第318回:光ファイバも「ギガ」に突入
KDDIの「ひかりone」導入レポート



 KDDIから上下最大1GbpsのFTTHサービスの提供が開始された。従来の上下100Mbpsから速度が一気に向上したこのサービスを実際に導入、その速度を体験した。





「ギガ」でユーザー獲得なるか

 「ギガ速い」「ギガ安い」とギガを前面に押し出したテレビCMでも知られるKDDIのFTTHサービス「ひかりone」。西日本(近畿)ではケイ・オプティコムがすでに1GbpsのFTTHサービスを提供していたが、東日本では1GbpsのFTTHサービス初となる。

 ADSLからFTTHへと固定回線の主流が移り変わり、個人的には速度の上限は現状の100Mbpsでも十分で、どちらかというと帯域保証してくれた方がありがたいと感じることの方が多いのだが、それでも1Gbpsでどれくらいの速度が出るのかというのは確かに気になるところ。そこで、筆者宅で実際にひかりoneを導入してみた。

 今回、加入したサービスは、プロバイダーにau one netを利用した「ギガ得プラン」。一見、FTTHサービス自体の名称かと勘違いしてしまいそうだが、あくまでも料金プランの名称であり、回線サービス自体は「ひかりoneホーム」という以前の名称のままで通信速度が1Gbps化されている。

 このギガ得プラン、月額料金はネットサービスのみの利用で5460円となっており(電話+525円、テレビ+2520円)、確かに競合するFTTHサービスと比べると月額料金は安い。

 たとえば、NTT東日本のフレッツ光ネクストとひかりoneホームの両方のサービスを提供しているSo-netの例で比較すると、キャンペーンの無料期間などを除いた月額料金はフレッツ光ネクストの場合が6720円、ひかりoneホームの場合が前述した5460円となっている。

 工事費無料やキャッシュバック、特定期間の月額料金無料化など、回線サービスに関してはさまざまなキャンペーンが展開されているため純粋な比較は難しいのだが、それでも月額料金としてはお得感がある。「ギガ安い」というのは少々大げさな印象もあるが、価格面での競争力は十分あるだろう。

 ただし、このギガ得プランで注意したいのは2年契約の自動更新となる点だ。長期契約を前提とする代わりに月額料金が割安に設定されているため、途中解約の場合は契約解除料として9975円が発生してしまう。

 FTTHの場合、一度導入すれ引っ越しでもしない限り使い続けるのが普通なので、大きな問題はなさそうだが、2年契約であることは覚えておいた方がいいだろう。





多機能なホームゲートウェイをレンタル提供

 というわけで実際に導入してみたのだが、筆者宅には以前に解約したTEPCOひかりのファイバーがそのまま残っており、これを流用したため工事は30分前後と短く、単にONUを設置するだけで済んだ。


右側がひかりoneホーム用のONU(左側はNTT東日本のBフレッツ用)。以前にTEPCOひかりを利用していた関係で、ファイバはそのまま流用できた

 ちなみに、最近ではサービスを解約しても回線撤去や端末回収が行われないようで、前述したように筆者宅でTEPCOひかりを解約したときはファイバーとONUはそのまま設置したままであり、近々解約予定のCATVも、配線の撤去をしないという選択肢も用意されている(逆に撤去すると工事費用がかかる)。ファイバーやONUのコストが下がり、逆に回収すると人件費でコストがかさんでしまうのだろう。

 ONUの工事が完了したら、後は別途送付されてきたホームゲートウェイ(NECアクセステクニカ製 Aterm BL190HW)を設置するのだが、これは基本的にONUとLANケーブルで接続し、電源をオンにするだけで良い。ホームゲートウェイの設定画面にはWAN側の設定が存在しないのだが、どうやら動作モードはDHCPとなっているようで、単に接続するだけで問題ないようだ。


ひかりone用に提供されるホームゲートウェイ「Aterm BL190HW」。1000BASE-T、およびIEEE802.11b/g順境の無線LANルーター+IP電話となる

WAN側の設定項目は見あたらない。DCHPによる自動取得の固定となっているようだ

 このホームゲートウェイは機能、性能ともにかなり高いレベルの製品になっている(機能詳細はこちら)。

 前述したように、背面のポート(LAN×4、WAN×1)はすべて1000BASE-T対応となっているうえ、IEEE 802.11b/g準拠の無線LANを内蔵しており、無線LAN設定も上部のボタンによるWPS、およびらくらく無線スタートに対応している。


上部にWPSおよび「らくらく無線スタート」対応の設定用ボタンを備える

 ゲーム機接続用にマルチSSIDにも対応しており、標準ではプライマリSSIDはWPA/WPA2-PSK(AES)、セカンダリは128bitのWEPで設定されている。残念ながらWPAとWEPのSSID間の通信は遮断できないが、SSIDステルス、MACアドレスフィルタリングなどの機能も搭載している(標準設定はオフ)ので、無線LANルータとしても十分に利用可能だ。


IEEE 802.11b/g準拠の無線LANを搭載し、マルチSSIDにも対応。ただし、WPA-WEP間の通信は可能となっている

前面にUSBポートを2つ搭載。USBメモリなどを接続することでLAN上で共有できる
USBストレージアクセス用のUIも設定画面に備えており、ファイルのダウンロードや削除、アップロードも可能




300Mbpsをコンスタントにマーク

 さて、前置きが長くなってしまったが、最大の関心である速度について紹介しよう。前述したように、ひかりoneホームではベストエフォートながら回線速度が1Gbpsとなっており、ONU、ルータもすべてギガビットイーサネット化されている。

 実際にギガビットイーサネット対応のクライアントを用意してインターネットに接続し、速度を計測してみたところ、以下のように下りで300Mbpsを記録した。ほぼ同時刻に100bpsのBフレッツ・ニューファミリータイプ(ぷらら)の結果が80Mbps前後だったので、かなりの好結果だ。

 もちろん、1Gbpsという上限にはほど遠いが、ギガビットイーサネットを利用したLAN上のFTP転送などでも300Mbps~600Mbpsといったところなので、インターネット経由ということを考えれば妥当な速度だろう。

 ちなみに、今回の計測にはRBBTODAYの1Gbps用ベータ版スピードテストを利用したが、他の速度測定サイトは100Mbpsまでの測定にしか対応しておらず、正確な測定ができなかった。


1Gbpsのひかりoneホーム(左)と100MbpsのBフレッツ・ニューファミリータイプ(右)の速度測定結果

 また、先の結果はOSにWindows Vistaを利用した場合だが、同じ1GbpsのひかりoneホームでWindows XP(SP3)を利用した場合は、上りで180Mbps前後、下りで90Mbps前後が上限となってしまった。


XPの場合はTCP/IPのパラメータがボトルネックになる可能性が高い。MTUやRWINのチューニングは必須となる

 これは明らかにTCP/IP関連のパラメータがボトルネックになっているので、窓の手などを利用してMTUとRWINをチューニングしてみたところ、こちらも無事に下りで300Mbps越え、上りで150Mbps越えを実現できた。

 ただし、Windows系のOSで上りをこれ以上速くするのはなかなか難しく、AFDなどの値をレジストリでチューニングしてもあまり効果はなかった。

 上りも速くということであれば、Windows以外のOSを利用した方がよさそうで、たとえば手元にあったMac OS X 10.5の場合、上下ともに300Mbpsでの通信ができた。


Mac OS Xの場合、上下ともに300Mbpsの値を計測できた




実速度は混雑具合次第

 このように、KDDIのひかりoneを実際に試してみたが、ベンチマークサイトの利用に関して言えば、なかなかの好結果が得られた。

 しかしながら、実際のインターネットの利用に関して言えば、筆者宅に引き込んでいる100MbpsのBフレッツ・ニューファミリーと体感上の速度差はほとんど感じない。たまに、画像などが多く使われているサイトの表示レスポンスが良いかな? と感じることがないわけではないが、あくまでも感覚的なものであり、回線の混雑具合の違いとも考えられる。

 サイズの大きな評価版ソフトや大きなパッチのダウンロードはどうかというと、こちらもサーバー側がボトルネックになるため、100Mbpsの回線とほとんど差がない。こういったファイルは、おそらくCDNなどを経由して帯域がコントロールされるため、こちら側の回線の速度はあまり影響しないのではないかと考えられる。

 というわけで、1GbpsのFTTHは、ベンチマークを測定すれば確かに速いが、実際の利用という点では、現時点ではさほど明確なメリットはないと言えそうだ。

 ただし、今後、アクトビラの映像ダウンロードサービスなどのように、映像コンテンツをネット経由でダウンロードするという用途が増えてくる可能性がある。この際、ラストワンマイルの回線速度を活かせるように、KDDIが自社ネットワークにコンテンツ提供側のネットワークを構築するなど、そのメリットを活かせるようなバックボーンを構築できれば話は変わってくるはずだ。

 しかしながら、そううなるとNTTのNGNのメリットも生きてきそうなので、このあたりはまた難しい判断になりそうだ。

 少なくとも、現時点では「ギガ」という言葉に過大な期待はせず、冷静にサービス内容や料金を検討してから加入することをお勧めしたい。


関連情報

2008/11/11 11:08


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。