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【イベント】

坂本龍一のオペラ「LIFE」に使われるインターネット技術の詳細が発表される

■URL
http://life.sitesakamoto.com/
http://www.asahi.com/opera/webcast.html
http://www.asahi.com/opera/ (「LIFE」公式サイト)

 9月4日の大阪公演を皮切りに大阪と東京で行なわれる、音楽家坂本龍一氏のオペラ「LIFE」の公演に使われるインターネット技術とウェブキャストの詳細が発表された。発表によれば、今回の公演では実験段階のものを含んだ、最新のインターネット技術を公演のプログラムの一部として積極的に用いるという。インターネット全般のスーパーバイザーを慶應義塾大学教授の村井純氏が担当する。

 この「LIFE」は坂本氏が数年前から構想をあたため、準備を進めていたもの。「地球環境・愛・救い・共生」といったテーマに、映像やパフォーマンスをとり込んだ総合舞台芸術であるという以外の詳細は実際の公演まで明かされていない。

 最新技術のうち「時間保証技術」というのは、ネットでデータ伝送する際に生ずる遅延の問題を解決しようとするものである。現行の技術ではそうした遅延の時間的幅にはブレがあるが「時間保証技術」によって遅延の幅を極力一定に保つことができるという。これによって、会場とアメリカのニューヨーク、ドイツのフランクフルトを結び、各ダンサーが遅延を計算に入れたコラボレーションをし、地球の広さをこの遅延によって表現するという。

 また、ライブのウェブキャストが行なわれるが、今回はあえてリアルタイムの画像発信を減らし、音声の質を重視する。ウェブキャストでは音声と画像の同時送信技術とそれを支えるインフラがまだまだ未成熟なため、両方を中途半端なクオリティで送信するよりは、あえて音質を重視した送信を行なうということ。画像情報が少ないことを補うために「LIFE」専用のウェブキャストアプリケーションを用意し、アプリケーションから再生される映像と、インターネットから流れてくるストリーミングの音声を同期させることにより、会場のライブとは違うインターネット独自のライブを楽しめるという。このアプリケーションは近日中に公開される。なお、アプリケーションの利用には、別途クライアントに「QuickTime 4」が必要だ。

 そして今回は視聴者もライブに参加するための試み「Hyper Broad Gathering」がある。これは同氏が'97年に行なった「Playing The Orchestra f」(本誌'97年1月24日号参照)の最終公演で実験された技術を改良したもの。当時は視聴者がパソコンのキーボードを叩くとその信号が会場のスクリーン上に「f」という文字になって浮かび上がるにすぎなかったが、今回は視聴者の反応をリアルタイムで集計しそれをリアルタイムで会場内にあるスクリーンにOpenGLを用いたグラフィックスにし、ネット上の観衆の反応をさまざまな形で表現できるという。

'95年11月に坂本氏が「D&L Tour」で日本最初のウェブキャストを行なってから早4年あまり(本誌'95年12月1日号参照)。昨今ではウェブキャスト自体はさほど目新しいものではなくなっているが、今回の「LIFE」は、以前の実験で用いた技術をさらに改良して提供する点や、インターネット技術の急速な進展によって可能となった新たな技術を本番の公演で試すという側面からも要注目の公演と言えそうだ。

('99/8/30)

[Reported by yuy@ibm.net]


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