【業界動向】

アノト、日本での事業展開に本腰~単なる“手書き認識”を超えたサービスへ

■URL
http://www.anoto.co.jp/ (アノト日本)

アノトコンソーシアム役員、左から小野欣司氏、釜江尚彦氏、鈴木ルミ子氏、クリステル・ヨハンソン氏、山中輝雄氏
 スウェーデンの情報技術企業「Anoto AB」が開発した、デジタルペンと特殊用紙を使った画像・文字入力技術「Anoto Functionality」(以下アノト技術)の日本での標準化を目指す「アノトコンソーシアム」(アノト事業推進協議会)が発足した。アノト日本などが中心となって結成したもので、2003年の商用サービス実現を目指す。

 デジタルカメラを内蔵した専用のボールペン「アノトペン」を用いて、細かなドットが印刷された特殊な用紙「アノトペーパー」に文字や絵を書く。紙上のチェックマークにチェックを入れると、書いた文字などのデータがパソコンや携帯電話に転送され、その内容を保存したり、メールで送信できる……。これが「アノト技術」だ。この技術のポイントは、まず「アノトペーパー」にある。用紙には0.3mm間隔の小さなドットが印刷されているが、これが1.8mm平方のグリッドごとに、すべて異なるパターンを描いている。パターンの領域は面積にすると6,000万平方km。ユーラシア大陸とほぼ同等の広さとなり、この中の1.8mm四方にすべて違うパターンが入っているイメージだ。これによって、用紙の上にポツっと打った点のパターンを検知し、それが全体から見てどこになるのかを特定することが可能となっている。
 アノト技術では、このパターンのデータを企業に提供し、どの企業がどのパターン(※どのエリア)をどんな用途で利用するかを登録。これを入力データと照らし合わせることで、さまざまな機能の実現を可能にする。アノトペーパーに加えて、用紙上のパターンを毎秒100回記録するデジタルカメラおよび全領域の中でのペンの正確な現在地を計算するイメージプロセッサーを内蔵するアノトペン、さらに入力データからユーザーと関連サービスを割り出し、該当サービスに送信するための認識システム「Paper Look-up Service」(以下PLS)を組み合わせることで、無限の機能が提供できるという。

 スウェーデンのSony Ericssonがすでに行なっている電子メールサービスを例にして説明しよう。このメモパッドは本文、メールアドレス、タイトルのエリアに区切られていて、ここにメールの内容を書き込んで送信エリアにチェックを入れると、内容がBluetoothで携帯電話に送られる。送られた情報を「PLS」が分析して、この用紙がどのサービスで提供されているもので、利用している携帯電話とユーザー、さらにコマンドを自動的に判断し、メールを送信する仕組みだ。メモパッドは電子メール用とSMS用に分かれていて、SMS用に書き込んだ場合、ショートメールが送信できる仕組みだ。
 コンソーシアムの副会長であるイメージ情報科学研究所の釜江直彦氏は、「ペンのIDとペーパーのパターンの両方を認識することで、どの紙で誰が書いているかということがわかり、単に手書き情報を送信するよりも、はるかに多彩な仕掛けが考えられる」と説明。スウェーデンでこの4月から開始したテストサービスに加えて、2002年内にはLogitechが、米国、ドイツ、スウェーデンでのPC向けサービスを予定している。このサービスでは、PCにUSBで接続する“インクつぼ”(ドック)にアノトペンを差し込むことでデータ送信を行なうものとなる。また50万人の医師が登録する米国の医療系情報サービス「MediMedia」でも、アノト技術を使ったテストサービスを予定している。

 コンソーシアムでは、日本におけるアノト技術の標準化やアプリケーションの開発、事業化支援などを行なっていく。すでに医療系のサービスなどで検討を開始している事業もあり、2003年第2四半期には日本市場向けのサービスが開始される予定という。アノトコンソーシアム会長の鈴木ルミ子氏は、日本市場向けでは「専用のサービスと組み合わせて提供するものが主体となる方向で、棚売り(市販)されるのは当分先のことになる」と述べた。また釜江氏は「1枚の用紙の上で、必要なところは文字、部分的に手書きといった認識も可能。紙の上でアーキテクチャが提供できる点が特徴」と説明。日本語認識については、アノト自身では行なわず、OCRなど手書き認識を得意とする企業の協力で行なうという。
 なお現在スウェーデンで提供されているアノトペンは約10万円。日本での本格展開では、1万円前後の価格を目標としている。

アノト技術を用いたデモ。専用の用紙で、画面上の文字や絵の色付けも可能だ
用紙のアドレス欄にメールアドレスを書き込んで、メール作成
スウェーデンのサービスで私用しているメモを持つアノト日本のクリステル・ヨハンソン会長。右はメモ用紙

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(2002/8/27)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]

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