【ソフトウェア/業界動向】

「Mozilla 1.0」ついにリリース~プロジェクト発足から4年4ヶ月

■URL
http://www.mozilla.org/


Mozilla 1.0

 Mozilla.orgは5日、「Mozilla.orgプロジェクト」から生み出された初めてのメジャーリリースとなるWWWブラウザー「Mozilla 1.0」を発表した。この開発者向けのブラウザースイートは現在Mozilla.orgのトップページからダウンロードできる。

 Mozillaは単体のブラウザーとして、またNetscapeブラウザーの基盤としての役割を持つが、一方で、より広範なインターネットアプリケーションを構築するための部品としての役割も大きい。Webがこれほど広く使われるようになった今、インターネットを活用する多くのアプリケーションでオープンな標準規格に基づくHTMLレンダリングエンジンが必要とされており、そのために「Gecko」や簡単にユーザーインターフェイスを構築できるXULの活躍の場は大きいと考えられる。

 Mozilla 1.0はオープンソースで開発され、多くのWebの標準規格をサポートしている。例えば、HTML 4.0、 XML 1.0、 Resource Description Framework (RDF)、 Cascading Style Sheets level 1(CSS1)、W3C Document Object Model level 1(DOM1)をフルサポートするほか、Cascading Style Sheets Level 2 (CSS2)、 the Document Object Model Level 2 (DOM2)、XHTMLを業界で最も高い規準でサポートしている。さらにXML文書の扱い、連携に関してはSOAP 1.1、 XSLT、 XPath 1.0、FIXptrをサポートし、MathMLを使った数式の表示も可能だ。

 Mozilla 1.0の発表に際して、Mozilla.orgの責任者であり“Chief Lizard Wrangler”の肩書きを持つMitchell Baker氏は「ここ数年の間にブラウザーがWebとユーザーの間の主なインターフェイスになった。Mozillaプロジェクトのゴールは、Webコンテンツをオープンにしておくための標準に準拠したテクノロジーを、革新し開発できるようにすることにあった」とコメントした。


 Mozillaは、1998年1月にNetscapeがブラウザーのソースコードを公開することを発表したときにその産声を上げた。このNetscapeの決定にはEric Raymond氏やSlashdotなどのオープンソースコミュニティーが大きな影響を及ぼしたとされ、Netscapeブラウザーの成功に世間の注目が集まった。1998年2月には公開されたコードに基づくブラウザー開発プロジェクトが、正式に「Mozilla」と命名され、開発者向けサイト「Mozilla.org」が開設された。これら全ての出来事が起こった時、ライバルであるブラウザー「Internet Explorer」はバージョン4.0(IE4.0は1997年10月発表)の頃だ。Netscapeのシェアは創業当時一時90%を上回るほどだったが、Microsoftの追い上げは鋭く、IE4.0の発表後、Netscapeとのシェアの差はほとんどなくなったといわれた。

 当初Mozillaは、Netscapeのコードを改良する方向で開発を進めていたが、1998年11月にはソースコード公開に伴って開発が始まった新しいレンダリングエンジン「NGLayout(Next Generation Layout)」を元に、まったく新しいブラウザーを開発する方針に転換した。これが現在のGeckoベースのMozillaの原型となっている。

 Mozillaの開発はその後一旦停滞したかに見えたこともあり、オープンソース開発の限界を指摘されたりもした。しかし、着実に前進を続け、2001年10月に「Mozilla 1.0 Manifesto(Mozilla宣言)」が発表され、ついにMozilla 1.0発表が視野に入ってきた。そしてついに今回のリリースとなった。Mozillaプロジェクト発足から4年4ヶ月を経て、初めて正式な製品を発表できたことになる。


 ビジネス面では1998年11月にAOLがNetscapeを買収し、Mozillaが新会社でどのような役割を果たすかに注目が集まった。AOLはその後、さまざまなデバイスからAOLのサービスやコンテンツにアクセスできるようにするという「AOL Anywhere」戦略を発表、その結果、Mozillaのレンダリングエンジンが大きな役割を果たすようになってくる。Mozilla1.0発表により、企業がMozillaのコードを採用することがこれまで以上に容易になることから、この傾向はより一層強まることが予想される。

 ブラウザー戦争という観点からみると、かつてライバルと目されたInternet Explorerは現在6.0までバージョンをのばし、シェアでは比類のない製品となった。一方Netscapeを買収したAOLはAOLの次期標準ブラウザーとしてMozillaのレンダリングエンジン「Gecko」を採用する計画を着々と進めており、もしこれが実現すればIEとのシェアは縮まることが予想される。とはいえ、Mozillaプロジェクトで開発されたテクノロジーは今後ブラウザーなどのように目に見える形で姿を現すのは稀だろう。Mozillaの真価が問われるのはまだ先のことだ。


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(2002/6/6)

[Reported by taiga@scientist.com]

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