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【編集部から】
インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。乞うご期待!
■ヨーロッパを自在にアクセスできる
イラスト・Nobuko Ide
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私は車が好きでも、スピード狂でもない。だからアウトバーンの恩恵にあずかるといっても、ただの交通の手段として利用しているに過ぎない。普段の速度は、時速100~120Kmくらいだろうか。以前、友人の家に行く時に先導してもらったら、160~180Kmで走り去る友人の車に全然追いつけずにうろたえたことがある。もたもたと走っている私にようやく気が付いたその友人、ウンザリしながら速度を私の車に合わせてくれた……が、目的地につくなり一言、「Schneckenfahrer!」と私に浴びせた。訳すなら「カタツムリ運転手」。そうか、私は亀よりのろいんだ……と納得。
実際、ドイツの主要都市以外の小さな町や村に行くには、車なしではまず不可能だ。電車やバスを乗り継いでいては一日がかりとなる。私のように近郊の教会などでコンサートをする身だと、その後、夜中にマンハイムの家に帰ることなど絶対に無理だ。以前、まだ車を持っていなかった頃に隣の町ハイデルベルクでオペラを演奏した時など、電車を乗り継ぎ家に帰ったら深夜3時近かったなんていう経験もある。今は、その4時間半かかった行程を車で帰る。必要な時間はほんの20分(!)だ。
■アウトバーンの暗い一面
カラッと晴れた日のアウトバーン
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日本の高速道路との大きな違いは、時速無制限なことだけではなく、料金所がないことだろう。無料なのだから当然だが、料金を払わなくていいだけではなく、料金所でいちいち徐行して停車する、時間的ロスがないことがうれしい。もう一つは、照明がないこと。真っ暗な闇の中を高速で走っていると、まるでブラックホールに突入していくような気持ちになり、慣れるまで怖かったのは私だけなのだろうか。他の車が一瞬で追い越して行き、そのテイルランプすらしばらくして見えなくなってしまうと、また闇の中を独りでポツンと走っていることになる。道が真っ直ぐなだけに眠気も襲ってくる。数秒なら居眠りしていても真っ直ぐだから大丈夫。オットット(笑)。
照明がないのは電気代の節約にもなるし、滑走路代わりに使用する非常事態(!)に、飛行機(戦闘機?)の主翼が照明用の柱に引っ掛からないためでもあったようだ。私個人としては、この「非常時」という言葉を聞くたび、イヤーな気持ちになるのだが……。というのも、その一つ一つが「この人たちは、また戦争する気なのだ」と思わせるからだ。アウトバーン滑走路に限らない。もっとも代表的なものとして、防空壕がある。各町の要所要所に、今でも「非常時」に逃げ込むための防空壕が設置されているのだ。普段は蓋がしてあってそれとは気づかないが、その中には決められた収容人員分の何十日分だかの食料や水が常に用意されていると聞く。
穏やかな公園の一角…だが、実は防空壕の入り口になっている
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ともあれ、アウトバーンの快適さは確かだ。片道3車線から4車線あるところがほとんどだし、ほんの一時期の特定な時間帯や事故以外、普段は渋滞もない。2車線だと少し走りにくくなる。右の車線は大抵トラックで占められているからだ。左の追い越し車線(右側通行)は迂闊には出られない。私みたいにノロノロ走っていると、スピードのある車に一瞬でくっつかれて「邪魔、ジャマーーーー!」と言われる。それが同じ程度の小さな車だと腹が立つが、ポルシェやフェラーリだったりすると、「ゴメンゴメン」となってしまう。その点、ウィークエンドは快適そのもの。特別な許可がない限りトラックは土日祭日は走れないからだ。その分、制限が解ける日曜日の夜は、トラックのオンパレードとなるが。
■「Langsam aber Sicher」で走っていこう
最近のドイツは運転マナーが悪くなった。とはいえ、隣国のそれに比べればまだまだ規則正しい。イタリアやフランス、スイスから帰ってくる時、国境を越えドイツに入った途端、ホッとするのはそれが理由だ。最近の現象として、何故かウィンカーを出すことをしない人たちが増えてきていて、これが怖い。時速150キロとかそれ以上で走っていて、前触れなく突然(!)車線変更されるのも怖いが、街中の交差点でどっちに曲がってくるのか判らないと、道を横断することすら躊躇してしまう。ひがみっぽいが、いい車に乗っている人の方がその傾向が強いように感じて、高価な車にはウィンカーがついていないのかとも思ってしまったりしている。
そのような小さなことが大きな事故に繋がる。時速が早ければ早いほど、事故の時はすさまじい。この数日、立て続けに事故現場を見たが、追い越し車線に文字通り「横たわって」いる車や見事に大破している車、炎を出して燃えている車を目のあたりに見たり、救出用のヘリコプターが飛び立ったりするのを見ると背筋がぞっとするのを抑えられない。また、一度事故がおきると、後遺症としての渋滞もすごい。大きな事故でなくても、渋滞に巻き込まれれば1時間は覚悟しないとダメだ。その後に仕事がある時は大変。一度など開演2分前に飛び込んだこともある。どんな演奏をしたかって尋ねられても、そのスリル以外は全然記憶にない(~_~;)。
街中の標識もわかりやすい
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私もドイツでの生活が長くなり、どこかがドイツ風になってしまっているようだ。これからも日本風なところとドイツ風なところの、できるならいいところをミックスして、時には素早く、時にはゆっくりとマイペースで生きたいと思う。
これまでご愛読ありがとうございました。また、別の機会にドイツの情報をお伝えできることもあると思います。それまでAuf Wiedersehen!(また会う時まで)
※「アウトバーン通信」は今回で終了です。御愛読ありがとうございました。
◎著者自己紹介 ドイツに来て27年。どんなことが珍しくて何が日本ではない物なのか見分けがつかなくなっている私。アウトバーン通信を書きながら、新たにドイツと日本の違いを考える機会に恵まれ貴重な経験をしました。それも今回で最終回。まだまだお伝えしたかったこともあったけれど、半年間だったこともあり季節にあわず書く機会を逸した部分が悔やまれてしまいます。いつか、ドイツの「秋編」をお伝えしたく思いながらひとまずお休みさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。 →taogaさんのホームページはこちら
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(2001/04/27)
[Reported by taoga]