【特集】

劇的復活!? インターネットカフェ最前線

 インターネット黎明期、全国各地に存在していたインターネットカフェ。家庭にパソコンが普及し、インターネット人口が急増するにつれ、その存在意図は薄れていき、見かけることは急速に少なくなっていった……。
 ところが、2000年も終わろうとする現在、状況は急変している。食べ物重視、ネットゲーム推進、ゴージャスな設備といった新しい特徴をもったインターネットカフェが登場し始めたのだ。中には全国展開をうたうチェーンもあり、インターネットカフェが再び全国に広まる気配を見せている。
 新しいインターネットカフェの形とは? そして、インターネットカフェは再び力を取り戻すのか? 異なった特徴をもつ4つのインターネットカフェから、今後を探ってみよう。

●タイプ1 オフラインポータルを目指す韓国発信型 「Necca」


http://www.interpia.ne.jp/

Neccaの入り口とインターピアの梅さん
 急変するインターネットカフェ事情の、最先端にあると言えるのがここ「Necca」。12月1日東京・渋谷に一号店を開店したばかりだ。

 「Necca」のモデルとなったのは、韓国の“PCバン”。韓国で独自に進化したインターネットカフェで、バンとはハングルで部屋という意味。1時間100円前後という安さで、ネットワークゲームやチャットなどで長居して遊べる場所となっている。現在韓国に約1万7,000軒ほど存在するという。
 PCバンを日本に合うようにアレンジした「Necca」は、渋谷のど真ん中のビル内で、80台の高スペックマシンと、10Mbpsの高速バックボーンでサービスを提供している。100インチの大プロジェクターを設置したネットワークゲームゾーン、カップルで楽しめるプライベートゾーン、ノートPCユーザーが自分のマシンで高速回線を利用できる「モバイルゾーン」など、自分に合ったスタイルで楽しむことができる。

 Neccaを運営するインターピア株式会社代表の梅 憲太郎氏は、「一応ゾーンに分かれていますが、どのマシンでもネットワークゲームは楽しめますよ。コントローラーも貸し出しているので、ぜひこの楽しさを味わってください」と言う。韓国ではネットワークゲームの人気は高いが、日本ではコンシューマーゲーム機が普及しているため、インターネットユーザーの数に比べるとネットワークゲームの人気は低い。そこで「Necca」を、ネットワークゲームを遊べるプラットフォームとして打ち出し、その面白さに触れてもらいたい、という狙いがある。ゲームソフトも販売しているほか、遊び方がわからない人には店舗スタッフがインストラクター役も努める徹底ぶりだ。

 「Necca」は24時間営業で、利用料金は1時間500円。入店ベースではなく、使用しているPCの台数と時間をベースにした料金のため、例えば友人と2人で1つのPCを使った場合も、1台分の500円で済む。さらに初回利用時(無料の会員登録を求められる)には200円で1時間使用でき、10時間使えば1時間無料という特典もある。これで採算はとれるのだろうか?
 「コンテンツをプッシュしているゾーンがあって、ここでコンテンツプロバイダーから広告料などを提供してもらい、その代わりに利用料を抑える、という考え方をしています。企業にとってはPCの外で告知する機会になり、ユーザーにとってはここに来れば面白いコンテンツに出会えるという、いわば“オフラインポータル”的な形を目指しています」(梅氏)

 インターピアは韓国企業サムスンの子会社・イーサムスンからの出資を受けている。今後3年間で全国に500店舗を展開することが目標だ。

ゲームゾーンには大型プロジェクターを設置し、ゲームイベントにも対応できる
インターネット電話のコーナー。受話器型のアダプターが用意されている
インストラクター役もこなす店員さんたち

●タイプ2 大久保「PCバン」急増の震源地 「URI-net」


(※Webサイトなし)

ちょっと回っただけでもこんなに発見できる
 2つめに登場するのは「URI-net」。こちらもベースは韓国だが、先の「Necca」とは少々趣が異なる。実はここ、現在東京・新宿~大久保エリアに増加している、PCバン型インターネットカフェの火付け役的な存在だ。

 「最初はここの向かいのビルでやってて、手狭になったからこっちに引っ越した。今はPCは50台、自作が半分以上で、1.5Mbpsの専用線がある。日本語のPCは数台しかないけど、Microsoft Wordはハングルと日本語の両方があるよ」と語る、URI NET店長のキム・クンスクさん。「うちが一番最初で、一番大きいよ」というだけあって、職安通り(韓国料理店や韓国食品店が多いことで知られている)に面したビルの地下ワンフロアを使った店内は広々としている。ソファーセットには韓国の新聞・雑誌が山積みだったり、壁の注意書きもハングルだったりと、ここにいるだけで韓国気分? なんと韓国料理の食堂も併設していて、ビビンバやクッパを食べられる。夜の街でもあるエリアなので、もちろん24時間営業、利用料は1時間500円だ。

 キムさんはURI-netを開店した理由を「このあたりで働いている韓国人が多かったから」という。実際、現在も9割が韓国人、あと1割はアメリカ人などで、日本人はほとんど来ないそうだ。だが、この店が開店したあとに続々と同種の店が登場したのは、彼の読みが当たっていた証拠だろう。現在、職安通り沿いだけでも数店、大久保エリア全体では10店前後のPCバン型インターネットカフェが営業している。

 「ここに来るのは、韓国からの留学生が多い。国際電話が高いでしょ? だから、インターネット電話を使って韓国の友達や家族と話してるの。無料のインターネット電話が使えるDialpadやWowcallが人気だね。ヘッドセットも貸し出してるよ。あとはチャットと、もちろんネットワークゲーム。日本人はメールばっかりやってて、ネットワークゲームしないでしょ? すごくもったいない。もっと楽しいし、コミュニケーションできるのにって」(キムさん)
 そう言われて店内を見回すと、ネットワークゲームで遊んでいる人がほとんど。中には2人でゲームをしているカップルもいた。このお店以外にも、夕方になると高校生がゲームを目的にやってくるお店もあった。PCバン型では、ネットワークゲームの存在は不可欠らしい。

 「でも日本は高いよ、家賃も回線も。全然儲からない(笑)」というキムさん。しかし、現在新宿のみならず、他のエリアにも飛び火しつつあるPCバン型。まだまだ増える余地はありそうだ。

URI-netの店内。ゲームプレイ中のお客さんが多い
韓国料理が食べられるコーナー。もちろんメニューの基本もハングル
URI-netのキムさん。店内のPCの大半は彼の自作機

●タイプ3 コミュニケーションを重視する 「ガイアックスカフェ」


http://www.gaiaxcafe.com/

 コミュニティサービス提供で知られる「ガイアックス」によるインターネットカフェが、10月に京都に1号店をオープンした「ガイアックスカフェ」。コンテンツプロバイダーが提供するインターネットカフェとは、どんな形態だろうか?

 ガイアックスカフェの寺井朋子さんは「初心者の方でも入りやすいよう、PCがどーんとある形にはしていません。店内もゆったりしていますし」という。すっきりした店内は、PCのあるオンラインスペースとオフラインスペースに別れ、明るいイメージだ。

 「現在は初心者や学生の方、外国人の方がメイン。24時間営業ですが、午後8時以降の帰宅途中に寄っていかれる方と、深夜0時から3時くらいの、終電を逃されたのかな?(笑)って方の利用も多いようです」(寺井さん)

 現在PCは14台、1Mbpsの専用線を使用している。利用料は現在30分250円、その後は15分100円ずつで加算される。持ち込みは自由だが、今後は海外直輸入の紅茶など、ドリンクメニューを充実させる方向だ。インターネットだけでなく、味も高めていきたいという。

 まだ京都の1号店のみだが、ガイアックスカフェは今後3年間で全国に1,000店の出店を目標にしている。となると、次の店舗は?

 「近々東京近郊の数十店舗を対象に、コンテンツ導入店サービスを展開する予定」(寺井さん)。これはマンガ喫茶など、すでにインターネット接続PCを導入済みの店舗に向けて、ガイアックスのコンテンツを店舗の既存PCに導入し、アフィリエイトプログラム的な展開を図るものになるという。同時に、京阪・東京をはじめとした直営店とフランチャイズの展開を図り、3年後には1,000店を目指す方向だ。

 「コミュニティを多く持っていますから、オフラインを含めて、ユーザーの方と一緒にネットの楽しさを広めていければと考えています。女性も入りやすい形で、喫茶店やマンガ喫茶にいくよりガイアックスカフェ、という形を目指します」(寺井さん)

ガイアックスカフェ1号店の店内
おしゃべりができるスペースも多い

●タイプ4 カフェがあって、PCがある 「www.so-net/cafe」


http://www.so-net.ne.jp/cafe/

www.のエントランス
 4つめは、プロバイダー「so-net」による「www.so-net/cafe」。新宿・お台場のエンターテインメント施設「メディアージュ」内にあり、海に面したガラス張りの店内はトレンディスポットと呼ぶのがピッタリのかっこよさ。白を基調とした店内の壁は、毎月違うテーマでアート作品が展示され、購入もできる。

 店内で目に入るPCは、ノート型VAIOとiMacが数台。意外に少ないと思っていたら、「無線LANでどの席でも利用できるんで、表には出していませんが、PCは全部で20台ありますよ。使いたいお客様をお待たせすることはありません」と、「www.so-net/cafe」の荻原弘一さん。そのためPCもすべてノート型で、VAIOは常に最新の軽量型モデルを用意している。回線は1.5Mbpsの専用線だ。

 現在、カフェで飲み物などを注文すれば、PCは1時間無料で利用できる。通常利用が500円で、カフェメニューが300円からという点を考えると、お得なサービスといえる。

 「デザートはすべてキッチンで手作りしています。インターネットを強調するよりも、カフェとして使っていただければ。ちょっとお茶に入ったり、デザートを召し上がっているときに、PCが使えるんならメールチェックでも、といった形で利用してもらえればと思います。もちろん、初めて使う方の場合はお手伝いしますので、気軽に声をかけてください」(荻原さん)。

 店内にはライティングや音響システムも含めたイベントスペースがあり、イベントスポットとしても人気の「www.so-net/cafe」。イベントのストリーミング中継もよく行なわれている。またWebサイトのメッセージボードに書き込むと、そのメッセージが店内の電光掲示板に表示される「Message-Go-Round」などの、ユニークなサービスも行なっている。無線LAN、最新のVAIOなども含め、おしゃれなカフェというイメージを見せながらも、多彩な機能を使ったサービスを展開している形だ。全国展開といった予定は特にないといい、季節ごとの飲食メニューのリニューアルなどで新しさを出していきたいという。

イベントスペースを兼ねたコーナー。お台場エリアを一望できる
店内の一角の壁はギャラリー的にも使用
お茶を飲みながらワイヤレスで楽しめます

●番外編 マンガ喫茶とインターネット


 駆け足で4つのインターネットカフェを紹介した。まとめてみると、現在のインターネットカフェで高速回線やハイスペックなPCがあるのはもう当たり前で、そこからどうサービスを行なっていくかというところで違いを出している印象を受けた。またよく使われているサービスとして、「Webメール」や「チャット」は標準化しつつある。今回、この4つ以外の店舗もいくつか回ってみたが、Webブラウザーのスタートページに有名Webメールやチャットサイトをまとめたリンク集を設定しているお店が多かった。

 少々気になったのは、店舗側のWebブラウザーの扱い方だ。店舗によっては、客がPCを使い終わると、履歴やキャッシュをすべてクリアしてから次の客を呼ぶ形にしているところもあったが、何もケアしていないところも見受けられた。Webメールなど、ログインが必要なサービスを利用する場合は、気をつけたいところだ。

 さて、最後にマンガ喫茶とインターネットについて。
 最近、マンガ喫茶でインターネット接続PC(とゲーム機)を置いている店舗が非常に増えている。どうやって使われているかを観察していると、チャットにはまっている人、株価を見ている人、仕事をしている人など用途はさまざま。Webページを表示しながらマンガを読んでいる人も多い。中にはPCを数十台設置し、光ファイバー接続といった充実ぶりを見せる店舗もある。また“マンガ喫茶開業支援”といった形で、マンガ喫茶を始める人に向けて、マンガ数千冊とPC・ゲーム機をパックにして提供する業者も登場している。

 まだまだ増えそうな勢いのある「マンガ喫茶+インターネット」の組み合わせが、今後のインターネットカフェにどういう影響を及ぼすか。注目したいところだ。

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(2000/12/11)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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