【業界動向】

日本MMO、「MP3交換停止」仮処分要求に反論

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 有限会社日本エム・エム・オー(日本MMO)は12日、社団法人日本レコード協会(RIAJ)と社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が申請していた、ファイル交換サービス「ファイルローグ」上で、音楽CDから作成されたMP3ファイルの交換停止を求める仮処分に対する答弁書を東京地方裁判所に提出した。答弁では、日本MMOは著作権違反を行なっておらす、利用者に示唆もしていない上、違法ファイルを削除することは技術的に不可能だとしている。

 答弁書によると、「ファイルローグ」を利用するユーザーは「債務者(編集部注:日本MMOのこと)との間で、本システムを利用して他人の権利を侵害しないこと、自らの権利を侵害されたと主張する者が現れた場合はノーチス・アンド・テイクダウン手続きに服すること等を約束している」という。このノーチス・アンド・テイクダウン手続きとは、著作権者が自分の著作物を違法に利用されていると申し立てた場合に、送信者の言い分を確認した上で、送信者に違法性があると判断されれば、当該ファイルの削除や、サービスの利用停止などが行なわれるものだ。日本MMOでは、RIAJなどは、この手続きを使ったことがないと言及している。

 また、RIAJなどによる「ユーザーがIDを取得する場合に本人確認を行なっていない」という指摘に対しては、「特定の会員向けにオンライン上で無償サービスを提供するシステムでは、(中略)、戸籍上の名称や住民票上の住所を入力させないというのは、一般的」と反論している。例え、ユーザーが架空のメールアドレスを登録していたとしても、ノーチス・アンド・テイクダウン手続きによってシステム利用が禁止されるので問題はないという。

 MP3ファイルについては、RIAJが裁判所に提出した資料を元に「拡張子が『MP3』となっている割合は全体の約15%にすぎない」とし、違法ファイルはさらに少ないと反論する。また、「MP3形式の電子ファイルが、アマチュアバンドの楽曲発表のために使用されたり、会話を録音・配布するために用いられる例も多々ある」と分析する。さらに日本MMOは、「日本国内においてブロードバンド化が進展するとともに、マルチメディア・パソコンが家庭やオフィスに普及するようになったときに、例えば、個人がデジタルビデオ等で撮った画像を友人等にオンラインを通じて配布するような社会の到来に備えて、その環境づくりをしている」のであって、RIAJやJASRACに対して「『燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや』とはよくいったものである(編集部注:つまらない人物には大人物の遠大な心はわからないという意味。司馬遷の「史記」による)」と挑発する。

 RIAJなどが日本MMOを「本件著作隣接権侵害行為の実現において中核かつ不可欠な役割を果たしている」という指摘に対しては、ユーザーが「WinMX」などの「共有ファイル」と同じフォルダを「ファイルローグ」に割り当てることも可能だとして、「既に事実の認識として間違っている」としている。さらに、「本件レコードをMP3化した電子ファイルが収蔵されているまさにそのフォルダを『共有フォルダ』に指定することによって送信可能化を行なったのは、まさに該当利用者であって債務者ではない」と断言した。同様に、「本クライアントソフトを起動させる行為を行っているのは、まさに利用者に他ならない」としている。

 日本MMOでは、「多人数によって直接受信されることを目的として、特定フォルダを『共有フォルダ』として指定した場合」は、送信可能化権に抵触するとしているが、一方で「現実社会での友人、親戚、同僚等の特定少人数によって直接受信されることを目的として特定のフォルダを『共有フォルダ』として指定した場合、この『共有フォルダ』内に本件レコードをMP3化した電子ファイルを蔵置する行為は、『公衆によって直接受信されることを目的として』なされたものとは言い難いから、『送信可能化』にあたらないことも間違いない」としている。そしてこれは、「ファイルローグ」機能の一つであるリアルタイムチャットで知り合った特定ユーザーIDの持ち主に対しても適用されるという。

 さらに、RIAJなどが「当該複製は、送信可能化権侵害行為の必然的な結果として発生するもの」だという指摘について、日本MMOでは「例えば、浜口庫之助が作詞作曲し、田代美代子が実演する『愛して愛して愛しちゃったの』が送信可能化されたからといって、必然的にダウンロードされるといえるかは大いに疑問である」と分析している。

 日本MMOが著作権侵害行為を教唆しているという指摘については、「個人のウエブページの中に他人の著作権・著作隣接権を侵害するものが混在していることを抽象的に知りつつ個人にウエブページの作成・アップロードを推奨する行為が著作権・著作隣接権侵害行為の教唆行為にあたらない」のと同様に、日本MMOに非がないという。もし日本MMOが違法行為を行なっているのであれば、「債務者のみならず、インターネット・サービス・プロバイダも、NTT各社も、コンピュータメーカーも、インターネット接続用のソフトウェアを提供するソフトハウスも、みな廃業せざるを得ない」と挑発する。

 最後に、「ファイル交換サービスがレコードの売上を減少させている」という指摘について、「ファイルローグ」開始時期以前に減少傾向が始まっていること、レコードの主な購入者層の20~25歳人口の減少とレコード売上枚数の減少は「平仄がとれている」こと、同層の失業率の増加によって、「レコード等を購入するゆとりはより低下している」ことなどを挙げて因果性がないことを反論している。さらに、レコードの新譜そのもののリリース数が減少していることや、シングルCDからマキシシングルへの移行による商品単価の高額化が購買意欲を減少させていると指摘している。

 以上のことより、日本MMOでは「債権者の申立てをいずれも却下するとの裁判を求める」と答弁した。また、日本MMOは「送信可能化状態にあっても、実際に送信されてない」との指摘もしている。ただし、日本の著作権法では著作権者以外の者が著作物を送信可能化にした時点で違法になるので、今後の裁判所の判断が待たれるところだ。

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(2002/2/12)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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