【インタビュー】

「民間会社の機動力と柔軟性を発揮してサービス向上に努める」
JPドメインのレジストリ移管を受けたJPRSに聞く

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 4月1日、JPドメインのレジストリ業務が日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から日本レジストリサービス(JPRS)に正式に移管された。これは、単にJPドメインのレジストリ組織が社団法人から民間会社に移行したという点だけでなく、JPRSとICANNとの間で締結された「ccTLDスポンサ契約」という新しいccTLDの委任関係も注目される。

 今回はJPドメインのレジストリ移管とICANNとのccTLDスポンサ契約について、JPRSの東田幸樹代表取締役社長と堀田博文取締役企画本部長にお話しをうかがった。

──まず、ccTLDスポンサ契約とはどういうものなのか? 

東田幸樹代表取締役社長
 東田社長:ccTLDスポンサ契約では、ICANNの責任とJPRSの責任が明確化されています。ICANNはルートネームサーバーの運営に責任を負い、JPRSはJPドメインの登録・管理業務とネームサーバーの安定的な運用について責任を負うことになります。

 インターネットは当初、ボランティアベースで構築されたネットワークでした。たとえば、これまでJPのプライマリのネームサーバーはJPNICが運営し、それに対して賛同してくれる企業がセカンダリのネームサーバーを運営していました。しかし、これでは万一問題が起きたとき、それは「JPNICの責任か?」ということになると、必ずしも明確ではありませんでした。それが今度は、もしプライマリとセカンダリに問題が起きてJPドメインが引けなくなったとき、JPRSの責任になります。

──責任が明確化されたということは、逆に問題が起きないよう十分な施策をとる必要がある。

 東田社長:ネームサーバーへの投資をきちんとしていかなければならないと思っています。セカンダリをボランティアでやっていただいた方にこのまま続けていただくことになると思いますが、契約ベースも視野に入れてご相談していく予定です。

 我々も自前でプライマリとセカンダリを別の場所に置いていますが、そうはいっても東京に集中しているので、契約ベースで進める際には関西や北海道で探すことも可能になってくると思います。場合によっては、日本だけではなくて海外に置くことも考えなければいけません。

──DNSが安定するということはわかったが、エンドユーザーにとって何か目に見える部分でサービスは変わるのか?

 東田社長:4月1日から具体的にサービスが変わったり、手続きが変わるといった話は、残念ながらすぐには用意してませんが、1年間かけて規則を整備し直す考えです。もっと簡素化できるところがあるということで、規則の見直しについては計画に入っています。

 また、登録数を増やすだけでなく、利用を盛り上げていくことも重要です。従来の属性型/地域型ドメインは、昨年から開始した汎用JPドメインとは“使われ方”が違います。.COMや.NETに対応するのが汎用JPドメインの役割で、CO.JPやAC.JP、GO.JPというのはもっと別の役割があります。「こういう場合は、汎用JPドメインを使ったほうがいい、あるいは属性型ドメインを使ったほうがいい」ということがエンドユーザーに浸透すれば、それがJPドメインの信頼につながってくるでしょう。

 .COMなどのgTLDはまったく分類ができていないドメインですが、JPドメインはセカンドレベルが付いてることによって、サードレベルがある程度保証されているというか、きちんと分類されています。これをレジストリとしてやっていければ、別のビジネスにもなるのではないかという気はしています。

──ccTLDスポンサ契約を締結しているレジストリは、今のところ世界で2組織のみ。そのうちの1社として、インターネットコミュニティに向けて何かアピールするところは?

堀田博文取締役企画本部長
 堀田取締役:JPRSが誇りに思ってもいいと思うのは、ICANNの用意した契約モデルを日本のインターネットコミュニティの事情に合わせて変更したことです。ICANNは、「政府がJPRSを監督する」というかたちでJPRSが動く仕掛けにしたいと思っていたわけですが、その関係を変えさせました。日本の場合は、「JPNICがJPRSを監督する」というと言葉が悪いんですが、「JPドメインがきちんと運営されるようにJPNICがJPRSをサポートする」というかたちの契約です。

 インターネットにおける新しいガバナンスモデルを日本から提案したということで、それが他の国にも広がっていくような活動をするのが我々の責務ではないかと思っています。

 東田社長:ある意味、日本に限らず、政府の指導が強くなりすぎてインターネットのよさを失うことを心配しているわけです。そういう意味では、「政府とJPRS」という関係ではなく、日本のインターネットコミュニティを代表するJPNICが我々を第三者的にチェックしていくことは大事なことではないでしょうか。

 インターネットの運営に昔から携わってきている人たちから見ると、ccTLDのモデル契約はあまりにも政府よりになっています。少なくとも、そういう立場の人たちの意見も入るように変えて契約したというところは評価されてもいいと思います。

──JPドメインの運営方針に関しては、「JPドメイン名諮問委員会」のチェックをうけることになっている。

 東田社長:JPドメインの方向性の大方針を秋までに検討していただく予定です。例えば、今年度の諮問事項として、WHOISでの情報公開についての検討があります。WHOISのデータベースはネットワーク運用のためにあるのですが、一方では個人の情報を保護しなければならないという潮流があります。どこでバランスをとるのかという問題は、さすがに民間会社で決めるには難しい内容です。

 また、CO.JPでは1組織1ドメインの原則を堅持してきていますが、最近は倒産したり吸収・合併する企業も多いため、それらの企業が登録していたドメインが急に使えなくなっていいものなのかどうか? ルール通りであれば6カ月で登録を抹消するということになりますが、そのあたりは難しい判断が必要になります。社会のコンセンサスも必要です。

──最後に、JPドメイン業務の正式移管を受けて今後の抱負を。

 東田社長:JPドメインは今までも信頼性や安定性という面で、JPNICが素晴らしい仕事をして来られた。引き続きそれを維持していかなければならないので、身の引き締まる思いです。

 ただし、せっかく民間会社になったのですから、機動力と柔軟性を発揮してサービス向上に努めていきたいと思います。さらに安定的なネームサーバーの運用に努めると同時に、利便性や経済性を十分に追求する方向で事業を進めていきます。

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(2002/4/2)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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