日本マイクロソフト、パブリッククラウドサービス「Office 365」を提供開始


Office 365
日本マイクロソフト 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部 ロアン・カン本部長
Office 365がクラウド活用を促進する

 日本マイクロソフト株式会社は29日、パブリッククラウドサービス「Office 365」を同日より提供すると発表した。

 Office 365は、WebブラウザでMicrosoft Officeが利用できる「Office Web Apps」、メールを中心としたグループウェアサービス「Exchange Online」、コラボレーションサービス「SharePoint Online」、コミュニケーションサービス「Lync Online」などのクラウドサービスを統合したもの。

 すでに提供されている「Microsoft Business Productivity Online Services(BPOS)」の後継にあたり、これを利用することで、企業は従業員の個々の生産性、あるいはコラボレーションによる価値を最大化でき、ビジネスを円滑に遂行できるようになるという。

 また、東日本大震災の影響により、データを自社設備で保有せず、またいつでもどこでも作業可能な環境を提供できるクラウドサービスが大きく注目されるようになっているが、こうしたメリットはOffice 365でも提供可能とのこと。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部 ロアン・カン本部長は、「震災により事業継続性が今まで以上に重要になり、グローバルでのバックアップが注目されている。また、遠隔地での勤務のニーズも、Exchange Onlineなどによる在宅勤務で生産性をたもてるし、個々の企業がオンプレミスでサーバーを持つよりも、1つの大きなデータセンターに統合して持つことが節電にもつながる」と述べ、Office 365が時勢に合ったサービスであることを強調した。

 ただ、Officeアプリケーションやコラボレーション機能をクラウドサービスとして提供すること自体は、決して珍しいことではない。しかしOffice 365では、これまでに広く普及してきたMicrosoft Office、Exchange Server、SharePoint Serverなどの日本マイクロソフト製品と変わらない使い勝手を実現している点が、ほかのサービスと大きく異なるとして、こうした点を訴求していくとした。

 ラインアップとしては、主に1~25名での利用を想定(最大50名)した「Office 365 for small Business(プランP1)」と、それ以上の企業を対象にする「Office 365 for Enterprise(プランE)」の2つに大きく分かれ、さらにプランEはプランE1~E4の4つに細分化される。1ユーザーあたりの月額料金は、プランP1が600円、プランE1が1000円、プランE2が1600円、プランE3が2550円、プランE4が2860円。

 

SMBも積極的に狙う、パートナーとの協業も

パートナーと提携し、SMB向けにワンストップソリューションを提供する
登壇したパートナーとの記念撮影。左から、日本マイクロソフトのロアン・カン業務執行役員、米Microsoftの沼本健コーポレートバイスプレジデント、NTT Comの田中基夫理事、大塚商会の片倉一幸専務、リコージャパンの窪田大介専務執行役員、日本マイクロソフトのバートランド・ローネー執行役常務

 販売対象としては、大手企業ももちろん狙うものの、「世界規模で見ると、雇用の2/3を賄っているのはSMB。初期投資を必要とせず、大企業並みのインフラやスタッフを抱えなくても、最新テクノロジーを使った業務遂行ができるOffice 365は、SMBにうってつけで、コラボレーションを生かした業務最適化が可能になる」(米Microsoft コーポレートバイスプレジデント オフィスプロダクトマネジメントグループ担当の沼本健氏)と、初期導入が容易といった、クラウドならではのメリットを生かし、SMB(中小企業)市場へのアピールも続けていく姿勢を示す。

 こうしたSMBへの“ローラー作戦”は、やはり日本マイクロソフトだけでは手が余るところで、パートナーの支援が必須になる。また、大企業へ導入する場合はインテグレーションが必要になり、やはりパートナーとの協業が重要になる。こうしたことから同社では、パートナーのリクルート、協業も積極的に進める考えで、カン氏は「2年前にBPOSを立ち上げた時は30社だったパートナーは、今は700社以上になった」との実績を強調。パートナーのビジネスチャンスを拡大する道具として、同社のクラウドサービスが順調に受け入れられているとした。

 今回のローンチにあたっても、NTT Com、大塚商会、リコージャパンの担当者が登壇し、Office 365を自社のサービスとバンドルして販売していくことを明らかにした。特にSMBでは、専任のIT担当者が不在であることが多く、クラウドサービスでも導入やサポートが欠かせないため、付加価値サービスとのバンドル販売により、大きなビジネスチャンスがあると見ているからだ。

 しかもこれらの3社は、Office 365の料金と自社のサービスの料金を、ユーザー企業からまとめて徴収できるのだという。通常、Office 365を初めとする日本マイクロソフトのクラウドサービスを利用する場合は、同社へ直接料金を支払う必要があるが、3社のソリューションを利用する場合は、支払窓口をパートナーに一本化できるメリットがある。

 日本マイクロソフト 執行役常務 ゼネラルビジネス担当のバートランド・ローネー氏は、「日本の中堅中小企業の23%が、1つあるいは複数のクラウドを使いたいという意向を持っており、これはほかの国より大きい。しかし同時に、日本の企業から購入したいというニーズもある。今回、パートナーからソリューションとして提供することで、1つのサポート、1つの請求書(払い)に対応した。パートナーが直接販売することで、より多くのお客さまに納得していただけるのではないか」と述べ、この提供を歓迎している。

 なお今回、正式リリースにあたって、パートナーが提供する革新的なアプリケーションやサービスを集めたWebサイト「Office 365 Marketplace」もオープン。「パートナーはこのサイトをショーケースとして使えるほか、ユーザー企業にとっては、自社の要望を満たすパートナーを見つけられる。すでに60を超えるサービス、ソリューションが登録されている」(ローネー氏)とのことだ。

パートナーと提携し、SMB向けにワンストップソリューションを提供する日本だけの特別キャンペーンも実施する

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(石井 一志)

2011/6/29 17:11