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【イベント】

日本インターネットプロバイダー協会、会員向けにビジネスモデル特許のセミナー

■URL
http://www.jaipa.org/ (JAIPA)

セミナー

 プロバイダー(ISP)各社が集まる日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)は20日、ビジネスモデル特許について会員各社が学ぶためのセミナーを開催した。講師に弁理士の松倉秀実氏を迎え、ビジネスモデル特許と呼ばれているものの背景や実際が紹介された。


 まず、米国の現在の特許政策の起源として、不況下のレーガン政権で提出された「ヤングレポート」で、「プロパテント政策(特許重視政策)」が打ち出されたことが紹介された。これは、経済活性化のため、企業を特許によって強化し、投資家による投資を引き出そうという政策。これにもとづき1995年に特許の審査基準が緩和され、これ以降、「ビジネスモデル特許」と呼ばれる特許が目立つようになった。

 松倉氏は、これは「特許の自由競争化」であり、それまでのように国家が妥当性を保証する要素が減り、ライセンスに関係する者が自分で判断材料を集めて妥当であるかを判断するようになったと語った。

 また、米国のビジネスモデル特許の例として、プライスライン社による「逆オークション」の特許を例示。実際のクレーム(請求項)を見ながら、特許が「逆オークション」の概念そのものにかかると誤解されがちだが、実際には具体的な方法や手順に対してかかるものであることを示した。


 続いて日本の特許について解説した。日本での特許用件として、自然法則を利用した「発明」であること、出願前に公知のものとなっていず「新規性」があること、容易に考えつくものでなく「進歩性」があること、の3つがある。日本では例えば数学公式(やビジネスモデルそのもの)は特許にならないが、「~をコンピュータにより求める装置」とすることで審査基準を満たす。これによって、GIFやMP3の特許が日本でも取得されているという。


 日本での具体例として、今月ISP各社に連絡された「インターネット接続課金特許」の例が挙げられた。これは、「ターミナルサーバ」「認証サーバ」「予め設定された利用可能な時間を示す(略)拡張認証データベース」「課金サーバ」を備え、「クライアントの接続度数が0になるまでの間に限り」インターネット接続サービスを提供するというもの。1996年7月11日に株式会社インターナショナルサイエンティフィックが出願(特願平8-201166)と出願審査請求を行なった。

 それに対し特許庁は1998年10月27日、プリペイド方式のインターネット接続サービスの実例を挙げ、ユーザーID・パスワードによる認証や、接続時間の管理はすでに行なわれていることであり、サービスを提供するためにサーバーを用いることも一般的に行なわれている事項であるとして、拒絶理由を通知した。

 それを受けて出願人は1998年12月22日に、「従来のシステムのもとで不特定多数者の認証データを管理した際に生じる恐れのある不都合を無くすために成されたもの」「不特定多数者の認証データを認証データベースと拡張認証データベースとにより2次的に管理して」適切に管理するものであるとして、従来のシステムがある上でそれの不都合を無くす発明との意見書を提出。その内容で1999年5月に特許査定、6月18日に登録(第2939723号)、8月25日に特許広報発行となった。

 これに関する質疑応答では、日本の特許では自然法則を利用したものが対象となるため、人間の手作業がからんだユーザー管理は、(自然法則利用に関する議論はあるものの)特許を受けた技術の範囲とならないのではなかろうかとする意見もなされた。

 ただし同じ件について米国でも特許となっている。米国では緩和のために出願の内容で特許を通っており、日本と範囲が異なる可能性があることが指摘された。


 最後に松倉氏は、インターネットではgTLDがICANN管理となったが、これにより.comや.netなどのgTLDドメインを持つところは米国の訴訟管轄となる可能性があると説明。一般的にこうしたgTLDドメインを持つ会社は米国の「訴訟ビジネス」に巻きこまれる可能性があることが指摘された。

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(2000/4/20)

[Reported by masaka@impress.co.jp]


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