■URL
http://sunnetwork.sun.com/
http://wwws.sun.com/software/solutions/n1/index.html
米国で開催中のSun Microsystemsのプライベートイベント「Sun Network Conference」2日目のキーノートスピーチは、同社の「N1構想」担当副社長のSteve Mackey氏。N1は、Sunが開発中のデータセンター管理システムだ。ネットワークで接続された複数のマシンやネットワーク機器をまとめて1つのシステムのように管理し、そこで実行されるサービスへリソースを割り当てていく。つまり、1つのデータセンターを1つのマシンのように仮想化して管理するためのツールである。具体的にいうとデータセンターを使ってWebサイトを立てるような場合に、ユーザーはセンター内の個々の機器構成を考えることなく、単にサービス(Webサイト)にどの程度のCPUパワーや記憶領域を割り当てるかだけを指定するだけで、各サービスに適切な機器が割り当てられるようになる(もっとも、Webサイトの内容などはN1の範囲外なので、別途用意しなければならない)。
このN1は、2003年には、個々のマシンやネットワーク、ストレージなどを仮想化する「Virtualization Engine」が登場予定。その後、2004年にサービスに対して資源を自動割当てする「Provisioning」機能が追加されるなど、かなり遠大な構想だ。
さて、この次に登場したのは、Diffie-Hellman公開鍵暗号の発明者の一人として有名なWhitfield Diffie氏。SunのChief Security Officerである。
今回、Sunは、研究所で実装した楕円曲線暗号のプログラムをOpenSSLプロジェクトに提供したことを発表している。楕円曲線関数は、公開鍵暗号暗号システムで利用できる「一方向関数」(関数の値を計算するのは簡単だが、その値となる関数のパラメーターを求めるのが困難な関数全般を指す。これが公開鍵暗号の原理となる。ちなみに現在広く使われているRSA公開鍵暗号ではこの関数として素数の積が使われている)を簡単に実現できるもので、今回提供されたプログラムは、モバイル機器のようなあまり能力の高くないプロセッサでも利用可能なように効率的に作られたものだという。
また、Sunが主導するLiberty Allienceは、すでにスペックが公開されているが、今回、Javaで作ったそのプロトタイプが開発者向けに公開されることも発表された(別記事参照)。これにより開発者は具体的なサンプルを得ることになり、実験を行なったり、自社のソフトウェアに組み込むことが可能になるという。
Whitfield Diffie氏は、Sunのセキュリティー方針として以下の5つの項目を上げた。
1.ビジネスではセキュリティーを他人任せにできない
2.1つの会社ではすべてのことはできない
3.信頼されるためにはオープン性が必要
4.セキュリティーはあらかじめ組み込まれていなければならず、あとから追加されるものであってはならない
5.セキュリティーは、ビジネスを行うことを容易にすべきで、難しくするものであってはならない
たしかに当を得た方針ではあるが、暗にMicrosoftのことを批判しているようにも受け取れる方針ではある。ただ、今回のイベントでセキュリティー関連の話で何回も「Disaster recoverly」(災害からの復旧)や「サイバーテロ」、「9月11日」というキーワードが出てきた。どうも昨年の9月11日以来、米国では、サイバーテロなどもセキュリティーの大きな話題となっているようだ。
最後に登場したのは、Javaの開発者であるJames Gosling氏。今回のスピーチは、Sunの研究部門についての話。後半、JPL(ジェット推進研究所)との共同プロジェクトであるJavaを使った、火星探索機のソフトウェアについての話があり、ステージには、その探索機のプロトタイプが登場。Javaそのものに関する話はなく、研究所とJavaの応用的な話だけだった。日本でのJavaOneが近いために話題を出し惜しみしたのかもしれないが…。
Linuxサーバーである「LX50」や今回発表の「Enterprise Client」など、必要ならPCやLinuxもSunブランドで用意するというシステムの総合提供へのこだわりが感じられる。今回のイベントでSun Microsystemsの方向性を見るに、やはり大規模、大企業をターゲットとする傾向をはっきりと感じた。
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(2002/9/20)
[Reported by 塩田紳二]