趣味のインターネット地図ウォッチ

第162回

ネットで見る「富士山」特集~絵地図から防災地図、ごみマップまで

 ユネスコの世界文化遺産に登録される見通しとなり、注目を集めている富士山。文化遺産登録については賛否両論聞かれるが、今回の件は国民が改めて富士山を見つめ直すきっかけとなったのではないだろうか。というわけで今回は、富士山について考えるための材料を提示する意味も含めて、インターネット上で閲覧・入手できる主な富士山関連の地図を集めてみた。観光や登山といった側面だけでなく、防災やごみ問題など、さまざまな切り口で作成された地図を紹介したい。

火山・防災・地質・環境保全関連

富士山火山防災マップ

http://www.bousai.go.jp/kazan/fujisan-kyougikai/fuji_map/index.html

 内閣府の防災担当が提供する「防災情報のページ」では、富士山の噴火が始まった場合に備えて作られた「富士山火山防災マップ」を提供している。富士吉田市・御殿場市・富士市・足柄上地区・小田原市の地区ごとに用意されているほか、共通マップも用意。それぞれ低画質版と高画質版のJPEG画像で提供している。

 マップには、火口ができる可能性の高い範囲や、過去に火口ができた個所、噴火時に避難が必要な範囲、すぐ危険にはならないが火口位置によっては避難が必要な範囲、積雪時に噴火した場合に近寄らないようにする必要がある範囲などを地図上で示している。また、過去3200年間に起きた溶岩流や岩屑なだれ、火砕流の実績などを示すマップも収録するほか、溶岩流や土石流がどのような現象でどのような注意が必要なのかも解説している。このほか、観光客向けに富士山の噴火について解説するマップや、防災業務用マップも用意している。

富士山火山防災マップ
観光客用マップ

富士山噴火史

http://www.fujigoko.tv/mtfuji/vol1/index.html

 富士山や富士五湖に関する動画を集めた「富士五湖ドットTV」の1コーナー「富士山大図鑑」において、富士山の噴火の歴史を解説した動画「富士山噴火史」を見られる。富士山の形成前(約500万年前~約20万年前)、古代(約8万年前~約7000年前)、有史(約5000年前~約1000年前)、近世(西暦1707年~現在)と4期に分けて解説している。ページ下部には年表も掲載している。

富士山噴火史
古代の富士山の解説ページ

火山活動連続観測網VIVA ver.2

http://vivaweb2.bosai.go.jp/viva/v_stat_fuji.html

 防災科学技術研究所が行っている火山研究の一環として展開している火山観測網で、富士山をはじめ、岩手山や那須岳、伊豆大島なども収録。各火山には3カ所から6カ所の火山観測施設が設置されており、そこで得られたさまざまなデータを公開している。収録しているデータは、震源分布図や地震波形・スペクトル画像、広帯域地震波形画像、地震計振幅などで、項目によっては1年前のデータまでさかのぼることも可能だ。

観測点分布図
震源分布図

電子国土Web.NEXT 火山土地条件図

http://portal.cyberjapan.jp/site/mapuse4/index.html

 国土地理院が提供する地図サービス「電子国土Web.NEXT」において、4月末の機能改良により「ライブラリー」で見られる主題情報に「火山土地条件図」が追加され、この中にも富士山の火山土地条件図が収録されている。左メニューの上部にある「ライブラリー」タブをクリックし、「火山土地条件図」の中の「富士山」にチェックを入れると表示される。ただし縮尺レベルを2万5千の1付近まで拡大しないと見られないので注意しよう。レイヤーの透過率も調節できるので、地形図情報と重ね合わせてさまざまな見方ができる。また、地図右下の「凡例」をクリックすると別ウィンドウで凡例を確認できる。

火山土地条件図
透過率を調節可能

富士山環境ごみマップ

http://www.fujisan.or.jp/action/kankyo/gomimap.html

 環境NPOの「富士山クラブ」が提供する富士山の不法投棄ごみの分布図。富士山のどこにどのようなごみが捨てられているのかを調査して、地図上で公開している。上部メニューで拡大図・広域図・全域図の切り替えが可能で、全域図では「タイヤ」「車両」「廃材」「家電」「缶」「家具」など、不法投棄ごみの種類ごとに表示項目を切り替えられる。

 同プロジェクトはドコモ・システムズとの共同事業で、調査にあたってはGPSを搭載したカメラ付き携帯電話を利用して、富士山周辺を歩き、不法投棄ごみを発見した場合はカメラで撮影してGPSの位置情報とともにメールで送信。そのデータを富士山クラブで整理し、ウェブサイトで公開している。同組織では清掃活動も行っており、清掃活動結果をデータに反映させているという。

広域図
全域図では表示する項目を選択可能

古地図・絵地図関連

富士山古図

http://moaej.shinshu-u.ac.jp/?s=%E5%AF%8C%E5%A3%AB

 信州大学附属図書館が所蔵する山岳関係資料コレクション「小谷コレクション」には、富士山に関する資料が豊富に所蔵されており、各資料はウェブ上で拡大して閲覧できる。特に注目されるのが、江戸後期に描かれた「富士山図」。この古地図は端と端が貼り合わされて円錐形の“3D地図”になっている。東西南北とさまざまな方向から見た画像が掲載されている。このほか同サイトでは、年代不明の「富士山神宮麓八海略絵図」や「富士山古図」、大正時代に描かれた「富士登山名所案内図附明細景色図」なども収録している。

「富士山図」
「富士山神宮麓八海略絵図」

国立国会図書館 近代デジタルライブラリー

http://kindai.ndl.go.jp/search/searchResult?SID=kindai&searchWord=%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E5%B1%B1%E3%80%80%E5%9C%B0%E5%9B%B3

 「富士山 地図」で検索すると昔のいろいろな地図を見られる。「新世紀日本地図」(38ページ)や「富士山」、「富士山の自然界」といった本に富士山の古地図が収録されている。

「新世紀日本地図」
「富士山」

地図の資料館 オールド観光案内図コレクション ぬま津「富士を背景とせる沼津三島」(吉田初三郎)

http://www.asocie.jp/oldmap/sizuoka/18010.html

 鳥瞰図絵師として有名な吉田初三郎による沼津の絵地図を見られる。昭和6年に描かれたもので、鳥瞰図のサイズは770×176mmという巨大なもの。沼津から眺める雄大な富士山の姿がカラーで楽しめる。ほかにも「清水静岡名所交通鳥瞰図」(http://www.asocie.jp/oldmap/sizuoka/18013.html)や「甲府市鳥瞰図」(http://www.asocie.jp/oldmap/yamanashi/15003.html)など、富士山が入った鳥瞰図を数点収録している。

「富士を背景とせる沼津三島」

アトリエ77 村松昭 絵地図の世界

http://www2.odn.ne.jp/~cdf21010/mt_fuji.html

 山や川の絵地図を描いている村松昭氏による富士山の散策絵図のサンプル。細かい部分まで拡大することはできないが、さまざまな動物が細かく描かれている自然豊かな絵地図の全体像が分かる。

富士山散策絵図

観光・登山関連

初心者のための登山とキャンプ入門「プリントできる富士山の登山地図・PDFとJPG」

http://www.camp-outdoor.com/tozan/fujisan/yoshida.shtml

 プリントして富士登山に使える地図。コースタイムが書かれているので2万5千分の1地形図と組み合わせて使うと便利だ。また、これと似た地図を、静岡県警も「富士登山地図」(http://www.police.pref.shizuoka.jp/osirase/sangaku/natufujitozan.html)としてPDFで提供している。

プリントできる富士山の登山地図・PDFとJPG
富士登山地図

ふじぶらり(iOSアプリ)

https://itunes.apple.com/jp/app/fujiburari/id530424464?mt=8

 iOS用地図アプリ作成エンジン「ちずぶらり」を利用した無料の地図アプリで、富士山関連の地図を豊富に収録。「富士山百景」「富士市桜マップ」「吉原商店街ガイドマップ」「田子の浦シラスマップ」「岳南鉄道沿線マップ」など、富士山周辺の街の散策マップを見られる。ほかの「ちずぶらり」シリーズ同様、地図上に現在地を表示させることも可能だ。

「富士山百景」
各所で撮影された写真を見られる
「岳南鉄道沿線マップ」

カシミール3D公式サイト・可視マップセンター

http://www.kashmir3d.com/kash/kashcent.html

 Windows用フリーソフト「カシミール3D」公式サイト内の1コーナーで、カシミール3Dで計算した可視マップ(富士山が見える場所を地図上に表した地図)画像と、富士山の可視データを入手できる。公開されている可視マップ画像は細かい部分までは拡大できないが、可視データをダウンロードしてカシミール3Dで読み込めば詳細な可視マップを楽しめる。

カシミール3Dで作成した可視マップ

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。