| |
|
|
|
|
|
|
|
技術を武器に、世界で通用するサービスを作りたい プリファードインフラストラクチャー社長 西川徹氏(後編)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
● 学生だからこそできた“起業”
就職はまったく考えていませんでした。それより、自分たちが作った技術を広めていきたい、夢を達成したいという気持ちがありました。無理なら無理なほど、達成する価値があると思うのです。失敗してものたれ死ぬことはありません。学生だからやり直しもできるし、冒険できると思いました。だから学生のうちに起業したかったのです。
エンジニアだったらベンチャーを経験しておくのは悪いことではないと思います。今ならGoogleにも行けるし魅力的な選択肢はいくらでもあります。けれど僕は、今の道が一番自分たちの能力を生かせると思ったのです。他の企業に行っていたらきっとこんな経験はできなかったでしょう。
両親、特に母親は猛反対していましたね。しかし、会社を作ってしまえば反対もしなくなるだろうと思い、とにかく起業してしまいました(笑)。順調に回り出した今では、母親は事務作業の協力をしてくれるようになっています。
● 力を合わせるからこそできること
メンバーのバックグラウンドはバラバラです。僕はハードウェアを作る研究室にいたし、自然言語が得意なメンバーや、プログラミング言語やOSの研究をしているメンバー、生物の分子のコンピュータ解析をしているメンバーもいます。
ソフトウェアは技術が優れているだけではダメで、色々な要素がないと動きません。それが自分たちで完結できるところが僕たちの強みです。みんなが力を合わせることで、いろいろなことが可能になります。
技術そのものを広めていきたいというのが願いです。技術に価値を与えられるなら、お金はそれほどいらないとさえ思います。うちの強みは何と言っても人。人が持っている技術的強さを生かしていきたいのです。
● 受託仕事ではなく共同研究を
創業以来、収入がゼロで苦しい時が続きましたが、それでも「完全な下請けとなる受託仕事はしない」という決意は貫きました。受託仕事は一時的には収入になりますが、契約が終わったら生成物の知的財産権も含めてクライアントに移転してしまい、資産が残りません。それに、そうした受託業務では、より低コストで開発可能な中国やインドなど、人件費の安い海外企業に仕事をとられてしまうリスクもあります。
あくまで協業や共同研究という形を取って、自分たちがアイディアを出せない環境では仕事はしないことにしています。共同研究の契約を結ぶのは大変ですが、僕らの財産は人であり技術なので、権利を残しておくことが、会社にとっても息長く続けることにつながると思うのです。
プログラミングは楽しくやらないとつらいものがあります。だから、これからも積極的に共同研究に取り組んでいきたいですね。違う会社と協力して製品を作り上げることで、学ぶことも多いし成長もできます。
● 営業マンを入れて大きくしたい
|
現在は導入して効果が出たらお金をもらう成功報酬的システムを取っている。「これは、プログラムを書く速度が速いからこそ可能になるやり方だと自負しています」
|
2007年3月にはエフルートの携帯向け検索サイト「F★ROUTE」にSedueを提供、5月にはシーエー・モバイルと技術提携して、シーエー・モバイルが開発する検索エンジンの基幹技術としてSedueが採用されました。
オフィスも広くなり、社名を株式会社に変えました。メンバーは現在全員開発者で、自分だけが営業も兼ねているのですが、やはり専業の営業マンがほしいと思うようになりました。今回オフィスを広げたのは、営業マンを入れたいという思いがあってのことです。
最近、社会人経験のある人の入社面接をしました。5月に入社が決まったのですが、自分が就職活動を一切しなかったので、面接時にどんなことを聞けばいいのかもわからなくて、ネットで調べたりしました(笑)。
製品の値段は正直悩みの種ですね。会社がまだ小さいので、「効果があるの?」と言われることもあり、効果が出せないと申し訳ないのもあります。そこで、導入して効果が出たらお金をもらう成功報酬的システムを取ることもあります。
これは、プログラムを書く速度が速いからこそ可能になるやり方だと自負しています。メンバーの手にかかると瞬く間に作れてしまうので、コストパフォーマンスはかなり良くなります。
● Googleを超える検索エンジンを目指す
すでにGoogleがあるのに、うちみたいな小さなベンチャーが検索エンジンを手がけて勝ち目があるのかと思われるかもしれません。しかし、検索エンジンが生まれてからの歴史はまだ短いです。検索エンジンの精度はまだ完璧にはほど遠く、やれることはいくらでもあります。技術次第によっては、勢力地図は塗り替えられると考えています。挑戦するだけの価値は十分にあると思うのです。
たとえば、Googleと連想検索エンジン「reflexa」とはまったく違います。Googleは“物知り博士”ですが、聞かないと教えてくれません。僕らが目指すのは、“わかると嬉しいがどうやって調べればいいかわからないもの”がわかる検索エンジンです。
たとえば、レストランで美味しいワインが飲めるのはソムリエが教えてくれるから。素人が銘柄をずばり言い当てるのは難しいでしょう。そのように、物知り博士に気の利く新妻的な面が加わったような、“コンシェルジュ的な存在”を目指しているのです。
● 技術を武器に、新しいことに挑戦したい
|
生意気かもしれませんが、「IT企業なら技術を売りにしないでどうする」という思いがあるんです。今後40年間使える技術を生み出せたらと願っているんです
|
コンピュータは、MS-DOSの前から使っていることになります。まさにコンピュータと共にある人生です。コンピュータがなくなったらどうやって生きていけばいいのか分からないくらいに、僕の人生にとって大切なものです。これは、他のメンバーにとっても同じだと思います。
これだけのメンバーが集まることはおそらくもうないでしょう。だから、簡単に壊したくないという思いが強いです。今も、製品開発コンテストを社内でやっています。そうすると、結果的にいいものが出来上がってきます。
プログラミングを知り尽くしているのといないのとでは出来上がるものが違うので、今後も、知り尽くしているプログラマーを選び抜いて採用していきたいですね。そして、会社としてうまく機能させて、価値あるものを生み出していきたいです。
生意気かもしれませんが、「IT企業なら技術を売りにしないでどうする」という思いがあるんですよ。ソフトウェアも検索エンジンも、世界中の人が使ってくれる可能性があります。可能性があるなら、挑戦してみないとつまらないと思うのです。ソフトウェアはノートPCが1台あれば作れるし、現在ではインターネット経由でいくらでも配ることができます。
今後、メディアを立ち上げたりもしていきたいですね。自分たちだけでもサービスを作っていきたいです。サービスは出せば確実に成功するというわけではないので、継続的にサービスに注力できるような態勢を作り上げてからになると思いますが、いずれは挑戦してみたい。
大量のデータを処理する基盤にも興味があります。データベースにも興味があるし、全文検索エンジンにもまだまだ改良の余地があると思います。やりたいことはいくらでもあります。そしていつか、僕らの力で、今後40年間使えるような技術を生み出せたらと願っているんです。(おわり)
(→ 前編をみる)
関連情報
■URL
プリファードインフラストラクチャ
http://preferred.jp/
■関連記事
・ 技術を武器に、世界で通用するサービスを作りたい プリファード・インフラストラクチャー社長 西川徹氏(前編)(2008/05/26)
2008/05/27 11:14
取材・執筆:高橋暁子 小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。 PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。 |
- ページの先頭へ-
|
|
|
|
|