕事があったら、やめてそこに行ってしまうかもしれません。ただ、今はすごく面白いのでそんなことは考えていませんが。
本当は、会社より労働環境や誰と仕事をしているかが大事なのではないでしょうか。今一緒に働いている連中はすごくいい連中なので、仕事がすごくやりやすいのです。
社員を増やしたいとも正直あまり思っていません。人間関係の面倒くささで煩わされるのが嫌なのです。10言っても1わかってもらえないのはつらいので、やりたくないのです。「なんでお金を払って教えなきゃいけないの」と思ってしまうので(笑)。今は、年代も近く家庭持ち同士と環境が似ていて、1言うだけで10返ってくる社員ばかりなので、すごくやりやすいですね。
● 社員が仕事をしやすくするのが社長という仕事
社長だから社員に「これをしろ」ということはまったくなくて、社員も納得をしないとやりません。納得させないといけないので、ある種の戦いがありますね。継続性や発展性、社会的意義のある仕事でなくては、うちでは納得させられないのです。
仕事で関わっているすべてが好きで趣味の延長線上なので、ストレスはまったくないし、苦しいとはまったく思いません。毎日のように新しい技術が出てくるのが面白くて仕方がないし、すぐに使ってみたくなります。勉強もしなくてはいけないのですが、それがまた楽しくて。現場の技術者はかえって新しい技術がわからなかったりするので、僕が流行っていることや新しいことを教えてあげることもあります。
社長と言っても、僕は基本的に常に下っ端みたいなものです。実際に作る人が一番偉いと思うのです。僕は、作る人たちが余計なことをしなくていいような環境を提供してあげる役だと思っています。資料を集めたり、英語だったら邦訳したり、マーケティングも営業も、技術以外なら何でもやります。
会社の方向性を決める、なんて事に技術者は関わり合いになりたくないじゃないですか。そういう部分まで引き受けるんで社長という肩書きが便利なだけです。
● 自由にやりたい。だから自己資本100%
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「現金で商売しているうちは会社はつぶれません。お金がなかったら買わなきゃいいし、自分の給料を減らせばいい。」
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自由にやりたかったので、どこからも借り入れなしで自己資本100%です。見える範囲で収めておくと楽ですね。現金で商売しているうちは会社はつぶれませんから。お金がなかったら買わなきゃいいし、自分の給料を減らせばいい。柔軟なことができるのは小さいからなんですよね。
うちにもベンチャーキャピタルがたくさん来ますが、断っています。苦労しないで入ってきたお金はあっという間に出ていくものです。ただ、家を抵当に入れて死に物狂いで働いて成功している人もいるので、そういうやり方もありとは思います。
起業後に一番きつかったのは、アメリカの9.11(同時多発テロ事件)でした。事件後しばらくは人もモノも動きが止まってしまったし、実体経済や社会にまで影響が及んできて、僕たちまで仕事が無くなってしまったのです。おかげで、仕事が入ってくる時期だったのに、取れるはずだった仕事が入らなくなってしまいました。仕事がなくて困り、知っている人に頭下げて仕事をいただいて、なんとか食いつないだものです。
● もっと会社を有名にしたい
仕事で売上を上げていくのは大切ですが、自分たちがやりたいことも大事です。何かくると思った時に、すぐに動ける状態をキープしておくことが大事だと思っています。そのためには毎日勉強しておいて、時代がどう動いているかもキャッチアップしておかなければならないと思います。
今は、Webのシステムとデスクトップアプリケーションを作っているのですが、「鮮度がいい魚を手に入れるにはこの魚屋さんに来ないと」という店のようなソフトウェアの開発会社になりたいですね。なくなると困るという存在になりたいのです。一度一緒に仕事をすればそれがわかってもらえると思うのですが、まず存在を知ってもらわないことには何も始まりません。そのために、うちはもっと有名になっていかなければならないと思っています。
● 奥さんに使ってもらえるサービスを作りたい
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「URLって何?」って質問してくるうちの奥さんに使ってもらえるサービスを作りたい、という。「使ってもらえたら成功なんですが、これがどうにも強敵で。絶対に使ってくれないんですよね(笑)」
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僕の奥さんはこれまでずっとブログをやってなかったのですが、最近ココログでブログを始めたんですよ。サッカーの宮本恒靖選手のファンで、彼のブログパーツを張りたかったからだそうです。
奥さんが「これすごく便利なの。新しい記事を書くと宮本選手がNEW!と新しい記事タイトルを教えてくれるの。それをクリックするとその記事が読めるのよ」と言うんです。
それなら、僕は5年前に同じようなサービスをやっていたよと(笑)。「宮本選手のブログをBlogPeopleに登録したら新しい記事がわかるんだよ」と言うと、「でも写真載せられないじゃない」と言われる(笑)。
うちは食事のメニューが貧しいんですよ。たしかに毎日のメニューを考えるのはたいへんですからね。そこで、酒・料理カテゴリーに入っている写真を掲載しているブログを毎日6記事ずつ紹介する「今日のお勧め献立」コーナーをBlogPeopleで始めたのですが、奥さんが見てくれないんです。
そこで奥さんが利用しているココログに話をして、サイドバーに張れるようにしてもらって、ついでにトラックバックピープルなども使えるようにしたんです。
それでもしばらく奥さんからの反応がないので、「うちのサービスがココログで使えるようになったの知ってる?」と聞くと、「知らない」と。見てもらったのですが、「いらないわよ、こんなの」と言われてしまって。結局採用してもらう計画が頓挫しているわけです。
よく、サービス開発者の「うちのおばあちゃんに使ってもらえるようにサービスを作りました」とかいう話がありますよね。僕の場合は奥さんがポイントなんです。奥さんに使ってもらえるサービスを作りたい。使ってもらえたら成功なんですが、これがどうにも強敵で。絶対に使ってくれないんですよね(笑)。でも、あきらめずに「これなら奥さんも使うだろう」というものを考えたりしているんです。
奥さんは基本毎日ブログを書いているみたいです。僕は見ていなくて、ブログ名は知っているんですがURLは知りません。奥さんも僕のブログはまったく見ていないようです。WindowsとMacの違いがわからなかったり、「URLって何?」って質問してくるうちの奥さんに使ってもらえるサービスをいつか作りたい。それが夢なんですよね(笑)。(おわり)
(→ 前編をみる)
関連情報
■URL
永沢和義氏のブログ「Modern Syntax」
http://www.aivy.co.jp/BLOG_TEST/nagasawa/
アイビィ・コミュニケーションズ株式会社
http://www.aivy.co.jp/
BlogPeople
http://www.blogpeople.net/
「BlogPeople」永沢氏インタビュー(BB Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/blogrelay/7344.html
■関連記事
・ 奥さんに使ってもらえるサービスを作りたい アイビィ・コミュニケーションズ社長 永沢和義氏(前編)(2008/03/10)
2008/03/11 11:09
取材・執筆:高橋暁子 小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。 PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。 |
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