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インタビュー

DTIが目指す「プロバイダー」のこれから

シンプルで最安値帯の接続サービスにVPS、IPv6も

 株式会社ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)は、1995年に当時慶應義塾大学の現役学生だった石田宏樹氏が設立に携わり、三菱電機グループの企業としてサービスを開始した老舗のプロバイダーだ。ダイヤルアップ接続の時代、DTIはつながりやすさやサービス品質などから、インターネット雑誌のアンケートなどでも常に上位にランクインするなど、人気のプロバイダーとなった。

 その後、石田氏は2000年にDTIを離れ、株式会社フリービットを創業。DTIは三菱電機から東京通信ネットワーク(TTNet)、東京電力と親会社が変わり、2007年にフリービットがDTIを買収。石田氏が再びDTIを率いることとなった。

東証兜倶楽部でのDTI公開買い付けに関しての説明会(2007年7月) DTIの戦略説明会(2007年10月)

 ブロードバンドがADSLからFTTHになるにつれ、接続サービスとしてのプロバイダーの存在感がやや薄れつつある中、DTIは2010年4月に低価格VPSサービス「ServersMan@VPS」を開始するなど、積極的なサービス展開で今も注目を集めている。新体制となって3年が経過したDTIが、今後目指すプロバイダーの形とはどのようなものか。石田氏に話を伺った。

接続サービスはシンプルで安く、CDNとキャッシュサーバーで回線品質も向上

DTIの石田宏樹代表取締役社長

 DTIでは、「価格」「速度」「サポート」というプロバイダーに求められる要素については、すべて他社に負けないものを提供していると石田氏は語る。光ファイバーやADSLサービスの料金が安いことはもちろん、速度についても実測値を計測して一般に公開するとともに、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)や大手検索企業との接続によりコンテンツの閲覧速度を向上。サポートについては自社でサポートセンターを設立するとともに、掲示板による24時間サポートも行うなど、独自のサポート体制を構築している。

 さらに、「ユビキタス/クラウド」サービスの提供も行っており、今年に入ってからはVPSサービスも提供を開始、プロバイダーとして独自の路線を歩んでいる。

 こうした、数々の独自の取り組みを続けていく姿勢は、創業時から続くDTIにとってのDNAのようなものだという。

――DTIはインターネット最初期からのプロバイダーですが、当時はどのような状況だったのでしょうか。

石田氏:DTIは「本当にいいプロバイダーを作る」という目的のもと、1995年に創業しました。私は当時まだ慶應義塾大学の学生で、三菱電機グループがプロバイダー事業を始めるということで、その立ち上げに参加しました。当時取り組んでいたこととしては、「情報公開による満足度向上」「クオリティの確保」「新しいビジョンの提示」の3点があります。情報公開については、ダイヤルアップ接続のアクセスポイントの状況をすべて開示するなど情報を徹底的に公開し、クオリティ面ではあえてユーザーの入会制限を行うなどして、サービス品質の確保に努めました。

 新しいビジョンとしては、1997年に「Dream Desktop」というサービスを開始しました。これは、センター側の巨大なストレージを、Javaによるクライアントで利用できるデスクトップ環境で、今で言うクラウドサービスの原型となるものです。当時私がインタビューされた記事を見返すと、プロバイダーは接続サービスだけでなく、こうしたサービスをどのようにして一般に広めていくかといった話をしていまして、ある意味では今と同じことを言ってるなと思いました。

創業当時のDTIロゴ DTIの提供するクラウドサービスの原型となった「Dream Desktop」の画面

――その後、ダイヤルアップからブロードバンドの時代になり、プロバイダーの役割も大きく変わったように思います。3年前に再びDTIを手掛けることとなりましたが、どのようにDTIは変わったのでしょうか。

石田氏:2007年の再出発にあたっては、プロバイダーの役割を単なる接続事業者から「ユビキタスHUB」として再定義するところから始めました。接続サービスはシンプルかつ最安値帯で提供するとともに、フリービットが開発したユビキタスやクラウドのサービスをDTIで展開していこうという計画で、あらゆる機器がネットワークに接続されるユビキタス時代において、そのHUBとなるのがプロバイダーであるという構想です。

 また、2007年当時、スマートフォンのシェアは現在よりも高くなかったにも関わらず、将来性を見越してスマートフォンに特化した戦略を創り上げたのもこのタイミングでした。

 そのため、先に申し上げた通り、DTIが提供していくものとして、「シンプルかつ最安値帯の基本サービス」「徹底した情報公開」「独自の徹底したサポート体制」「ユビキタス/クラウド」の4つを掲げました。とにかくまず基本となる接続サービスをシンプルで安く提供すること、ダイヤルアップ時代からの情報公開を再度徹底すること、サポート体制も独自の形で最も良いものにすること、これにプラスして、フリービットが開発するユビキタスやクラウドサービスをユーザーに提供していこうという考え方です。

――接続サービスは、ブロードバンド時代になって差別化が難しくなったと思いますが、どの点を強化したのでしょうか。

石田氏:まず取り組んだのが「シンプルかつ最安値帯の基本サービス」の提供で、接続サービスはADSLやFTTHで25種類もあったプランを4種類にまとめました。また、FTTHやADSLの各プランも、大手プロバイダーの中では最安値帯で提供しています。

DTIは複雑だったプランを4つに集約することで、ユーザーに選びやすいサービスを提供している

 FTTHは月額3171円から、ADSLは月額1995円からで、いずれも他の大手プロバイダーに比べて安い価格です。月額では100円〜300円程度の違いですが、長く使い続けるなら絶対お得な価格で提供しています。大手比較サイトでも、5年以上使い続ける場合を想定して月額料金を算定すると、DTIは最も安いプロバイダーであることが証明されています。

参考例:「プロバイダーナビ」による比較
http://www.provider-navi.jp/hikaku/hikari/tokyo/?years=5&tel=&htype=mansion

 入会時には、3万円のキャッシュバックや、最大3カ月無料といったキャンペーンも展開しています。また、ユーザーの引っ越し時には、高速モバイルを低価格で貸し出し、回線の工事が終わるまでのインターネットを使えない期間を無くす「引越しナビ」といったサービスも提供しています。こうしたきめ細かい対応を行った結果、現在では接続サービスの会員も純増となっています。

引越しナビ
http://dream.jp/hikkoshi/

 その上で、やはり接続サービスとしては通信品質にも徹底的にこだわろうということで、2010年4月には世界最大のCDNであるAkamaiに接続しました。また、検索エンジン大手企業のキャッシュサーバーを設置し、ネットワークにも直接接続したことで、大幅に通信品質が向上しました。

――キャッシュサーバーはどの程度効果があったのでしょうか。

石田氏:キャッシュサーバーの効果は本当に大きく、設置後はむしろ内部のネットワークの方が溢れそうになってしまったほどです。動画サービスなどのレスポンスが良くなったことで、ユーザーからのリクエストが大幅に増えたことが原因なのですが、これは想定外でした。DTIの内部のネットワークも当然計画を立てて増強しているのですが、その予想を上回るほどの効果でした。

 今はトラフィックのかなりの部分を動画関連のコンテンツが占めていると思いますが、ピーク時にはトラフィック全体の3〜4割ぐらいをキャッシュサーバーが占めるという時もあり、動画コンテンツはかなり快適に視聴できるようになったと思います。

――ユーザーはその効果を体感できるものなのでしょうか。

石田氏:たとえば先日発売されたApple TVであるサービスの動画を視ましたが、他の大手プロバイダーから視る場合と、DTIの回線から視る場合では、DTIの回線から視た方が体感として速く視ることができました。

 また、DTIではフレッツ光回線の実効速度状況も、グラフにして公開しています。全国各地に計測用の機器を設置しまして、30分おきにDTIと他社の実効速度を計測しています。これも品質に自身があるからできることです。

30分毎に公開しているネットワーク情報

プレスリリース(DTI、通信高速化に向けプロジェクトを実施)
http://www.dti.co.jp/release/100426.html
大手プロバイダーとの速度比較(東京)
http://dream.jp/support/sensing/traffic_week.html?area=tokyo
大手プロバイダーとの速度比較(大阪)
http://dream.jp/support/sensing/traffic_week.html?area=osaka

サポートでも徹底した情報公開。ユーザー掲示板は役職者が24時間対応

石田氏:情報公開はサポートの面も進めていまして、サポートセンターの電話応答率をウェブで公開しています。サポートセンターは佐賀県唐津市に新しく作ったもので、ここの様子も画像で公開しているのでウェブで見られますが、技術サポートのスタッフは全員ドットコムマスターを取得するなど、単なるマニュアル対応だけでないサポート体制を構築しています。また、この設立時には地元佐賀テレビに取材いただき、ドキュメンタリー番組として実際に放映され、地元からも大変多くの反響をいただきました。

DTIがユーザーに公開しているサポートセンター画面>

サポートの利用状況公開
http://dream.jp/support/index.html#hotlines
サポートセンター設立までのドキュメンタリー番組 『夢、挑戦』
http://www.freebit.com/press/movie/2008-05-16_FLV/index.html

 「SiLK Touch」という画面共有によるリモートサポートサービスも提供していて、これもかなりユーザーに好評です。フレッツでもリモートサポートは有料で提供しているのですが、我々の場合は「Emotion Link」という独自の技術を使って、すべての回線で無料で提供しています。また、24時間の掲示板サポートがありまして、直接決定権限のあるジェネラルマネージャー以上の者が回答しています。

SiLK Touch イメージ画面 24時間サポートの掲示板画面

 7月には、USTREAMで中継をしながらユーザーと直接の懇談会を開催しまして、150人ぐらいの同時接続がありました。こうした取り組みもプロバイダーではあまりないのではと思いますし、そういう意味では風通しのいいプロバイダーになっていると思います。

――DTIは長く利用されているユーザーも多く、要望や意見も高いレベルのものが多いのではないでしょうか。

石田氏:本当にいいユーザーの方が多いなと思いますね。先日、DTI始まって以来のシステム不具合が発生しました。その際には私も対応したのですが、「この部分をちゃんと対応しなければだめだ」といったサポートに対する意見をたくさんいただき、とてもありがたかったですね。そうしたご期待に沿うためにも、もっと頑張らなければいけないと思いました。

 また、メールサービスだけでなく、ユーザーの皆様にはより快適に、より安定した回線をご利用いただきたく、光ファイバーへの乗り換えを積極的にオススメしています。

 他社が「最大○○円〜」と謳っているキャッシュバックは、だいたい「光ファイバーに電話サービスとテレビサービスと……」と様々なオプションサービスを付けた結果提供されるものですが、DTIは回線とプロバイダー契約だけで3万円のキャッシュバックになります。

これは他の大手プロバイダーが行っているキャンペーンよりも高いキャッシュバック額を提供しています。

3万円キャッシュバックキャンペーン
http://dream.jp/lp/dti/withflets/

「ServersMan@VPS」が好調、今後はIPv6への移行がプロバイダーの大きな課題

――VPSサービス「ServersMan@VPS」のような、接続以外のサービスも提供されていますが、今後はそうしたサービスをさらに展開していくのでしょうか。

石田氏:現在、力を入れているのがユビキタスとクラウドのサービスで、「ServersMan@VPS」も4月のサービス開始以来、非常に良い伸びをしめしています。今ではだいたい新規ユーザーの3分の1ぐらいが、VPSやユビキタスサービスとメールサービスを提供するプラン「Ubicプラン」関連になっています。最近ではTwitterで「DTI」と検索してもほとんどVPSの話しか出てこないので、逆にプロバイダーの方ももっと話題にしていただけるようにしないとと思っています。

DTIの提供するクラウドサービス「ServersMan@VPS」

 ServersMan@VPSは、ホスティング事業者が単に仮想化を使っているということではなく、完全にクラウドを想定した形でシステムを構築していますので、様々な対応が早く行えるようになっています。たとえば、9月には利用可能メモリーを倍増しましたが、センター側でコントロールしていますので一気に行えました。11月にはまた倍増キャンペーンということでCPUリソースの倍増と、ディスクの増設サービスを発表しました。こうしたバージョンアップは来年の3月ぐらいまでの分はもう予定を立てていますので、毎月発表するのが楽しみです。

 ディスクの拡張という点では、ServersMan@VPSはWebDAVのディスクスペースとしても使えるのですが、よりインテリジェントな使い方ができるサービスも近々発表する予定ですので、さらに用途が広がると思います。

――VPSのようなクラウドサービスは、ある意味では接続する回線はどこでもいいということにもなるのではと思いますが、接続サービスとの関係についてはどのように考えていますか。

石田氏:ServersMan@VPSのユーザーにとっては、接続回線もDTIを使うことでネットワーク的に直結になりますので、速度や安定性の面での優位性や、サポートがワンストップで受けられるようになるといった点をアピールしていきたいと思っています。

 逆に、クラウドサービスも世界中どのサービスを使ってもいいという考え方もありますが、DTIは世界ではなく日本で展開するサービスですので、ServersMan@VPSは日本のユーザーの要望に応えられる「手の届くクラウド」でありたいと思っています。たとえば海外のサービスでは日本語対応が遅れたりといったこともありますが、とにかくユーザーからの要望にいかに早く対応できるかが重要だと思っています。毎月のServersMan@VPSのバージョンアップも、すべてユーザーからの要望に対応しているもので、こうした要望への対応をこれからも積極的に進めていきます。

 DTIのVPSサービス「ServersMan@VPS」をご利用中のユーザー限定ですが、3万円のキャッシュバックの他に、フレッツ光のプロバイダーだけ乗り換えていただければ最大12カ月無料のキャンペーンも実施中です。

ServersMan@VPS ユーザー限定企画!利用料金最大12カ月間無料の特別キャンペーン
http://dream.jp/cp/vps_norikae/

プロバイダーはある意味ベンチャーでなければいけない

――そうした新しいサービスや技術の導入に積極的なのはなぜでしょうか。

石田氏:プロバイダーはある意味ベンチャーでなければいけないというか、かつてプロバイダーがベンチャーからスタートした時代は、各社がいろいろな技術やサービスにチャレンジしていました。今ではプロバイダーも大企業になりましたが、プロバイダーの技術やサービスは何か周回遅れのような感じになってしまっていて、それではいけないと思っています。我々は回線もトップの品質のものを持っていますし、クラウドの分野においても、技術的にもコストパフォーマンス的にもトップのものを持っていかなければいけないと考えています。

 また、これからはクラウドに加えて、IPv6へのシフトという大きな役割も待っています。我々には中国のチャイナテレコムの評価試験にも通った「六飛」(リューフェイ)という技術があり、これを使ってすべてのものをIPv6化していこうと考えています。積極的にIPv6への移行を進めている中国でも認められた技術で、日本の全ユーザーが来ても耐えられるような仕組みになっています。

六飛(リューフェイ)
http://www.6fei.com.cn/

――フレッツサービスでも2011年からIPv6接続を提供する予定となっていますが。

石田氏:フリービットで「Feel6」としてIPv6の実証実験を始めた頃は、「なんだトンネル方式じゃないか」とよく言われましたが、結局NTT東西でもトンネル方式を提供するわけなので、むしろトンネル方式であれば我々の技術の方が使い勝手がいいと思います。DTIでも、フレッツについてはNTT東西のIPv6接続サービスも提供する予定ですが、我々独自の技術を使ったIPv6サービスはどの回線に対してもオプション料金無しで提供していきたいと考えています。

 今後、IPv6への移行にプロバイダーが果たす役割はとても大きなものになります。フリービットグループでは2002年からIPv6に取り組んできていて、この分野でもトップの技術を持っていると自負していますし、IPv6への本格的に移行にあたってその技術を示すことができると思います。

――ありがとうございました。


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(三柳 英樹)

2010/11/30 00:00