ネットワークプレーヤーにもなる多機能チューナー
アイ・オー・データ機器「HVT-BCT300」


 アイ・オー・データ機器の「HVT-BCT300」は、USB HDDへの録画やネットワーク上のメディアの再生に対応した多機能デジタルハイビジョンチューナーだ。単純にアナログテレビをデジタル化するだけでなく、プラスアルファの楽しみ方ができる同製品を実際に使ってみた。

多機能チューナーという選択肢

 2011年のアナログ放送終了がいよいよ迫ってきた。アンテナの準備、テレビの買い換えなど、徐々に準備を進めている人も少なくないと思われるが、そんな中、今回取り上げるのがアイ・オー・データ機器から発売されている地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンチューナー「HVT-BCT300」だ。

アイ・オー・データ機器の「HVT-BCT300」。直販サイトioPLAZAの販売価格は2万4800円。USB HDDへの録画機能、ネットーワークメディアプレーヤー機能を搭載した地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンチューナー

 「HVT-BCT300」は多機能なデジタルチューナーだ。基本的にはアナログテレビで地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン放送を視聴可能にするための外付けデジタルチューナーだが、これ以外にUSB接続のHDDへの録画機能、ネットワーク経由で映像や写真などのデータを再生できるネットワークメディアプレーヤー機能などを搭載しており、さまざまな用途に利用可能となっている。

 現在、アナログテレビを利用している場合、テレビ自体を買い換えるか、それとも外付けチューナーを利用するかと言われれば、おそらくテレビを買い換えるというケースの方が多いだろう。しかしながら、3Dテレビなど次世代を考えると、今のテレビのままもう少し様子を見たいという場合もある。

 そんなときに、「つなぎ役」として重宝するのが本製品だ。アナログテレビをデジタル化して延命させることができる一方で、万が一、テレビを買い換えたとしてもレコーダー、ネットワークプレーヤーとして活用し続けることができる。実売25000円前後で、レコーダー+ネットワークプレーヤーが買えると考えても十分にお得感があるので、これからテレビ環境を見直すというのであれば、選択肢の1つとして検討する価値もあるだろう。

視聴に関しては機能よりも手軽さを重視

 それでは、実際の製品を見ていこう。本体は、いわゆるネットワークプレーヤーとして一般的なサイズで、レコーダーの半分程度(幅260×奥行き185×高さ55mm)の大きさとなっている。

 背面には、地上デジタル、BS/CSデジタルそれぞれのアンテナ端子(入力1/出力1)に加え、テレビとの接続用にコンポジット×1、D端子(D1/D2/D3/D4、アナログRGB出力対応)×1、HDMI(1.3a)×1、音声出力(アナログ1系統、光デジタル1系統)を搭載。これらに加え、USBポート×1、LANポート×2が搭載されている(さらに前面にUSB×1、SDカードスロット×1も搭載)。

 なお、LANポートは2つあるが、機能としてはハブとなっている。いずれか一方のポートを家庭内のネットワークへと接続し、もう一方のポートはテレビやレコーダーなど、他の機器を有線LANで接続したい場合に利用することになる。

正面背面
側面付属のリモコン。テレビの電源や音量などの調節も可能

 使い方は簡単だ。アンテナケーブルを接続後、テレビにつないで電源を入れると自動的に初期設定が開始される。ここで地域などを選んでチャンネルを設定すれば、すぐに地上デジタル放送、BSデジタル放送、110度CS放送を視聴することができる。

 リモコンの「テレビ」ボタンで放送波を切り替えたり、数字ボタンや「チャンネル」ボタンでチャンネルを切り替えたりと、普通のテレビと同じ感覚で利用できる。もちろん、番組表も利用可能だが、その日の放送番組が1チャンネルごとに1画面に表示されるようになっている(もしくは現在放送中の番組をチャンネルごとに一覧表示)。新聞や雑誌のテレビ欄のように、いくつものチャンネルを1画面で同時に見ることはできない。

 また、現時点ではデータ放送には対応しておらず、後日対応となっている。視聴に関しては、最低限の機能といった印象だ。

電源を入れると自動的に初期設定が開始される。ウィザードに従って地域などを選んでいくだけで手軽にデジタル放送を視聴できる番組表はチャンネルごとのスケジュールを1画面に表示。複数チャンネルを一画面でチェックすることはできない

USB HDDにテレビを録画

 続いて、本製品の特徴とも言えるUSB HDDへの録画について見ていこう。背面のUSBポートに市販のUSB HDDを接続後、設定画面からHDDを初期化すると録画が可能になる。

 接続するHDDは、USB接続であれば種類は問わないが、録画には事前にフォーマットが必要になる。専用形式となるうえ、既存のデータも完全に消去されるので、専用で利用するHDDを用意しておくと良いだろう。

市販のHDDをUSBポートに接続すればデジタル放送を録画することができる初期化すると録画が可能となる。専用形式でフォーマットされるので要注意

 録画操作は、基本的に番組表から行う。リモコンの番組表ボタンを押して、録画したい番組を選択、番組情報を表示すると画面右下に録画ボタンの案内が表示されるので、リモコンに用意されている青、赤、緑、黄の4色のボタンのうちの赤ボタンを押すと予約が完了する。

 視聴中の番組の録画操作も同様で、リモコンの「情報」ボタンを押して、一旦、番組情報を表示してから赤ボタンを押すと、数秒後に録画が開始されるという仕様になっている。リモコンに録画ボタンがないうえ、番組情報画面を必ず経由するなど、あまり直感的ではない印象だ。

 録画した番組を視聴する際も、リモコンの「AVeL」ボタンを押してネットワークメディアプレーヤーのホーム画面を表示し、「録画番組」アイコンから一覧を表示して再生すると、若干の画面操作が必要になる。

 また、チューナーも1基しか搭載していないため、当然のことながら録画中はチャンネルが固定され、録画しているチャンネル以外を視聴することもできない(他の放送波への切り替えも不可)。チューナー、レコーダーと、単機能的に使う製品と、ある程度、割り切った使い方が必要そうだ。

録画は番組情報から行う。番組表から情報を表示後、リモコンの「赤」ボタンを押すと予約が完了する録画番組はホーム画面から「録画番組」を選ぶと一覧表示され、再生できる

汎用性の高いネットワークメディアプレーヤー

 続いて、もうひとつの注目となるネットワークメディアプレーヤー機能について見ていこう。ネットワークメディアプレーヤーとしての機能は、同社が販売している「AVeL Link Player(AV-LS700)」と同等となっており、機能的にはなかなか充実している。

 具体的には、DLNA1.5、およびDTCP-IPに対応している。これにより、Windows 7のリモート再生などを利用した場合に、いわゆるDMR(Digital Media Renderer)として、PCからの操作によって映像を再生することができたり、DTCP-IPに対応したメディアサーバーと組み合わせることで、地上デジタル放送などの著作権保護されたコンテンツを再生することが可能となっている。

同社製のネットワークメディアプレーヤー(AV-LS700)と同等の機能を搭載DiXiMやTwonky、WMCなど、多彩なサーバーに接続可能。DTCP-IPにも対応しているため、レコーダーなどで録画した映像も再生できる

 実際にテストしてみたところ、Windows Home Server(Windows Media Connect)、Windows 7(Windows Media Player 12のメディアストリーミング)、Twonky Media Server、DiXiM Media Server 3、Panasonic DIGA DMR-BW830など、筆者宅にあるメディアサーバーとの接続が問題なくできることが確認できた。

 また、これらのうち、DiXiM Media Server 3(GV-MC7/VZ付属)、DIGA DMR-BW830に関しては、DTCP-IPによる録画したデジタル放送の再生(DIGAはH264で録画した映像も再生可能)も問題なくできることも確認することができた。

 ネットワークメディアプレーヤーとしては、現状、対応フォーマットの多さや接続の汎用性の高さなどからPS3の使い勝手が非常に良いが、これに劣らぬ実力と言って良いだろう(対応フォーマットなどは同社の製品情報ページで参照できる)。

 このほか、Youtubeのプレーヤーも搭載されており、インターネット上に投稿されている動画を再生することも可能だ。ベータ版のためか、テストしたときは動画が再生されないことがあったが、テレビや家庭内に保存されている映像に加えて、インターネット上の動画も楽しめるというのも1つの特徴だろう。

 ただし、ユーザーインターフェイスの洗練度、操作の軽快感などは、まだまだ課題が残る印象で、特にサーバー側に多くのコンテンツが存在する場合に見たいコンテンツを選びにくい。ソートなどでコンテンツを並べ替えられるようになるなど、もう一工夫欲しいところだ。

ベータ版のため動作は保証されていないが、Youtubeの動画再生にも対応している

意外に便利なカメラプレーヤー機能

 このように、「HVT-BCT300」は、単なる地デジチューナーとしてだけでなく、USB HDDに録画できたり、ネットワークメディアプレーヤーとして利用できる多機能な製品だ。

 場合によっては、リビングのテレビなどは大型の液晶テレビなどに買い換え、自分の部屋にある古いテレビをデジタル化するといった使い方をすると良いだろう。レコーダーとして録画に使ったり、リビングのレコーダーで録画した番組をネットワーク経由で見るといった使い方もできるので、サブ環境に最適だ。

 また、今回は詳しく紹介しなかったが、機能としては、デジタルビデオカメラとの連携機能もなかなか便利だ。デジタルビデオカメラをUSBで接続すると、AVCHDで撮影した映像を再生したり、その映像をUSB HDDへと転送することが簡単にできる。

デジタルビデオカメラを接続することで、映像を再生したり、HDDに転送することも簡単にできる

 一般的に、デジタルビデオカメラで撮影した映像はパソコンに取り込むという使い方が多いかもしれないが、「HVT-BCT300」があれば、撮影した映像をすぐにテレビで見ることができるうえ、データもHDDに手軽に保存することができる。

 ユーザーインターフェイスなどに若干の改善を望みたいところはあるが、デジタル放送対策に加えて、プラスアルファの楽しみ方ができるようになるのが、この製品の最大の魅力だろう。


関連情報


2010/4/13 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。