【インタビュー】
「ガイドが作る高品質なコンテンツが一番の力」―About.com CEOに聞く
■URL
http://www.about.com/
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Scott Kurnit CEO兼会長
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1996年6月創業の米About,Inc(以下About)。専門分野を持つ「ガイド」が利用者をナビゲートする総合情報サイト「About.com」を運営し、全米第7位に輝くなど、新進気鋭の注目企業だ。そのAboutが日本でも同様のサイトを立ち上げるため、7月28日に株式会社リクルートと合弁会社「株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパン」を設立した。Scott
Kurnit CEO兼会長にリクルートとの提携、事業内容、今後の海外展開などについて語ってもらった。
●「ガイド」による情報ナビゲートサイト「About.com」を始めたきっかけは。
Kurnit氏
- 4年前の会社設立当時、今後インターネットはより複雑になり、情報も煩雑になると思っていた。そうなるとこれまでのような検索エンジンで対応することはできなくなるため、検索エンジンは変化し、よりサービスを重視するようになると思った。またロボットを使った検索サービスに不満を持っていたし、当時の検索エンジンは似たようなサービスを一律に提供していたしね。ロボットタイプの検索エンジンも役立つとは思うが、「ヒューマンタッチ」つまり人間の方が多くの人に喜ばれるのではないかと考え、このサービスを開始することにした。
●専門分野を持つ「ガイド」を導入しようというアイデアはどうやって生まれたのか。
Kurnit氏
- 会社を設立する前は、マスメディアの世界で働いていた。そこで、どんどん経費が膨らむのを見ていて、世界中に散らばっている高品質のスタッフを抱えていた方がもっと能率的な仕事ができるのではと考えた。
- 我々が採用している「ガイド」は他に仕事を持っていることが前提となっていて、世界20カ国に散らばり、それぞれ活躍している。例えば学者や医者など。経済的な観点から見ても他の競合会社よりもっと詳しくサービスを提供できるシステムではないだろうか。
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- ●ガイドの教育方法は。
Kurnit氏
- 現在、ガイドは800人以上おり、約5万トピックを作っている。ガイドの採用では、履歴をきちんと調べ、就業契約書を結んでいる。ガイドの教育システムだが、これはすでに特許を取っているもので、技術的なことなどをオンラインで教育している。ガイドは常にサイトを更新しなくてはならず、ガイドの仕事量が落ちると、ガイドをサポートしている当社のスタッフが適切なアドバイスを加える。しかし、それでも仕事量やコンテンツの質・レベルが上がらなかったら、やめていただくこともある。
- 「専門ガイド」というシステムを作ったときの目標は、客を一番に優先することだった。だから、ユーザーがガイドに満足しなかったならばガイドを変えなくてはいけない。このサイトは「高レベルの人達の集まり」ということをうたい文句にしているし。
●今後もAbout.comのようなタイプのサービスは真似できない?
Kurnit氏
- 非常にユニークなビジネスモデルだから簡単に真似はできないだろう。ガイドの公募からトレーニングシステムの構築、管理システムを作り上げるのは非常に難しい。もちろん一部は真似られているが、まったく同じモデルは米国の中でも作り上げられていない。我々がポリシーとしている「ヒューマンタッチ」は「人間対人間のコンタクト」という意味に思われがちだが、「人間の可能性をすごく大事にする」という意味だ。そして「ガイド」が作り上げる高品質なコンテンツが我々の一番の力になっているんだ。しかし、インターネットの変化は早いし、どんどん競合企業が出てくると思うので、常に脅威や危機感は持っている。
●日本そしてリクルートに注目した理由は。
Kurnit氏
- 日本に注目した理由は、市場の可能性とリクルートとのパートナーシップ締結の2つだ。3年前にいろいろな日本企業と交渉して、日本の文化は米国の文化と違うということを痛感した。だから米国のビジネスモデルをそのまま日本に持ってきたら非常にリスクが高いと思い、その中で日本市場に進出するためには、インターネットの経験を持ち、働く人の精神を理解している企業がベストだと考え探していた。そういう意味でリクルートは出版事業の経験も豊富なのでベストパートナーだと思い交渉を行なった。
●今後のアジア展開・世界展開は。
Kurnit氏
- 他の国々とも話を進めているが、まずビジネスとして発展できる市場を有することを優先的に考えている。また、ビジネスモデルをいかに運用でき、持続できるかといった要素も重要だろう。すでにイギリスに進出しているが、ヨーロッパをもっと発展させていきたいと考えている。そのために市場の発展性、ベストパートナーが見つけられるかどうかを常に頭に入れている。
- ヨーロッパ以外でも、これから全世界に普及させていきたい。我々の役割は世界中の人々をつなげることだと思う。インターネットは国際的な世界という部分がある一方で、各国独自のカラーがある世界だとも思う。基本的なビジネスモデルは弾力性があるので、パートナーによってもしくはユーザーごとに違うカラーを出せるサービスを提供できるだろう。
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(2000/8/4)
[Reported by moriyama@impress.co.jp]
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