INTERNET Watch Title
Click

【通信事業】

やはりFTTHが来るまでには時間がかかるのか <後編>
早期引き込みのカギは、ユーザー自身の“営業力”?

■URL
http://www.usen.co.jp/

種別判定比率必要期間
一戸建住宅A21%約2週間
B3%1~2カ月
C3%1~2カ月
D1.5%3~6カ月
E1.5%3~6カ月
集合住宅A49%1~6カ月
B7%2~6カ月
C7%2~6カ月
D3.5%3~6カ月
E3.5%3~6カ月

 有線ブロードネットワークスが5月末日現在におけるサービスの提供状況を明らかにしたが、回線が開通したのは507件に止まっている。その理由の一つとして、先週の記事では、光ファイバーの支線敷設に要する時間を挙げた。
 しかし、同社がまとめた資料によると、契約者3,079件のうち“判定”がすでに出されているのは2,974件で、その内訳は右の表のようになっている。上記の理由に該当するB~Eの判定だった契約者は、合計で30%に過ぎない。

 実はそれ以上に開通のネックとなっているのが“集合住宅問題”だ。
 資料からもわかるように、集合住宅では「即時取付可能」にあたるAの判定にもかかわらず、開通までに1カ月から半年もかかってしまう。集合住宅では、契約者が現われてから、実際に光ファイバーを建物に引き込む前に、賃貸物件ならオーナーや管理会社の、分譲物件なら管理組合の承諾をとる必要がある。これに時間がかかってしまうのだという。

 集合住宅の入居者にサービスを提供する場合、基本的には、まず電柱から建物まで1カ所で回線を引き込み、配電盤スペースなどに設置したハブで分岐。そこから先は既存の配管を利用して各契約者世帯まで接続する仕組みとなる(既存の配管が利用できない場合は、新たに配管を敷設するなどの工事が必要になるが、これも同社で対応する。この辺りの技術的な面については、これまでの有線放送事業を通じて、集合住宅への導入ノウハウを持っているという)。
 このため、建物までの回線引き込みとハブの設置に関して、オーナーや管理組合の承諾を得る必要が出てくるのだ(よほど他の世帯からの加入が見込めない場合を除き、契約者世帯のベランダなどに直接個別に引き込むスタイルはとらないという)。

 同社によると、承諾を得るまでにかかる時間は、賃貸物件で概ね1~2カ月、分譲物件で1~6カ月程度と見ている。ただし、入居者全員にアンケートを実施するオーナーもいるなど、さらに時間がかかってしまう賃貸物件もあるようだ。また、分譲物件で管理組合の総会での決議が必要となれば、その機会が年に1回しかないということも考えられる。いずれにせよ、一戸建が2週間で済むのに対してえらい違いだ。
 同社では、判定がAだった契約者のうち、5月末時点で工事が完了した件数についてエリアごとに比率を算出しているが、集合住宅以外の物件においては約80%以上、中には100%に達しているエリアもあった。これに対して集合住宅では、もっとも高いエリアで約55%、その他のエリアでは35%程度に止まっており、“集合住宅問題”が開通数の伸びを押し止めていることを物語っている。

 なお、回線の引き込みやハブの設置コストは、契約者が負担することになるため、オーナーや管理組合の負担はない。また、オーナーや入居者自身が、これからは光サービスが重要になるということを理解しているとしており、今までに回答を受けた物件のうち、承諾を拒否されたところはないとしている。

 このように、“集合住宅問題”は、あくまでも承諾待ちに時間がかかってしまうということであり、同社では「工事自体が遅れているわけではない」と強調する。その前の段階で、足踏みせざるを得ない状況になっているというわけだ。
 しかし、これは裏を返せば、“ラストワンマイル”については、同社のサービス展開力をもってしても、それが及ばない領域があるということになる。

 となると、その領域を補えるのは、ユーザー自身なのかもしれない。承諾を求めるにあたっては、必要であれば有線ブロードのスタッフが技術説明などに出向くこともあるというが、まず最初にオーナーや管理組合に話を持っていくのは契約者自身である。承諾を得るには、賃貸物件の入居者なら、「とにかく一生懸命大家さんを説得してもらうしかない」。また、分譲物件においては、他の入居者に光ファイバーのありがたみを布教し、有志を集めて管理組合に対して臨時の決議を求めるなどの働きかけも必要になるかもしれない。
 先に挙げた表からもわかるように、現在のサービスエリアでは集合住宅が70%にも及ぶ。“集合住宅問題”を解決するには、ユーザー自身の“営業力”も問われることになりそうだ。

 というオチで記事を締める予定だったが、どうやら、有線ブロードもだまって“承諾待ち”の状況に甘んじているつもりはないようだ。集合住宅の承諾獲得を、契約者獲得に先んじて行なうという方針に切り替えたとしている。
 つまり、これまでは契約者が現われた後にその集合住宅への回線引き込み承諾を求めていたが、今後は契約者がまだいない集合住宅についても、前もって承諾を求めておくというものだ。全国で3,000人にも及ぶという同社の営業力を生かし、光ファイバー敷設予定の地域では、周辺の集合住宅にアプローチをかけていくという。これにより、集合住宅であっても、「契約から開通工事まで待たされるストレスを解消したい」としている。

 6月5日付の発表によると、現在サービスを提供中もしくは開始予定とアナウンスされている東京都内の5区(渋谷区、世田谷区、目黒区、大田区、杉並区)以外の23区および都下への展開を前倒しすることも検討中だとしている。実際、同社のFTTHサービス「BROAD-GATE 01」のウェブサイトでエリアを検索すると、当初は10月スタートとアナウンスされていた武蔵野市や狛江市、北区、墨田区などが、微妙な表現ながらも「近々サービス開始を予定しているエリア」として表示される。
 今後エリアを拡大する一方で、集合住宅への“フライング承諾”に取り組むことで、契約者数だけでなく、実際の開通件数をどれだけ伸ばせるかに注目しよう。

◎関連記事
やはりFTTHが来るまでには時間がかかるのか <前編>

(2001/6/14)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


INTERNET Watchホームページ

ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp