■URL
http://www.idg.co.jp/expo/cmf/ (Content Management Forum 2000)
http://www.cidf.org/ (コンテンツIDフォーラム)
「Content Management Forum 2000」が東京都江東区の東京ファッションタウンで開催されている。デジタルコンテンツの配信インフラやビジネス戦略などをテーマに、30以上のコンファレンスが実施されるほか、展示会場には約20社が出展。コンテンツサービスや著作権管理技術、決済システムなどのデモンストレーションを行なっている。主催はIDGジャパンとコンテンツIDフォーラム(cIDf)で、同フォーラムが提唱している“コンテンツID”によるネット流通の著作権管理技術も紹介されている。
会期は6日までの2日間で、1万2,000人の来場者を見込んでいる。展示会場と一部のコンファレンスは入場無料となっている。
cIDf会長を務める安田教授は、NapsterやGnutellaを例に挙げ、これらのシステムが著作権フリーのコンテンツを流通する場合には非常に有効な形態であると評価する一方で「守らなければならないものが守られていない現状」が問題だと指摘。デジタルコンテンツの著作権を守っていくために統一されたコンテンツIDの確立が必要だと強調する。現在、音楽だけを対象にしたIDを提唱している団体は他にもあるが、動画や写真などを含めてすべてのデジタルコンテンツを統一的に扱おうという仕様はcIDfだけだという。cIDfでは、今年3月に「cIDf仕様書第1.0版」を発表している。
なお、cIDfの仕様では、コンテンツIDの先頭部分に割り当てられる「地域コード」や「管理センター番号」のみを国際的な非営利機関で管理し、それ以下のIDの取り扱いについては民間で運営される複数のID管理センターに委ねる形をとるという。例えば、地域別やコンテンツの形式別で、もしくは競合企業によって複数のID管理センターが並行運用されることが想定され、競争によりサービス内容の向上が期待できるとしている。
IDを埋め込むための透かし技術については、現在各社で開発されている電子透かし技術が一長一短であり、「一つの技術に限定するのは得策ではない」(安田教授)と判断。コンテンツの種類や使用方法などにより、複数の透かし技術を選択できるようにした。ただし、検出時にどの透かし方式が使われているかわからなくなるため、cIDfでは、実際にID情報が埋め込まれる「実透かし」と、検出時に実透かしの種類を識別する「メタ透かし」という2階層方式を採用している。
展示会場では、日立製作所がメタ透かし技術を紹介している。メタ透かしには実透かしの種類についての情報しか埋め込まれていないため、透かしとしては“薄い”ものとなるという。ただしその一方で、現在あるさまざまな実透かし方式や今後開発されるであろう透かし方式と重ねて使われるということで、それらに干渉しないように配慮する必要がある。メタ透かしは一方式に標準化しなければならないため、このあたりをどう解決するかが開発のポイントとなっている。
モノクロ書類の切れ端からコピーをとる。 普通のコピー機では左の状態になってし まう。ネットワークコピーマネージャー では、右のようにオリジナルの状態の “コピー”をとることも可能に |
「コンテンツIDメーカーforデジカメ」は、デジタルカメラで撮影した画像を読み込み、IDを透かしとして埋め込むソフト。ID管理センターへの権利情報登録まで自動的に行なえるようになっている。透かしはイメージ上に書き込まれるため、画質がわずかに劣化してしまうのは事実だが、人間の目には認識できない部分で書き込んでいるという。埋め込まれたIDは、印刷した状態からでも認識できる。
「電子透かし読み取りカメラ」は、印刷物からIDを識別する技術。一般に販売されているデジタルビデオカメラをノートパソコンに接続し、印刷物を撮影するだけで専用ソフトがIDを読み取るようになっている。デモンストレーションでは、A4サイズの写真の一部分を撮影、やや時間はかかったものの見事にIDを識別することができた。実は人間の目にはわからないが、透かし情報が“傷”として写真上に記録されているためだ。これらの“傷”は、たとえモノクロに変換された状態からでも認識できるようになっている。また、この技術を利用すれば、広告ポスターからウェブサイトにジャンプさせるといった活用も考えられるという。
こういった印刷物におけるID管理技術をコピー機に応用したのが「ネットワークコピーマネージャー」だ。例えば、汚れてしまった書類や破れて一部分しか残っていない写真から、もとの状態の“コピー”がとれるようになっている。書類からIDを読みとり、管理センターに照会した後、オリジナルのデータを取り寄せて印刷するという仕組みだ。モノクロしかない書類やコピーを繰り返して劣化してしまった書類からでも元のきれいなカラー原稿を“コピー”できるほか、さらには本の1ページ目をコピー機に乗せることで続きのページを取り寄せられるようにするなどの活用も考えられる。
◎関連記事
■“コンテンツID”でネット流通の著作権管理
(2000/9/5)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]