【イベントレポート】

Streaming Media Japan 2002(spring)

次世代Windows Media Technology 「Corona」登場
~バッファリング“ゼロ”を目指す

■URL
http://www.idg.co.jp/expo/smj/
http://www.microsoft.com/japan/

古川亨氏

 6日、ストリーミング技術に焦点をあてたイベント「Streaming Media Japan 2002(spring)」が、東京国際フォーラムにて開催された。基調講演では、米Microsoftの古川亨氏が登場し、「インターネットを新たなステージへ……次世代ストリーミンプラットフォ-ムWindows Media テクノロジー『Corona』」と題した講演を行なった。

 コードネーム「Corona」は、すでに次期WindowsサーバーとなるWindows .NET ServerにWindows Media Servicesとしてβ版が搭載されている。また、「Corona」版のメディアプレーヤーや、エンコーダー、SDKなどは今夏に英語β版がリリースされ、今年度中に正式版が提供される予定になっている。

 「Corona」の特徴は、「Instant-on(即時配信)」と「Always-on(常時配信)」と名づけられた二つの新技術だ。「Instant-on」とは、ストリーミングコンテンツを再生する時に生じるバッファリングを限りなくゼロに近づける技術だ。古川氏は、「バッファリングの時間がなくなることで、あたかもテレビのチャンネルを切り替えるように複数のストリーミングを見分けたり、早送りや巻き戻しをしたりできる」と語った。

 一方、「Always-on」とは、ストリーム中の回線の状況に依存することなく、コンテンツが途切れずに再生され続けるもの。クライアント側のHDD容量やメモリー容量、接続環境に応じて可変でコンテンツをプッシュし、回線が切れてしまってもクライアント側のキャッシュを再生する。講演でも、わざとイーサケーブルを抜くというデモンストレーションがあったが、キャッシュされたコンテンツが何事もなかったかのように流れ続けた。ケーブルを戻すと、セッションを再度張りなおすことなく、キャッシュされた部分以降のパケットを受け取りはじめ、古川氏は「ユーザーが回線状況を意識する必要がない体験ができる」と紹介した。

Coronaラインナップ ニアリーイコールDVD

 また「Corona」では、5.1chサラウンドステレオに対応したWindows Media Audio(WMA) Professionalや、DVD画質に匹敵する動画の配信が実現された。講演ではデモとして、Windows Media Video(WMV)を使って2Mbpsでエンコードされた動画と、MPEG-2を使って6Mbpsでエンコードされた動画を同時に再生したが、古川氏の言うとおり「ニアリーイコールDVD画質」のストリーム配信ができそうだ。同氏は続けて、「HDTV、日本でいうところのデジタルハイビジョンを配信するためには、衛星を使って18~24Mbpsの帯域が必要だった。『Corona』を使えば、これを4~6Mbpsで配信できるのだから、テクノロジーの進歩により古いパイプでも高精細なコンテンツを配信できるようになった」とコメントした。

Dave Fester氏

 なお基調講演の後には、記者発表会も開催された。こちらでは、古川氏に加えて、米Microsoft Windows Digital Media Division General ManagerのDave Fester氏も「Corona」の説明を行なった。Fester氏は、「バッファリングというのは、5年前の技術としては受け入れられたが、今日のユーザーは満足できない」とコメントする。「Corona」で提供される技術は、コンテンツ配信事業者などに無料でライセンスされるが、これについて同氏は「Microsoftのビジネスモデルは、Windowsを販売することだから」とジョークでかわし、会場の笑いを誘った。

 

 

●着々と進む「Corona」戦略


 さて、「Corona」の正式版は本年度中に登場する予定だが、マイクロソフトではさまざまな企業と「Corona」を使った事業を発表している。3日に発表された@niftyの個人向けストリーミングホスティングサービスに、将来的には「Corona」が利用される予定だ。また、5日に発表されたNTT東日本との提携では、FTTHサービス「Bフレッツ」を使った商用コンテンツ配信を年内に開始する。

 さらに、ソニーのVAIOユーザーを対象に「VAIO Cyber Seminar」を提供する。これは、「従来、CD-ROMやプリインストールの形で配られていた“紙芝居”のようなコンテンツに変わって、ストリームでeラーニングを提供する」(古川氏)もの。今秋以降、法人向け直販モデルに実装され、その後コンシューマーモデルにも展開する予定だという。

 一方、エイベックスが2000年4月から提供している有料音楽配信サービス「@MUSIC」において、7月1日からWindows Media技術を採用した「@MUSIC for WMA」を開始する。このサービスでは、新譜シングル約100曲を1曲あたり200円で販売し、ダウンロードしたコンテンツをWMA対応のデジタルオーディオプレイヤーに転送することが可能だ。8月頃には、既存サービスで配信されている楽曲400曲を、年末までに約5,000曲を配信するという。音楽コンテンツの配信に関して古川氏は、「エイベックスというとコピーコントロールCDを率先して取り入れた企業として有名になったが、決してコンテンツ配信に後ろ向きな企業ではない。むしろ著作権保護技術に積極的に取り組んでいる」とコメントし、さらに「WMTに実装されているDRM技術が評価された格好だ。我々は、ベンダーからの意見を集め、彼らが欲しがっているDRM機能を提供していきたい」と方向性を示した。

Broadnow

 このほか、「Corona」はOSに依存しないコンテンツ配信技術として多くのベンダーに支持されている。今回のイベントでは、Panasonicの新セットトップボックス(STB)「Broadnow」が披露された。これを使ってISAOが今秋よりコンテンツ配信サービスを開始するという。また、WMTフォーマットの楽曲を直接再生できるDVDプレイヤーを発売するという。古川氏によると、「これからは1枚のディスクにお気に入りの3本の映画をWMVフォーマットで保存したり、3,000時間分の音楽ファイルをWMAフォーマットで楽しむことができる」という。

◎関連記事
マイクロソフトとNTT東日本、次世代WMT「Corona」を用いた配信実験を開始
@nifty、個人向けのストリーム配信サーバーを月額3,000円で提供

(2002/6/6)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]

ほかの記事はこちらから

INTERNET Watch編集部internet-watch-info@impress.co.jp
Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.