【ブロードバンド】

“FTTH激戦区”と化す東京都荒川区
区の導入補助金制度、申請件数が1,000件を突破

■URL
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/20/abnet/abtop.htm

 東京都荒川区が、FTTH市場としてエライことになっている。FTTH補助金制度を開始した荒川区の区民課によると、NTT東日本と有線ブロードネットワークス(USEN)の2社だけで加入申込みが1,000件を超える勢いだという。また、集合住宅における光ファイバーソリューション導入への動きも活発化しており、集合住宅分だけでさらに700世帯程度の加入が見込まれている。

 補助金の申請件数は3月末で1,176件に達した。内訳は個人世帯1,039件、事業所137件。このところNTT東日本のBフレッツの新メニュー追加などの動きはあったものの、もともと低料金のUSENが同区内でのプロモーションを積極的に展開した結果、個人世帯を中心に加入件数を伸ばした模様だ。

 USEN社長室・広報によると、荒川区内の加入申し込み件数は3月上旬の時点で、同じ時期に加入受付を開始した他区に比べて4倍以上。それぞれ区内の全世帯数に対する申し込み数比率でも2倍以上の開きがあるということで、今回の補助金の効果を実感しているという。


 荒川区の2001年度補正予算に盛り込まれたFTTH補助金制度の予算は3,630万円。一般世帯860件、事業所210件の初期工事費用分に相当するが、これではぜんぜん足りないほどの「大盛況」(区民課)ぶりである。

 そこで荒川区は、2002年度予算で同制度の規模拡大を議会に提案。個人世帯2,956件、事業所739件に相当する1億2,563万円の予算が承認された。荒川区では現在、区内の事業所におけるIT実態調査を進めている。今年度は特に、同調査と併行して事業所においても補助金制度の認知と活用を促していく方針である。

 さらに今後、東京電力やKDDIなどの参入も見込まれており、荒川区がこの半年間でFTTH激戦区に変貌したことは間違いなさそうだ。荒川区の担当者は「このまま行けば、一気にFTTH先進自治体になることも夢ではない」と自信たっぷりである。


 しかし水を差すようで申し訳ないが、これほどまでに加入が殺到しているとなると首を傾げざるを得ない。FTTH導入時のハードルとなっている高額な工事費用を3万円(個人世帯の場合)まで区が肩代わりしてくれるというのは確かにうれしいが、月額料金で見ると、ADSLとは2倍程度の開きがある。この差額を毎月払ってまで最大100Mbpsの光アクセスを必要とするユーザーが、果たしてこんなにもいるものなのだろうか?

 荒川区の区民課には、FTTH補助金制度について1日に10~20件の問い合わせの電話があるが、やはり当初はインターネットに詳しい人からの問い合わせが多く、質問も技術的な内容がメインだったという。

 ところが今ではそれも一段落し、逆に増えているのがIT講習会を終えたばかりの人や、親が子供にすすめられて問い合わせてくるケースだという。つまり、ブロードバンドにはあまり詳しくない層である。自分のニーズとサービスの内容を踏まえ、ADSLなど他のサービスと比較した上でFTTHを選択しているのではなく、これまでブロードバンドにはあまり関心のなかった「“浮動票”がFTTHに流れてきている」(区民課)状態なのである。


 荒川区は3月、「荒川区高度情報化ビジョン」(http://www.city.arakawa.tokyo.jp/vision/index.htm)を策定し、具体的なプランに向けて検討を開始した。補助金制度により一気にFTTH各社の進出を加速させたことについては、区の事業として大きな実績を収めたと言えるだろう。しかし、FTTHを活用してどのような行政サービスを展開するのか、さらには地域のコミュニティや産業の活性化につなげていくのか。いわばFTTHに票を投じた住民の期待に応えるために荒川区が取り組むべき事業はこれからが本番である。

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(2002/5/2)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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