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【インタビュー&レポート】

中山美穂の「有料ライブ中継」はどう行なわれたか?

中継画面 8月8日、中野サンプラザで行なわれた中山美穂のコンサートの模様が、有料でインターネット中継された。
 「有料のインターネット中継」とは、インターネット中継をお金を払って見ること。決済には、プリペイド式の「BitCash」や「Web Money」、「Cyber Cash」などのほか、クレジットカードが利用される。

 これまでに、'97年の坂本龍一や松任谷由実のコンサートや、「なすび」(本誌'98年7月24日号参照)などが有料で中継された。8月30日には、佐野元春のライブ中継が予定されるなど、「お金を払って見るインターネット中継」は今後も一層増えそうな勢いだ。

[参考URL]
中山美穂インターネットライブ
http://www.jap.co.jp/miho/net_live/help.html
佐野元春「有料オンラインライブ“地下室からの接続”
http://www.sme.co.jp/Live/UGL/


Jストリームに聞く「有料中継の行方」

 そこで、今回、インターネット中継の核となるストリームのインフラを提供する株式会社Jストリームから、取締役副社長古株均氏に、今回行なわれた中山美穂有料中継や、今後の有料ストリーム中継についてお話を聞いた。
 なお、古株氏は8日の中継当日は、Jストリーム社内で自ら「クレーム」の対応をしていたとのこと。


古株氏Watch編集部(以下W編): 今回のコンサート中継で当日のクレームにはどんなものが?

古株氏(以下K): Jストリームで受けたのは、メール1件、電話30件くらい。BitCash側にも問い合わせがあったけど、ほとんどは「認証がおかしい」という内容でした。数字の「1」(イチ)とローマ字小文字の「l」(エル)の間違いがほとんど。ありがたいことに「(映像が見られなくて)ふざけるな」といったようなクレームは来なかったです。オンデマンドで後からまた見られるようにしたことなど、時間的なハードルを低くしたことがよかった。

W編: 今回の中継の位置づけは?手応えは?

K: Jストリームとしては、課金の実験としての意味合いが大きいです。(手応えとしては)結構いけそうですね。
 今回はそもそも中山美穂のコンサートツアービデオを録る予定だったのでカメラを回すための準備は整っていた。それをデジタル化して使い回すことで新たな収入が入るのであればやったほうが得だという考え方。いかに上手に、コンテンツを二次利用するかというのがデジタルで成功するための手段の一つなので、そういう意味では結構よかったと思います。

W編: 今後の有料ストリーム中継で、決済方法としてはどんなもの使われますか?

K: 今回はBitCashとJストリームが組んでうまく行ったというところです。QQQシステムやWeb Moneyはこれから佐野さんのライブで取り組むところなのでうまくいけばいいな、という感じです。少なくとも今回の中継でBitCashの知名度は上がったと思う(笑)。将来的には、今渋谷でVISAがやってるEC実験などにもつながっていくでしょうね。
 お客さんの方としては、現金なのか、カードなのか、米ドルも使いただろうし、払い方はどれでもいいよっていう。こちらでは、できるだけ窓口は広げていきたいと思ってます。

古株氏2W編: 課金に向いているコンテンツ、向いていないコンテンツはありますか?

K: あると思いますよ。(企業ユーザー向けの)ビジネスものは難しいし、向いていない。何故かというと、デジタル系のコンテンツに対するお金の流れについて、会社の経理システムとかがぜんぜんついていけない状況だから。まだまだそこまでマーケットがうまくいっていない。向いているのはアイドル、アダルトだと思います。個人が楽しめるエンターテイメント系のものしか向かないと思います。
 今後(ゲームの)裏技を小売りする人が現れるかもしれない。売った時のゲームの著作権とか版権の問題はあると思うけど。

W編: Jストリームでは今後も「RealSystem」を使って中継を行なうのでしょうか?

K:うちは、株主がRealNetworksなので、現在は「RealSystem」を使ってます。しかし、お客さんは中身が見えればいいじゃないですか。もし、お客さんが他の方式を選ぶのだったら、そちらには対応せざるを得ないでしょう。ユーザーの方々が決めることですね。

W編: 有料ストリーム中継の今後は?

K: ただ、(コンテンツを)見せるだけっていうのは苦しい。何かと組み合わせてやらないと。お金払って見るだけというのならレンタルビデオと変わらないのでダメ。ただ、アイデアはいっぱいあるので(今後の)手応えはある。

W編: 今後、ストリーム中継の普及に必要なものは?

K: NTTの料金が下がることですね。または、テレホーダイを拡大すること。

株式会社Jストリーム
http://www.stream.co.jp/


●中継現場レポート「中継車はスタッフ自前のRV」

 8月8日の中継は、中山美穂の事務所側がコンテンツを提供し、株式会社Jストリームがインフラ、BitCashが決済を担当、という布陣で行なわれた。

Jストリーム中継の裏側

 今回のインターネット中継は、音声・映像の編集作業は事務所が行ない、Jストリームはその映像を受け取りリアルタイムでRealVideoにエンコードし配信するというしくみ。あらかじめ編集されたコンテンツを受け取れるためJストリーム側での作業負担が軽減され、実際の作業は会場の中野サンプラザ駐車場に置いたRV車の中で2名の技術者によって行なわれた。テレビなどの中継に比べ手軽だと言われるインターネット中継だが、実際に会場から引かれたケーブルが繋がれたRV車の姿(さながら海賊放送のよう)を見ていると、その手軽さには驚かされる。なお、使用されたRV車はスタッフ自前のものということ。
 作業は手際よく進められ、中継もトラブルなく進んだ。なお、今回は有料の中継ということだが、現場の作業は通常の中継作業と大きな違いはない。

中継車  
ケーブル  
作業中
中継車として使用された車 

窓からはコードが伸びる 

暗がりで作業を進める2人



決済:BitCashでは


物販 決済のしくみを提供するBitCashでは、今回のイベント専用に作成した「中山美穂デザインBitCashカード」を販売した。BitCashの問い合わせ窓口ではコンサート直前まで問い合わせが相次いだという。特に女性からの問い合わせが多く「どうやって見るんですか?」と言った初歩的な質問も多かったとのこと。
 また、今回注目されるのは、会場でのBitCash販売。関係者によると開演までに100枚以上が売れたという。会場ロビーにある販売コーナーでは「今夜の感動をもう一度、インターネットで再体験」といったチラシが用意され、終演後も多くのファンの関心を集めていた。もちろん中には、BitCashをテレホンカードと間違える人や、用途は知らないがコンサートの記念に買っていく人も多かったという。最終的に会場で販売されたBitCashは300枚以上。コンサートの来場者約2,000名の15%以上が購入したことになる。


コンテンツ提供側

 今回のライブ映像は、インターネット中継のために編集/作成されたものではない。今後パッケージビデオでの販売やテレビでの放送まで考慮に入れた「マルチユース」の素材として作成された。映像の権利を持つ側としては、コンテンツを二次使用できるメディアとして「インターネット」も視野に入れ始めたということだ。なお、今回のコンサート映像は、年末にキングレコードよりビデオソフトとして発売されることが決定した。


まとめ
 現時点でどれくらいの人が実際に中継を見たかは明らかになっていないが、8月末までオンデマンドで中継が見られることも考えると、最終的には相当数の視聴者を稼ぐことになると思われる。
 この中継は、例えば「会場に来られないファンでもコンサートを楽しめる」といったポイントだけに留まるものではない。優秀な(コンテンツとして商品価値の高い)映像を持つ者がインターネットをメディアとして捉えられるか、BitCashなどの決済システム販売会社にとって、ストリーミングのメディアが有料のコンテンツとして成り立つか、といった、それぞれの立場での検証の場となった。また、中継のインフラを提供するJストリームとしては、こういったストリーミングメディアの「商売道具」としての確立が、今後のビジネス拡大につながっていくわけだ。


 なお、Jストリームでは、今後、大物ビジュアル系バンドやアイドルなど続々中継を予定している。そのほとんどが、アーティストの所属事務所からではなく、アーティスト本人の要望によるものとのこと。こうしたアーティスト側の意識も今後のストリーミング配信の普及に拍車をかけそうだ。

('98/8/11)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]

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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp