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【イベント】

まだ終わってないのに「インパク」を総括
参加者らがディスカッション

■URL
http://www.inpaku2001.org/
http://www.inpaku.go.jp/

(向かって左から)浜野氏、藤永氏、石田氏、野内氏、糸井氏、荒俣氏、藤岡氏

 「インターネット博覧会(インパク)」の会期もあと1ヵ月を残すだけとなった11月30日、パビリオンサイトの設営者らが集まり、東京都内で「インパクミーティング2001」と「インパクパーティ2001」が開催された。インパク編集長を務める糸井重里氏と荒俣宏氏が発起人となって開かれた交流イベントで、約350人が参加。会場となった旧・新宿区立淀橋第三小学校の教室や校庭には、屋台やパビリオン設営者による模擬店などが所狭しと設置され、体育館では一足先にインパクを総括するディスカッションが行なわれた。

 インパクミーティング2001のパネルディスカッションでは、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授の浜野保樹氏が司会を務め、糸井/荒俣の両氏、インパクを推進する総務省新千年紀記念行事推進室の藤岡文七氏のほか、パビリオンサイトを設営している企業/自治体/個人を代表して、「安田火災・エコクラシー」を運営する安田火災海上保険IT企画室副長の藤永章氏、「インパク大阪府パビリオン『民族芸能』」を担当する大阪府生活文化部文化課主査の石田暁氏、自由参加パビリオン「なじらね新潟下町おもっしぇところ」を運営する野内隆裕氏がパネラーとして登場した。

 国内のネット利用普及を後押しすべく企画されたインパクだが、藤岡氏自身、「国がやること自体が大きな制約だった」と認める。浜野氏によると、新しいメディアが普及するためには「新しい、危ない、怪しいという“3Aの法則”」があるが、これらの要素は、国の進める事業ということでインパクでは規制されてしまったわけである。荒俣氏らとともにインパク推進のために協力を要請された他のメンバーは、「最初は非常に期待していた」が、「iモードが使えないようではダメ」「ピンク系がないとネットではない」と言って次々と去っていったという。また、パビリオンで商売をしてはいけないという制約もあり、商品名を出せないということが「企業が参加するにあたってハードルだった」(藤永氏)。

 一方、こういった制約と当初抱いていた理想との狭間で苦労したのが、インパク編集長を務めた糸井/荒俣の両氏である。糸井氏は、「抑制されていた(人々の)どうでもいいことに夢中になるエネルギーが(インパクによって)どれだけ解き放たれるのか」期待していたとしており、「ヘタなアーティストの博覧会」のような「もっとふざけたものを予想していた」という。ところが結果は、教科書的な「おとなしい」内容となっており、「こんなんじゃダメだよな」というのが正直な感想のようだ。とはいえ、「ダメだ」で終わるのではなく、「その向こうに見えてくるものが大事」だとしている。

 では、その向こうに見えてくるものとは何なのか? 荒俣氏は、「今のネットはマニアがやっている。一般の人々が今のうちに参入しないと、あらぬ方向に進んでしまう」と指摘。かなり改善されてきたとはいえ、まだまだ一般の人々にとってネットは使いにくいものであり、「使いにくいと声を上げることが大事」だという。インパクは、そのための「いわば生体実験」だったわけだ。この生体実験をともに体験したことで芽生えた参加者の連帯感が、「日本のインターネット社会の第一歩となる」。

 あと1カ月でインパクも終了する。「目的は十分に達成できたと思う」と振り返る藤岡氏だが、計画当初は「始まってもいないのに面白くない」「ネットに国がしゃしゃり出てくるとは何事か」といった批判を受けた。「今でこそ評価できるが、スタートするときはここまでできるとは思わなかった」という。今後は、インパクで培われた資産やノウハウを「残すのではなくて、大きくすることが大事」と強調する。もし「第2インパク」というものがあるとすれば、今回のインパクで生まれた「この動きをどう扱うか、世の中のネットの動きをどう伝えるのか」ということをテーマにする必要があるとしている。

 なお、「第2インパク」という言葉も飛び出したが、もし来年以降も何か国による事業を継続しようというのなら、「インパク」という名称はもう止めにしたほうがいいようだ。荒俣氏によると、19世紀に始まった「博覧会」というものは「工業製品を売るための仕組み」であり、「もう要らない」と指摘する。実際、糸井氏も「博覧会をイメージしていた」ことがインパクで行き詰まる原因だったと分析している。

会場となった旧・新宿区立淀橋第三小学校の様子。(左)入口を見てお見合系のイベントと勘違いしていた通行人もおり(実話)、まだまだ「インパク」が何なのか知らない人もいることがうかがえた。(中)パーティ会場となった校庭。再開発が進み、真新しい高層ビルに囲まれている。(右)パネルディスカッションが行なわれた体育館の内部
校舎内の展示。糸井/荒俣両氏の発案により決められた「文化祭」というコンセプトに基づき、校舎が会場に選ばれたという。(左)35のパビリオン設営者によって展示ブースが設けられている。とはいっても、ご覧の通りノリはまさに学校の文化祭というほのぼのとしたもの。(中)(右)廊下にも、イベントを主催したインパク協会や新千年紀記念行事推進室のパネル展示が

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(2001/11/30)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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