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【実証実験】

ITSの基盤へと発展する“インターネット自動車”
SFC、トヨタなどの共同研究グループが実証実験

■URL
http://www.InternetITS.org/

(前列手前から順に)経済産業省の堀口光ITS推進室長、村井教授、トヨタ自動車の吉田博昭取締役、デンソーの加藤光治取締役、NECの藤江一正執行役員常務

 慶應義塾大学SFC研究所、トヨタ自動車、デンソー、NECからなる「インターネットITS共同研究グループ」は18日、1,700台以上の“インターネット自動車”を用いたITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の実証実験を2002年1月から3月まで実施すると発表した。

 SFC研究所所長の村井純・慶應義塾大学教授がかねてより提唱しているインターネット自動車については、すでに今年2月に「プローブ情報システム(IPCarシステム)」として神奈川県横浜市で300台規模の実証実験が行なわれている。速度計やワイパーのなどで各車両が感知したデータをインターネット経由で集約し、渋滞情報や天候情報などに加工して配信するなどのシステムが公開された。いわば、移動するセンサーとして自動車を利用しようという試みだった。

 これに対して今回のプロジェクトはさらに枠組みを拡大し、ITSのための基盤としてンターネット自動車を活用しようとするものになる。ネットワークのIPv6化が進められるほか、より高度な機能を備えた“ブロードバンド”対応の車両も開発。その実験内容はナビゲーションやコンテンツ配信、音声ポータル、決済システムなどの分野にまで及ぶ。プロジェクトの総予算は20億円規模に達し、そのうち10億円は経済産業省の補正予算からまかなわれる。

 実験エリアは名古屋と首都圏の2カ所。名古屋ではタクシーなど1,700台を利用し、IPCarシステムの検証や乗客向けのコンテンツ配信などが行なわれる。一方、首都圏の実験は一般のドライバー向けを想定したもので70台の車両を利用。走行中の各種情報提供や駐車場の電子決済などが提供される予定だ。

 車両の通信手段には携帯電話のパケット通信を採用するほか、ガソリンスタンドや駐車場、タクシーの事業所内ではDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域無線通信)も利用する。ただし、通信インフラは限定しないとしており、PHSや2.4GHz帯の無線LAN、IMT-2000などについても可能であれば取り入れていくという。

 さらに、今回はブロードバンドに対応した高機能実験車も1台開発する。この車両では、通信インフラとして衛星通信を利用。自動追尾型のアンテナが搭載される。また、シートに設置されたセンサーで乗っている人のふるまいを感知し、安全運転の支援や健康管理などを行なう機能も提供されるという。

 共同研究グループの代表も務める村井教授は、すでにVICSなどのITSサービスが実用化されている中で新たにインターネットによるITSのプロジェクトに取り組むことについて、「(VICS用に道路上に設置されているビーコンなど)既存のデバイスをすべての道路に設置するのは難しい」と指摘。それを補うという意味でも、「インターネットとITSの結びつきが期待されている」と強調した。また、IPv6を用いることで「クルマ1台1台がグローバルなインターネットに接続する」という強みがあるため、大きなビジネスが生まれる可能性もあるとしている。

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(2001/10/18)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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