【業界動向】

インターネット音楽配信の“自由度”があがるか~JASRACの約款改正が承認

■URL
http://www.jasrac.or.jp/

 6月20日、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の通常総会において「著作権信託契約約款」の改正が承認された。今回の信託契約約款の改正は、「委託者が委託の範囲を選択できるようにする」という点を含んでおり、音楽著作物を所有するアーティスト側、また、音楽著作権ビジネス関連業界に大きな影響を与えるものとなる。

 著作権信託契約約款とは、音楽著作権所有者が著作権使用料の徴収と分配業務の委託についてJASRACとの間で交わす契約を定めたものだ。簡単にいうと「アーティスト側が印税等を受け取るための条件」ともいえる。従来、JASRACに著作権を管理委託する場合“すべての”権利を委託する必要があった。つまり、CD販売に関する著作権使用料の徴収はJASRACへ、インターネット音楽配信に関する使用料の徴収は他の団体へという選択の自由がなかった。この点について音楽家の坂本龍一氏は以前から「JASRACとは、町に一軒しかないレストランのよう。しかもそのレストランにはアラカルテはなくて、コースメニューひとつしかない」と批判している。今回の改正では、あらかじめ定められた区分において委託の範囲を選択できるようになる。具体的には、「演奏権」「録音権」「貸与権」「出版権」等のそれぞれの権利において委託先を選択できるほか、「映画への録音」「ゲームソフトへの録音」「インタラクティブ配信」など利用形態においても選択が可能になる。

 特に注目は、利用形態において「インタラクティブ配信」が含まれている点。これは、例えばインターネット音楽配信の場合のみ著作権管理委託をJASRAC意外の団体に任せるといったことが可能になることを意味する。従来(この60数年間)、音楽著作権管理業務においては実質的にJASRACの独占体制であったため、委託先の選択の自由が認められたところで絵空事にすぎなかった。しかし、音楽著作権管理業務への参入規制緩和や、それを受け2001年3月から業務を開始した民間の著作権管理団体、株式会社イーライセンスが存在している以上、俄然現実的な話となっている。今後の問題は、それらの新規参入者が実際の煩雑な著作権管理業務を遂行していけるかという点になりそうだ。

 その他の改正点としては、信託契約期間が一律5年となり、5年ごとに前記の管理委託範囲を変更できるようになるという。また、「委託者が自分の作品の利用開発を図る目的で対価を得ないで使用する場合には、事前に承諾を得ることによって使用料を支払うことなく使用できる」点も定められた。平たくいうと「ミュージシャンが自分の曲を無料でWebサイトで公開する」といったことをする場合でも、ミュージシャンが自分の楽曲を「使った」ことに対する使用料をJASRACに支払わなくてもよいということだ。

 なお、新たな著作権信託契約約款は、著作権管理事業法が施行される10月1日以降に、使用料規程、分配規程などとともに文化庁長官に届け出される。約款の正式な施行は、著作権管理事業法がJASRACに適用される2002年4月1日からとなる。

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(2001/6/20)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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