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ハッキングの「サイバー甲子園」開催、若い人材が暗黒面へ堕ちぬよう表舞台のキャリアパス創出
今年のCTF大会「SECCON 2015」は学生限定枠を新設
(2015/6/9 19:22)
特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は9日、情報セキュリティ人材の発掘・育成を目的としたセキュリティコンテスト「SECCON 2015」の開催概要を発表した。8月下旬から12月上旬にかけて、地方大会やオンラインによる予選を実施。上位通過者が来年1月末の決勝戦でサイバー攻防戦を繰り広げ、サーバーの侵入・防御技を競う。
SECCONは、セキュリティの実践的技能を競う“CTF(Capture The Flag)”と呼ばれるゲーム形式の競技会として実施されているもの。2012年度に学生向けのコンテストとしてスタートし、2013年度からは社会人向けのコンテストと統合。所属・年齢を問わず参加できるようにしたほか、英語によるオンライン予選で海外からの参加にも対応した。
昨年の2014年度大会では世界58カ国、延べ4364人が参加し、日本のみならず世界的に見ても最大規模のCTF大会に成長。実際、同大会では韓国、台湾、米国の海外チームが上位を独占し、こうした世界トップレベルのハッカーと直接対戦できる貴重な場になっているという。
今年度開催のSECCON 2015でも引き続き、学生・社会人を問わず参加を受け付けるとともに、日本語および英語によるオンライン予選を実施。さらに、詳細は未定だがASEAN諸国および台湾での連携大会も予定されているとしており、海外からの参加者拡大を促していく。
一方で、こうしたトップレベルの無差別級の競技でまだ勝負できる自信がないような学生たちにもコンテストへ積極的に参加してほしいと、SECCON 2015では学生限定枠を新設した。横浜、広島、福島、大阪、九州で開催する地方大会のうち、福島と九州が学生限定の予選となる。さらに1月末の決勝戦も、無差別級のinternational枠と学生限定のintercollege枠を分けて競技する。
また、11月開催の福島大会は、今年度の新たな取り組みとして「サイバー甲子園」として実施し、学生の中でも18歳以下に限定。学校対決および予選通過者20人による個人戦を行う予定だが、エントリー方法や審査方法などの詳細は追って発表する。
なお、サイバー甲子園は、会場となる会津大学で開催されるプログラミングコンテスト「パソコン甲子園」と同じ日程での開催となる。会津大学では十数年にわたり同コンテストを開催することで、高校生の優秀なプログラミング人材の獲得に実績を挙げているという。
一方でセキュリティ分野に関しては、一部の公立大学や高等専門学校でセキュリティ専門学科を設置する動きがあるものの、受け入れ可能な教育機関はまだ少ないという。ボランティア約40名で構成するSECCON実行委員会で委員長を務める竹迫良範氏によれば、サイバー甲子園を実施する背景には「ハッカーになりたい若者のキャリアパスを広げたい」といった狙いもあるとしている。
竹迫氏はまた、SECCONの将来像についても言及。現在、ハッキング技術に関する知識がインターネットで簡単に入手できるような環境にある反面、若者がアンダーグラウンドの思想まで学んでしまう危険性があることを指摘。SECCONでは、サイバー攻防戦を実践できる場を提供すると同時に、大人が見本となって倫理観も教えながら、ハッキング技術を正しく社会の役に立てるようにすることを目指す。
SECCON 2015には、国内のIT・セキュリティ企業など24社が協賛。記者説明会であいさつした富士通株式会社の大久保仁志氏は、サイバー甲子園がセキュリティ分野の若い人材の底上げにつながることを企業として期待しているとした一方で、発掘した人材を企業がどう受け入れていくかという面で課題もあると指摘した。このほか、SECCON 2015には、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)や総務省、文部科学省、総務省、警察庁、公安調査庁などの国の機関なども後援する。