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■URL
http://www.eaccess.net/jp/support/ui020204.html
先日イー・アクセスからも発表があった通り、同社が提供している8Mbps対応ADSL接続サービスにおいて、「頻繁な回線断・再接続を繰り返す問題」が発生している。これは、ADSLモデムが切断→トレーニング状態→接続という状態を繰り返し、モデムが「カチカチ」となり続ける状態だ。この問題は2001年の11月頃から一部掲示板等で指摘されていた事だが、今年に入ってこの問題が拡大してきた感があった。そこで、INTERNET
Watchでは、イー・アクセスに先日の発表の詳細と、今後の対策等について話しを聞いてきた。
今回、「頻繁な回線断・再接続を繰り返す問題」について話を伺ったのは、イー・アクセス株式会社の技術企画部アシスタントマネージャー渡辺 芳治氏と社長室広報担当の八木 直子氏だ。
技術企画部アシスタントマネージャー渡辺 芳治氏 |
INTERNET Watch編集部(以下、IW):最初に、現在イー・アクセスでは、大体何人位のユーザーがいるのでしょうか?
渡辺 芳治氏(以下、渡辺):正確な数字は分からないですが、約20万人弱だと思います。
IW:このうち8Mbps対応を使っているユーザーの割合は?
渡辺:現時点だと50%弱だと思いますが、2月中には1.5Mのユーザーを逆転すると思います。
IW:イー・アクセスの場合、NTT局舎内のADSL用設備はどのようになっているのでしょうか?
渡辺:NTT局舎内には、ラックなどを設置するスペースがあり、各事業者毎にラックなどの設置を行なっています。イー・アクセスの場合、DSLAM(集合型DSLモデム装置)1つで500回線程度収容できるので、その下に20~40回線収容できるモジュールを設置しています。このモジュールにユーザーが接続するポートがあり、ユーザー数が増えた場合は、このモジュールを増設していくことで対応可能となっています。イー・アクセスの場合、効率的にスペースを利用するために、「見越し追加」は行なっていません。「ポートが埋まったら追加する」という方法を取っています。モジュールは、イメージ的にはルーターのような外見となっていると考えてください。基本的にMDFからきたユーザーの回線は、このポートと1対1の関係で接続されています。しかし、機器的にこのポートの調子が悪い場合がありまして(詳しくは後述)、その場合は、ポートを正常なものへ変更することで改善される場合があります。
IW:現在、イー・アクセスで確認しているADSL回線の不具合を分類すると、どのようなものがあるのでしょうか?
渡辺:大きく分類すると、「AMラジオの電波ノイズによるもの」、「家庭内配線等によるもの」、「局舎内設備によるもの」の3つになっていると把握しています。
IW:では、まず「AMラジオの電波ノイズによるもの」の原因と現状はどうなっているのでしょうか?
渡辺:イー・アクセスでまず確認した原因は、昨年の11月頃から発生している「AMラジオの電波ノイズによるもの」です。これは、スプリッターでADSL用と電話用に分けられた回線の内、電話側のケーブルがアンテナの役割をしてAMラジオの電波ノイズがADSL回線に影響を与えるものです。イー・アクセスが8M対応ADSLで採用しているG.dmtでは、下り回線で148~1104kHzの帯域を使用しています。これはAMラジオが使用している周波数帯と半分近く重なるものなので、このような現象が起きていると考えられています。
この現象は昨年の11月頃より確認できていていましたが、その頃はAMラジオが原因によるものと思われるケースはまだ少なかったため、ユーザーにはISPを経由した個別対応をお願いしていました。しかし、その後8Mユーザーが増えていくにつれてこの現象も増加していったので、まずモデムのファームウェアでのバージョンアップを行なうこととなりました。これは、昨年中に配布を開始していまして、現在ではこのノイズに対して耐性が高いものとなっています。また、完全にこの現象を無くす為にハードウェア的にも、電話側のケーブルからのこの帯域のノイズをカットするフィルターを内蔵したスプリッターを開発し、1月21日発送分から提供しています。
このソフトウェア面とハードウェア面からの対策を行なうことによって、「AMラジオの電波ノイズによるもの」が原因となっている不具合に関しては大部分が解決できているはずです。
IW:先日発表された資料の中には、この問題の対策として「個別回線の最適化(チューニング)」というものが記されていますが、これは具体的にどのような事を行なうものなのでしょうか?
渡辺:この対策は、「AMラジオの電波ノイズによるもの」が原因のものによらず、ADSLの性質上(特にG.dmtの場合は)基本的に必要なものと考えています。
ADSLのフルレート規格であるG.dmtを利用した8Mbps対応ADSL回線の場合、ハーフレートの1.5Mと比較して、格段にノイズ抵抗が低くなっています。これは、アナログ回線を利用したG.dmtが速度を出すためにノイズマージンを極限まで削っているためです。従って回線によっては、ノイズマージンの許容量以上のノイズが入った場合、断線してしまう場合があります。このようなノイズが強い回線の場合は、ノイズマージンを増やしノイズに対して抵抗を高める必要があるのですが、ノイズマージンを増やすと反比例の関係で回線速度が落ちてしまいます。そのため、安定したサービス(回線)を提供するか、速度を優先するかのジレンマに陥ってしまう、というのが実情となっています。
勿論、イー・アクセス側でチューニングを行なわなくても全く問題のないユーザーもいます。しかし、数時間に一回やそれ以上の頻度で断線と接続を繰り返している場合は、チューニングを施して安定した回線を提供するべきだというのが社の方針となっています。
IW:では、今までに加入した全てのユーザーに対してチューニングを行なってきたのでしょうか?
渡辺:今までは、イー・アクセス側で随時ユーザー毎の回線を監視していて、頻繁に断線と接続を繰り返す場合に対応していました。または、ユーザー側からの要望によって行なう場合もあります。しかし、ここで難しいのはユーザーによっては、「頻繁に断線してもよいからできるだけ高速の回線を使用したい為にチューニングを行なわないで欲しい」というユーザーもいる事です。このようなユーザーに対しては、できる限り個別に対応することで、ユーザーが納得するサービスを提供していきたいと考えています。
IW:これまでの対応を聞いていると、受動的な対応が多いように感じますが。
渡辺:確かに、今まではユーザーからの苦情に対して受動的に対応する場合が多かったと思っています。それは、今まで8Mのサービスを受けているユーザーが少なかったからできたことだと思っており、これからも継続的に増えていくユーザーを考えていると、今後も受動的に対応していくことは難しいと思います。従って、今後開通するユーザーには「モデム到着後48時間の間モデムの電源を入れておいてもらい、その間にイー・アクセス側がチューニングを行なう」という能動的な方法を行なっていくという方針を出しました。
IW:モデム到着後というのは、NTTの局舎側工事が終わって開通後48時間ということでいいのでしょうか?また、その作業はどのような基準と方法でチューニングを行なうのでしょうか?
渡辺:モデム到着後というのは、正確に言うと「ADSL開通後」という事なのですが、残念なことにADSL工事日はNTTから連絡がありますが、工事される時間までは分からないのが現状です。従って、NTTの工事日(おおよそモデム到着日と同じ)から48時間はモデムの電源を入れておいて欲しいということなのです。モデムがモジュラーに接続されており、尚且つ電源が入っていれば、イー・アクセス側で回線状況を確認することが可能です。従って、その48時間の回線状況を見極めて、最適な帯域にチューニングを行なうことが目的となっています。その「最適な帯域」の基準は、今までイー・アクセスが蓄積したデータから、近似値を導いてきて行なうことになります。これは現在手動で行なっているのですが、近いうちに自動化したいと考えています。これによって、多くのユーザーがサービス開始から安定したサービスを受けることができるようになるでしょう。
IW:次に「家庭内配線等によるもの」によるものはどういう問題なのでしょうか?
渡辺:これは、非常に難しく一番曖昧な問題です。回線不具合の報告をユーザーから受けた場合、多くはまずこの問題を考えます。ユーザーから来る報告の内、大抵の場合は、宅内配線など宅内の環境改善だけで解決する場合があるからです。例えば、戸建ての場合、まずNTTの回線から宅内に入る前に接続してみて、接続できる場合は、完全に宅内の問題と絞り込むことが可能です。宅内が問題の場合は、宅内の電話線の老朽化やノイズ原因の一つである電源と並列で配線されているなど、物理的に工事が必要な場合もあります。このような問題になると、イー・アクセスだけで対応することが難しく、NTTや配線工事業者に電話線の配線そのものを変更したり工事を行なう必要があるでしょう。また、集合住宅の場合もほぼ同様で、マンション等の配線盤から直接繋いで繋がる場合は、宅内配線環境の問題が考えられます。また、集合住宅の場合には、隣接する家庭でISDNを導入しているケースも考えられ、そのような場合には更に対応が難しくなってきます。
IW:では、宅内のモジュラージャックまでの配線に問題がある時には各自で対応しなければならないのでしょうか?
渡辺:イー・アクセス側で、「これは、おそらく宅内のモジュラージャックまでの配線に問題がある」や「距離等の問題でここでは開通は難しい」などの判別までは可能ですが、その後の配線工事や集合住宅内の配線の改善などは、原則ユーザーが各自で行なってもらう事になります。
IW:では、宅内のモジュラージャックまでの配線までに問題がない場合は、モジュラーからPCまでの配線の問題と考えられますが、その場合どういうものがADSL回線に影響を与えやすいのでしょうか?
渡辺:先にも言いましたが、G.dmt方式のADSL回線はノイズに弱い性質を持っています。このノイズの発生源は、無数に考えられるのですがやはり多くは電源系と考えてよいでしょう。理想的には、ノイズの影響を受けやすいモジュラーケーブル(モジュラージャックからモデムまでを繋ぐケーブル)をできるだけ短くすることや、モデムの電源を他の電化製品と同じにしないこと、モデムの周りに電化製品を置かないこと、などによってかなり改善されるはずです。特に電源を、他のものと同じところを使わないのは有効だと思います。蛸足を使わなければならない場合でも、タップを使って別にするだけでも有効です。また、テレビや冷蔵庫のノイズを多く発生する電化製品から遠ざけることも必要でしょう。
IW:「局舎内設備によるもの」が原因のものは、先日の発表で始めて明らかになったと思うのですが、最近起こり始めた現象なのでしょうか?
渡辺:これは、2001年の暮れころから判明した問題です。具体的には、NTT局舎内のDSLAM(イー・アクセス側のモデム)のソフトウェアの問題と判明しました。この現象は、かなり限られたユーザーが対象となっていますが、現在も増えているので、今回根本的解決策に向けての方針を示すこととなりました。
IW:この現象が起きると、具体的にどうなるのでしょうか?また、それに対しての対応は?
渡辺:この現象が局舎側のDSLAMで起きた場合、該当ユーザーは全くリンクできなくなります。具体的には、ユーザーのADSLモデムがトレーニング状態が続き、カチカチと鳴り続けて全く接続できなくなってしまう点が特徴です。他の原因の場合は、切断→トレーニング状態→接続を繰り返すので、全く接続できないこの問題とは明らかに起こる現象が違います。また、この現象は、イー・アクセスがDSLAMをリセットすることでしか解決しないので、現在この現象に対する監視を自動で行なっており、現象を発見したら即座にリセットするようにしています。
IW:それでは、根本的解決にはならないと思いますが。
渡辺:おっしゃる通りです。従ってイー・アクセスでは、DSLAMの機器を提供している住友電気工業株式会社と共同で、1月末頃から根本的解決の為のソフトウェアを開発を始めました。この修正ソフトウェアは、2月中に完成し、導入されるはずです。
IW:先日発表された資料にはありませんでしたが、ポートを変更することによって解決する不具合があるようですが。
渡辺:珍しい現象ですが、確かにそのようなケースもあります。これは、ユーザーのポートを収納しているモジュールの機器的不良の問題によるもので、そのユーザーが使用しているポートが不良を起こしている可能性があります。その場合は、他のモジュールやポートに移動することによって、解決が可能です。ポートの移動は、リモートで行なえるので、それが原因だと判明した場合には即座に対応が可能となっています。
IW:上記に挙げた以外の原因は考えられないのでしょうか。
渡辺:繰り返しになりますが、ADSL、特にフルレートのG.dmt方式は、ノイズ耐性が低いです。従いまして、チューニング等を行なった後でも、新幹線や大型トラックが近くを通過しただけでも断線する可能性があります。また、未知の不具合の要素もあるかもしれないです。このような理由から、完全に毎回の断線の原因を特定することは難しいのですが、今回のように比較的多くのユーザーに共通する不具合に関しては、どんどん情報を提供していくつもりです。ユーザーは、「自分の回線がなぜ不安定なのか?」という情報を望んでいると思います。そのような、ユーザーが真に求める情報を提供していこうとイー・アクセスでは考えています。
IW:では、「ADSLというものは、ノイズによって断線するかもしれないという可能性」をユーザーにもっと知ってもらうべきではないでしょうか。
渡辺:その通りだと思います。これからますます増えていくユーザーは、「ADSLは常時接続だから、絶対に切断されない」と考えている可能性があります。これらのユーザーには、「ADSLはその性質上、完全に切断がない状態にするのが難しい」という事を知ってから加入してもらうのが理想だろうと思います。少なくともイー・アクセスでは、ユーザーに対してそのような情報の提供が必要だと考えており、その為の情報を提供していこうと思っています。
IW:最後にイー・アクセスの今後のサービス展開はどのようなものを考えているのでしょうか?
渡辺:上記で述べたような「ユーザーに対する情報の提供」以外に、ADSLでは回線の長さによる影響も重要となってきます。回線長の長さによる影響を、ユーザーサイドからより深く分かってもらう為に、直近のうちに地図上から自宅からNTT局舎までの線路長を調べることができるサービスを提供開始する予定です。これらの情報によって、「ユーザーがADSLに加入する前から」ADSL自体の性質を知ってもらう事によって「ユーザーがよりよく満足できるサービス」を提供できると考えています。今後は、地方でもサービスの提供を開始していきます。その時にも、「距離」の問題は重要になってくるでしょう。
IW:遠距離のユーザーに対して「Reach DSL」規格の導入を検討・実施している事業者もありますが。
渡辺:イー・アクセスでは、現時点で「Reach DSL」の導入は考えていません。「Reach DSL」は現在の規格に及ぼす影響がまだ分からない、というのが理由です。「Reach DSL」を導入することによって、現行のサービスに悪影響がでる可能性があるからです。イー・アクセスでは、長距離のユーザーに対しても提供できるサービスの研究などを、今後も継続的に行なっていくつもりです。しかし、NTTの回線の状況(回線の太さ)によっては、局舎から7Km離れたところでも開通した例があります。このような例もあるので、NTTの情報と比較しながらサービス展開を今後も行なっていきたいと考えています。
●まとめ
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(2002/2/9)
[Reported by otsu-j@impress.co.jp]