第320回:外出先のDLNA対応機器で自宅の写真やビデオを再生
アイ・オー・データ機器「Remote Link」



 アイ・オー・データ機器から、同社製のLAN接続型HDD向けリモートアクセスサービス「Remote Link」の提供が開始された。外出先からDLNA対応機器を利用して写真やビデオを再生できるのが最大の特徴だ。早速その機能を利用した。





ファームウェア更新で3つの機能を追加

Remote Linkに対応したLAN接続型HDD「HDL-GS500」

 アイ・オー・データ機器から発売されているLAN接続型HDD「LANDISK Home」向けに、「Remote Link」と呼ばれる新機能が追加された。

 最近のNASは、LANでのファイル共有、メディア共有に加えて、外出先からのリモートアクセス機能を提供する製品が増えてきたが、今回のRemote Linkもそんな機能の1つ。インターネット経由で自宅のLANDISKにアクセスすることが可能になっており、さまざまな場所からHDD上のデータを利用できるる。

 新機能と言っても、ファームウェアのアップデートで対応可能であり、すでに対応機種を所有しているユーザーは無償で更新できる。初回となる11月19日のアップデートではシングルドライブの「HDL-GS」シリーズ向けのみが先行して公開されたが、HDL2-Gシリーズは12月上旬、HDL4-Gシリーズも12月下旬に対応ファームウェアが公開される予定となっている。


HDL-GS500本体側面

本体前面本体背面

 具体的にどのような機能が追加されるのかというと、以下の3つに分類される。

  • リモートアクセス
    ブラウザを利用して外出先から自宅のLANディスクのファイルを利用できる
  • ホームメディアリンク
    DLNAサーバーのWAN対応版。外出先のPCからDLNAクライアントを利用して、自宅のLANDISK上の写真やビデオ、音楽を再生できる
  • マイウェブサーバー
    LANDISKをWebサーバーとして動作させることが可能。指定したフォルダのHTMLファイルをブラウザで表示できる(cgi不可)
 基本的には、よくあるリモートアクセス機能と言えるが、注目はホームメディアリンク機能だろう。外出先でもDLNA対応機器によるメディアの利用が可能というのは、なかなか興味深い機能と言えそうだ。





iobb.netで外出先からアクセス

 それぞれの機能について見ていく前に、全体的なアクセスの仕組みについて紹介しておこう。PCにしろNASにしろ、自宅の機器を外出先からアクセス可能にするためには、ルーターのポート解放とドメイン名という2つの問題をクリアする必要がある。

 一昔前までであれば、ルータのポートフォワードやフィルタリングの設定をして、外部のダイナミックDNSを利用するといった手間がかかったが、本製品では、これらの設定をほぼ自動的に行なうことが可能だ。

 ルータの設定に関してはUPnPによって自動的に行なわれるようになっており、ドメイン名に関しても同社が提供しているダイナミックDNSサービス「iobb.net」を無償で利用することができる。

 設定は単純で、新ファームウェアの1.10を適用したHDL-GS(今回は500GB HDD搭載のHDL-GS500を利用)の設定画面からiobb.netへの登録を行なう。製品のシリアルNo.や希望のホスト名とパスワード、メールアドレスを入力して登録を実行。メールでの確認処理などを行なえば準備は完了だ。


iobb.netの設定画面。シリアルや希望するホスト名などを入力して登録する。パスワードはiobb.netの設定のためのもので、リモートアクセスの際のパスワードとは別

 なお、iobb.netの利用により、「xxxx.iobb.net」というアドレスが利用可能となるが、このアドレスを直接指定するのは、後述するマイウェブサーバーを利用するときのみとなる(http://xxxx.iobb.net:8080のような形式での指定)。iobb.netは中継サービスのような形態での利用も可能となっており、一旦、iobb.netのサイトや専用アプリからホスト名やパスワードを入力し、その後、iobb.netに登録されている自宅のサーバーのIPやポート宛にアクセスするという形態になる。

 このため、リモートアクセスではポート50000を、ホームメディアリンクではポート60000、60010をそれぞれ標準で利用するが、これらのポート番号をいちいち覚えておく必要がなく手軽に利用できる。


リモートアクセスやホームメディアリンクの設定画面。リモートアクセスではポート50000を、ホームメディアリンクではポート60000、60010を利用する




ローカル感覚で利用できるリモートアクセス

 各機能の完成度もなかなか高い。まずは、リモートアクセス機能だが、これは外出先から自宅のLANDSIK内のデータを参照したり、新たにファイルを保存したりできる機能だ。

 リモートアクセス機能を有効に設定後、外出先のPCなどから「http://rm.iobb.net」にアクセスする。ここで「リモートアクセス」を選ぶ。すると、初回のみJAVAのプログラムのインストールが実行される。

 その後表示された画面で、LANDSIK上に登録したユーザーとパスワード(iobb.net登録時のパスワードではなくユーザーのパスワード)、iobb.netに登録したホスト名を入力すると、実際に自宅のLANDISKにアクセスできる。


リモートアクセスを選ぶとJAVAのプログラムが実行され、ログイン画面が表示される

 操作画面は、左側にフォルダ一覧、右側にファイルが表示されるオーソドックスな画面だが、右クリックによる操作(フォルダ作成、名前変更、ダウンロード)や、ShiftキーやCtrlキーを使ったファイルの複数選択と一括ダウンロード、ドラッグによるファイルアップロードなどと、ローカルと同じ感覚で利用できる。

 個人的には、ダウンロードがドラッグでできないのと、ファイルは必ずダウンロードが必要で直接開いて編集できない点が残念だが、全体的な操作性としては悪くない印象だ。


右クリックやドラッグによる操作が可能

 アクセス権の制御も可能で、LANDISK側のローカルの共有フォルダのアクセス設定が引き継がれるようになっており、ログインしたユーザーへのアクセス許可がないフォルダに関しては、一覧に表示されないようになっている。

 同時ログインも3ユーザーまで可能で、筆者が試した限りでは同一アカウントによる別々のPCからの同時ログインも可能であった。外部ユーザー向けにゲスト用アカウントを発行し、共有してもらうという使い方もできそうだ。

 プラットフォームも試した限りでは、Windows XPのIE6やMac OS XのSafariでも問題なく利用できた。ネットブックの普及、モバイルブロードバンド環境の整備によって、外出先で手軽にインターネットを利用できるようになってきたが、このような環境と組み合わせて利用すればなかなか便利そうだ。


ネットブックのWindows XPでも快適に利用できる。回線によってはアップロードが若干つらいが、ストレージ代わりとして使うのに最適




実家のDLNA対応テレビで自宅のLANDISKのビデオを再生

 続いては、最大の注目でもあるホームメディアリンク機能だ。

 この機能は、冒頭でも軽く触れたが、従来のDLNAによるメディア共有機能のリモートアクセス版と考えるとわかりやすい。

 通常のDLNAは、LAN上のサーバーの写真やビデオ、音楽を、DLNAクライアントソフトをインストールしたPCやDLNA対応の家電で再生できるが、本製品のホームメディアリンク機能では、これと同じことを外出先で利用できる。

 と言っても、そのままではDLNAによる通信をWAN経由で利用することはできない。そこで、ホームメディアリンクでは、専用ソフト「Home Media Link Client」を利用した中継によって、外出先から自宅のLANDISK上のコンテンツを参照できるようにしている。

 接続に必要な「Home Media Link Client」、およびコンテンツの参照に必要な「DiXiM Media Client2」は最新ファームウェアと同じページから無償ダウンロードできるので、外出先で利用するPCにあらかじめインストールしておく。

 この状態で、まずHome Media Link Clinetを起動。リモートアクセスの時と同様にユーザー名とパスワード、ホスト名を入力してiobb.net経由で自宅のLANDSIKに接続する。この状態で、同一PC上でDiXiM Media Clientを起動すると、Home Media Link Clinetによって中継された通信によって、自宅のLANDISKがサーバーとして表示され(Home Media Link ClientがDLNAサーバーのようにふるまう)、写真などのコンテンツを再生することができる。


Home Media Link Client。LANDISKへの接続とDLNAの中継の役割を担う
遠隔地の自宅にあるはずのLANDISKが一覧に表示される

 面白いのは、Home Media Link Clinetの設定で同一LAN上にサーバを公開できる点だ。つまり、外出先のLAN上にDLNA対応のメディアプレーヤーやDLNA対応のテレビなどが存在する場合は、これらの機器でも同様に遠隔地にあるLANDISKにアクセスできる。

 これにより、たとえば実家に帰省した時などに、Home Media Link Clinetを使って自宅のLANDISKに接続、実家にあるDLNA対応テレビでLANDISK上の写真やビデオを再生するといった使い方ができるわけだ。

 あくまでもPCで接続を中継するという作業が必要になるのが面倒ではあるが、リモートのDLNA対応クライアントから自宅にアクセスできるというのはなかなか斬新だ。


設定によって同一LAN上のクライアントにもコンテンツを配信できる。これにより、外出先にあるDLNA対応ネットワークメディアプレーヤーやテレビなどからもコンテンツを参照できる

 なお、映像に関しては、再生出来るファイルがクライアント側がサポートしているフォーマットによって異なる。たとえば、提供されるDiXiM2ではWMV、MPEG-2などコーデックがPCにインストールされていれば再生可能だが(AVCはNGだった)、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA KDL-20J3000」、東芝の「REGZA 42ZV500」ではMPEG-2のみとなり、富士通のPCにプリインストールされていたMyMediaではサーバーの参照ができなかった。

 一方、プレイステーション 3はかなり使い勝手が良く、MPEG-2/4、WMV、AVCHDなど、ほとんどの映像が再生が可能であった。クライアントとしては、PS3を利用するのが最も利便性が高いと言えそうだ。


家電系の中ではもっとも多くの形式の映像を再生できるPS3。クライアントとして使うならこれがもっとも便利




互換性は高いが帯域に注意

 ただし、映像がスムーズに再生できるかどうかは、映像のビットレートと回線の帯域、さらにはインターネットの混雑状況次第と言える。

 実際にLANDISK Home設置側にKDDIのひかりone(1Gpbs)、再生側にNTT東日本のフレッツ光ネクスト(100Mbps)を利用し、Home Media Link Clientを富士通のFMV LOOX R70(Core 2 Duo SL7100/RAM4GB)にインストールしてテストしてみた。

 結果は、8MbpsのMPEG-2および9MbpsのAVCHDに関しては、回線が混雑していないデイタイムであれば、極めてスムーズに再生することができた。9Mbps AVCHDはパナソニックの「SD9」で撮影した1920×1080iのハイビジョンを再生可能だった。

 ただし、同じことを22時以降の比較的インターネットが混雑している時間帯に行なうと話は変わる。いずれも途中で映像が途切れることがあり、スムーズな再生は難しかった。

 また、アイドルタイムであっても、17MbpsのAVCHD(SD9のHA画質で撮影)となると、数秒おきに映像が止まるイメージで、これはさすがに見るに堪えない。ADSLのような上りが遅い環境では、さらに状況が厳しくなるので、使う環境には注意が必要だろう。





DLNA対応機器を活かしたい人に

 このほかに「マイウェブサーバー」という機能も追加されているのだが、ポート8080で特定のフォルダを公開できるだけであり、cgiの動作もサポートされていないため、簡易的なWebサーバーとしても使えると言う程度。リモートアクセスやホームメディアリンクに比べるとインパクトはあまりないと感じた。

 とは言え、リモートアクセスはかなり実用的であり、ホームメディアリンクもなかなか面白い機能と言える。ホームメディアリンクは若干使い方が難しく、リモートでDLNAサーバーを使ってみようというニーズがどこまであるかわからないが、すでにDLNAによるメディア共有を使っている人であれば、体験してみる価値はある。

 製品の価格も、500GBの「HDL-GS500」で実売1万7000円前後といったところなので、NASの購入を検討している人は候補として面白い存在だ。NASとしても、動作音が静かで、実用上のパフォーマンスにも問題はない。デジタルカメラからの写真の取り込みや、取り込んだ写真をブラウザのアルバムで管理することもできるので、かなり実用的な製品だ。

 普段NASとして使いながら、ちょっと変わった機能で遊んでみたいという人におすすめしたい製品と言えそうだ。


関連情報

2008/11/25 10:58


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。