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【イベントレポート】

MMAC推進協議会、次世代の移動体アクセスシステムの展示会

■URL
http://www.arib.or.jp/mmac/index.htm

 マルチメディア移動アクセス(MMAC)推進協議会が、神奈川県横須賀市の横須賀リサーチパークにおいて、研究・開発の成果を一般に公開する展示会を開催している。

 MMAC推進協議会は、IMT-2000に続く次世代の高速な移動体アクセスシステムの研究・開発と標準規格の検討を目的として1996年に発足した団体で、現在138の企業や団体が会員として参加している。5.2GHz帯を利用した高速無線アクセスシステム「HiSWANa(High Speed Wireless Access Network type a)」や、IEEE1394を無線化した「ワイヤレス1394システム」がすでに標準仕様として制定されており、今回の展示会ではこれらの仕様に基づいた試作品を展示。実際に稼働している様子が見学できるようになっている。

 HiSWANaを実用化へ向けていち早く採用しようとしているのが、NTTの開発したAWA(Advanced Wireless Access)である。最大36Mbpsの無線アクセスを実現するとともに、同一の子機でそのまま複数基地局エリアで利用できるのが特徴だ。すでに東京都渋谷区で「Biportable」というサービスとしてフィールド実験が開始されている。

 しかし、この5.2GHz帯の無線アクセスは、気象レーダーと干渉するということで国内では屋外での使用が規制されている。そのため、複数基地局のエリアでシームレスに利用できるというメリットが薄れてしまうのが現状だ。そこで、他の無線アクセス方式とHiSWANaを併用してこの欠点を補おうというシステムが今回、展示された。

PHSとの併用システムはKDDIグループでも展示していた(写真)。ただし、こちらのシステムは上りがPHS、下りがHiSWANaと固定されている。3台並んでいる巨大な箱が現段階のHiSWANa子機だ

 東芝が出展しているのは、HiSWANaとPHSを組み合わせた「ハイブリッドシステム」。HiSWANaの基地局があるエリアでは上りの通信をPHS経由で、下りをHiSWANa経由で行なう一方、HiSWANaの圏外では上下ともPHSで行なうというものだ。これにより、屋外などで使用する時はPHSの64kbpsで我慢し、HiSWANaのある建物内に入った時にはHiSWANaの高速ダウンロード環境で利用できるわけだ。切替もユーザーが特に意識する必要はなく、アプリケーションを起動したままシームレスに通信できるという。確かに、2つのアクセス方式が混在するということでシステムが複雑になってしまうデメリットはある。上下ともHiSWANaでできるに越したことはないだろう。しかし、新たにHiSWANaの基地局をエリア的にくまなく設置するのは、サービスを提供するキャリアにとって大変なコストとなる。かといって基地局が少なくては、ユーザーにとっては利便性が少ない。そこで、人の集まるなスポットから基地局を開設し、その他屋外のエリアはとりあえず既存のPHSなどの基地局でカバーできるというのがハイブリッドシステムの強みとなる。

 なお、今回の展示では、ハイブリッドで併用する方式としてPHSを採用していたが、これについては特に限定されているわけではなく、IMT-2000などを組み合わせることも可能だ。また、展示で使用されていた機器は、市販されているPHS端末と、モバイル利用には到底不可能な巨大なHiSWANaの子機だったが、将来的にはすべて内蔵した小型PDA端末などの開発を想定しているという。最大36Mbpsということを考えれば、HiSWANaが実用化されるのは、IMT-2000では力不足となるもう数年先の段階になりそうだ。

 会場ではこのほか、HiSWANaと同様に5.2GHz帯を利用して最大36Mbpsの通信が可能な無線LANシステムや、さらに38GHz帯を利用して156Mbpsの通信が可能な超高速無線LANシステムなどが紹介されている。協議会の名称には“移動”という名称が冠されてはいるが、展示内容を見る限り、一般的に“モバイル”という言葉からイメージされる方向とは少し異なるようだ。むしろ無線LANや加入者系無線アクセス(FWA)に近いものであり、同協議会の提唱するシステムは、それらに移動性能を付加していくものと言える。展示会は18日まで開催、見学は無料となっている。

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(2001/5/16)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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