【イベントレポート/Silicon Alley 99】
シリコンアレー(ニューヨークのインターネット関連企業地帯)の企業を取り扱った雑誌「Silicon Alley Reporter」主催による、インターネット関連の会議「Silicon Alley 99(SA99)」が、ニューヨークで2月23日(米国時間)から2日間にわたり開催されている。今年で3回目を迎えるSA99には、多数のシリコンアレー企業のエグゼクティブを始め、大学関係者やメディア関係者が2,500人以上も集まり、インターネットの未来について語り合った。
初日の基調講演を行なったExciteのGeorge Bell CEOは、インターネットがいよいよ統合の時代を迎え、今後の生き残りのためにブランド戦略やコンテンツがますます重要になるという展望を語った。また、最近発表された@Homeとの合併により、Exciteがいかなる方向に進むのかについても語った。同氏は「コンテンツはインターネットの中核になる。今後はxDSLやケーブルモデムの普及により高帯域幅が実現するが、ユーザーがもっとも求めているものは、こうしたディストリビューションの力を活かして配信されるコンテンツにある。ブラウザーやハードウェアデバイスの価値は下がり、コンテンツに価値が移行している。ブランドロイヤルティはコンテンツから確立される」と語った。 | |
George Bell (Excite) |
同氏は、ブランドロイヤルティ確立のために、Exciteではパーソナライズ、問題解決、ダイレクトマーケティングという手法を採っているという。同氏は「以前、検索の効率化を図ろうと試みて、70名の編集スタッフを採用して総計8万サイトの評価を行なった。しかし、急増するWebサイトの評価など不可能で、結局かれらをすべてクビにして批判を浴びたことがあった。その後、ユーザーが求めているサイトは、いつでもどこでも自分の興味のあるニュースや株価情報を提供してくれるサイト、また『○○を知る方法は?』、『○○がどこでいくらで売られているか』などの問題解決を提供してくれるサイトだと気づいた」と語る。
Exciteのパーソナライズド・ホームページでは、通常のパーソナライズしていないユーザーよりもリターン率が25倍高くなり、Yahoo!やAOL、Lycosよりもスティッキー(ユーザーが長時間サイトに滞在すること)だという。また、広告ターゲティング技術の「MatchLogic」を使用することで、ユーザー体験を集積/分析し、それをMy Pageに反映させることができるという。
これらのパーソナライズ、問題解決に加え、重要になってくるのが電子メールなどのダイレクトマーケティングだ。Bell CEOは「インターネット広告は、インプレッションよりもダイレクトマーケティングに比重が移っている。すでに市場はインプレッションによる売上が全体の3分の1、ダイレクトマーケティングによる売上が同3分の2を占めるようになっている。また、バナー広告のクリック率は1~2%だが、ダイレクトマーケティングでは5~25%と圧倒的に高く、CPM(Cost per Mill:1,000回表示あたりの広告料)もバナー広告が6~60ドルであるのに対して、ダイレクトマーケティングは300~800ドルだ」と語った。しかし、ダイレクトマーケティングはやり方によってはスパムになりうる危険性があり、「やりすぎてはダメだ」とも付け加えた。
@Homeとの合併に関しては、同氏は「2社はまったく企業文化が異なると危惧する人もいるが、スピード勝負の企業と資本の安定した企業が合併することで、我々は逆に『世界新秩序』を生み出すと信じている。@Homeとの合併により、我々はケーブルモデムや電話回線を通した接続プラットフォームをすべて獲得し、さらにTCI(@Homeの最大株主)のケーブルTV加入者に対するマーケティングにより、ユーザーを爆発的に増やすことができる」と語った。また、B-to-B(ビジネス対ビジネス)市場にも力を入れ、@Workと提携しているIntuitのQuickenユーザーにスモールビジネスツールを提供するという。さらに、来たるべきインタラクティブTV時代に備えて、MatchLogic技術でターゲットを絞ったEC戦略も考えているとした。
Bell CEOは最後に「実は昨年12月にYahoo!とも合併の話し合いを行なっていたが、結局は(接続)プラットフォームが必要だということに落ち着き、スケーラビリティとブランドの側面から@Homeが最適ということになった。偶然にも@HomeとExciteは企業のロゴカラーが赤と黒と白で同じだ」と語り、観客を笑わせた。
('99/2/24)
[Reported by HIROKO NAGANO, NY]