今回の提言が実行に移されれば、インターネット利用者は大きな恩恵を被る。回線料金の終日定額制は願ってもないし、インターネット通販の消費税カットやパソコン購入費の税控除も、コンテンツの拡大とハードウェアの普及に直結するものだ。
さらに提言をよく読むと「自立した、行動する個人にインセンティブを与える」「(税金を)ばらまく政府から取らない政府へ」など、「ネットワーク時代の社会はこうあるべきだ」というビジョンが見てとれる。
この提言をまとめたメンバーの顔ぶれを見ると、ビジネスパートナーもいればライバル同士の企業もあり、一見呉越同舟にも見える。が、共通しているのは「外資系企業の日本人トップ」という立場。この立場は、業種によらず日本と外国との差や日本が抱える構造的な問題に最も敏感でいなければならないポジションでもある。その彼らが「このままでは日本は沈没する。急いで手を打たねばならない」という危機意識で一致し、それが政策提言としてまとめられた点には意味がある。外資系情報研究会会長を務める村井勝コンパックコンピュータ取締役相談役は「経団連を通じて新政権にも、またNTTにも伝えていく」と明言している。利用者が1,000万人を超えた日本のインターネットを、「政策レベルの問題」とした点に意義があるのではないか。
提言を補完する形で加えられた各企業のトップのインタビュー集には「通産大臣に民間ビジネスマンを起用すれば、株価は5,000円上がる」(SAPジャパン・中根滋社長)などの内容も盛り込まれ、日・米・アジアの現状を比較した調査データも加わったかなり厚みのあるレポートとなっている。ホームページでの公開を期待したい。
('98/7/23)
[Text by ジャーナリスト・喜多充成 (kita.mitsunari@nifty.ne.jp)]