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「光テレホンJJY」実験運用開始、ひかり電話の回線を利用する新たな日本標準時供給システム

アナログ電話回線による現行の「テレホンJJY」から移行へ

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は26日、光電話回線網を利用した新たな日本標準時の供給システム「光テレホンJJY」を開発し、実験運用を開始したと発表した。NICTが維持している日本標準時の時刻データは、標準電波、ネットワーク、電話回線を通じて供給されているが、このうちの電話回線によるシステム「テレホンJJY」の置き換えを目指すものだ。新システムでは、従来のアナログ電話回線網による供給と比べ、通信速度の高速性、接続の安定性、通信費用の低廉化が期待される。

 現行のテレホンJJYは、1995年サービス開始。現在、毎月約14万件のアクセスがあり、主に放送局やNTTの時報サービス「117」、交通機関などの重要機関における基準時計の同期に利用されているという。アナログの公衆通信回線を利用し、パソコン通信の形態で接続する仕組みで、時刻データを受け取るクライアント側は、回線遅延を計測することで補正が可能。遅延を補正した後の同期精度は1ms程度だという。

現行の「テレホンJJY」のホストシステム

 しかし、NICTによれば、多様化する現在の電話回線では接続の安定性や時刻同期精度の劣化などの問題があるほか、アナログのモデム装置が国内ではもう製造されておらず、今後の機器の保守についても課題を抱えているとしている。

 新システムの光テレホンJJYはこうした問題を解決するため、NICTがセイコーソリューションズ株式会社との共同研究により開発した。アナログ電話回線に替えて、NTTの光電話回線網である「データコネクトサービス」を利用する。

 データコネクトサービスは、「フレッツ 光ネクスト」「ひかり電話」による帯域確保型データ通信サービス。インターネットなどとは異なり、電話番号による1対1の接続でセキュアな通信が可能であり、帯域も確保されるため安定した接続でデータ通信が行えるとしている。現行のテレホンJJYにおける通信速度は、アナログモデム接続で1200~2400bps。これに対してデータコネクトサービスによる通信速度は64kbps(最小値)のため、データ転送速度は26~52倍となり、時刻供給精度の安定性が図れるという。また、通信料金(64kbps)も全国一律で30秒/1円(税別)のため、通常の電話に比べて低廉だとしている。

 光テレホンJJYの時刻データを供給するホストシステムとしては、NICTが開発したハードウェアNTPサーバーを活用。クライアント装置としては、セイコーソリューションズのNTPサーバー「Time Server TS-2210テレホンJJYタイプ」向けに、光テレホンJJYに対応するファームウェアを6月7日にリリースする予定だ。これらを連携することで、1ms以下の同期精度で時刻供給が行えるとしている。

Time Server TS-2210テレホンJJYタイプ

 NICTでは今後、「日本標準時グループ」のサイトで順次、光テレホンJJYの利用方法について情報を公開。定常運用を目指し、従来システムからの移行を進めていく。

 なお、セイコーソリューションズは、6月8日~10日に幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2016」の同社ブースにおいて、TS-2210の光テレホンJJY機能を展示する予定だ。

(永沢 茂)