【業界動向】

信州大、初の「バーチャル大学院」を2002年度より開校

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http://www.cs.shinshu-u.ac.jp/

信州大学工学部看板  信州大学工学部は、インターネットを利用した授業を受けることで単位取得が可能な「バーチャル大学院」を、2002年度より開始すると発表した。国立の理工系大学院(通学制)でインターネットですべての単位が取得できるコースは、全国でも初めてとなる。

 信州大工学部では、早くよりインターネットを利用した教育・研究に着目しており、すでに4年前からインターネット上の遠隔講義の実験を展開していた。これら実験を通して、従来の一斉授業の形に比べて、オンラインでの講義が高い効果を上げられるという実証が得られたという。今回、文部科学省が大学や大学院の教育・組織規則を定める「設置基準」を3月30日に改定して制度的な問題がなくなったことから、バーチャル大学院の開校を発表した形だ。

 具体的には、信州大学大学院工学系研究科 情報工学専攻で、インターネット受講の生徒枠(10名前後)を設けて実施する。社会人を主な対象として生徒を募集し、面接を主体とした選考で、入学者を決定する。情報工学分野はPC上だけで学習できる要素が多く、また社会人にIT技術を学びたいニーズが高いといった点から、まず情報工学専攻で社会人を対象としたコースから開設する運びとなった。
 ここで注目したいのは、通信制ではなく通学制をとっている点だ。同校の師玉康成教授は、通学制の理由として「通信制で広く学生を集めるのではなく、インターネットでマンツーマン教育を実施するという姿勢で行なっていくため、通学制とした。教育の質を維持するため、現在の教官数で対応できる人数の学生を対象とする。ビデオ教材を見ていれば単位が取得できるという安易なものではなく、レポートやテスト、実習などもオンラインを通じて行なっていく」と述べている。また通学制のため、都合がつけば授業に出席もできる。

CAIテストのデモ。学生ごとに異なる設問が可能 オンラインでのマンツーマン指導のデモ 海外大学の講義などのオンデマンド配信にも対応する

 授業はHTML化した教材を利用するものや、オンデマンドでの講義の動画配信、レポートのオンライン提出・添削、NetMeetingなどのテレビ会議システムを利用したマンツーマン指導など、多彩な形式で提供していく。ユニークなのは「CAIテスト」と呼ばれるオンラインでの小テストだ。授業内容が理解できているかを確認するためのテストだが、生徒1人1人に違った問題を出題し、それをオンラインで回答、採点する形となる。例えばプログラミングの授業などでこのテストを活用することで、高い学習効果が得られる形だ。ランダムな出題から採点までをコンピュータで処理できる点は、バーチャル大学院ならではの利点といえるだろう。一部実習が必要な授業、たとえば基盤とハンダを使う実習などは、生徒に基盤を郵送するなどの方法での対処も考えているという。また他大学の教官の参加も予定している。生徒・教官ともに遠隔からの参加となるため、オンラインでの履修登録や成績評価などのシステムも確立する予定だ。

 「バーチャル大学院」の募集要項は、5月ごろに信州大工学部のWebサイトで掲載される予定で、入試は8月下旬を予定している。

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(2001/4/5)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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