ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年6月30日版


HEADLINE 3 articles

米政府は電子商取引売買のソフトなどにかかる関税免除を各国に提言
衛星インターネット高速配信新サービススタート
ウイルス対策と暗号・認証の両機能を併せ持つ融合ソフト
余談2題:待ちきれない!/インターネットマガジン


[ソフト][ネット貿易](レベルA')
●米政府はインターネット電子商取引で売買されるソフトウェアなどにかかる関税免除を各国に提言する


 日経新聞9面には、米政府がインターネットを使った国際的な電子商取引で売買されるソフトウェアなどにかかる関税の免除を各国に求める方針を決めたという記事が掲載されている。クリントン米大統領は7月1日に「国際的な電子商取引の枠組み」と題するインターネット上の商取引の包括的な振興策を発表する他、デーリー商務長官が6日から3日間の日程でボンで開く担当閣僚会合などで各国に協力を求め、世界貿易機関(WTO)でも提唱を行うようだ。
 新聞紙上にもあるように、通信網を介した貿易は本来課税対象なのだが、その捕捉自体が難しいこともあって、アメリカはインターネット上の取引を「無税の聖域」にして、米企業が強いソフト貿易を拡大させようとする狙いが見えている内容と言えそうだ。持てる者(国家、又は政府)は、関税など取らなくてもその売上自体から税収入を大きく得ることが出来るので、売り上げ拡大に支障になる関税障壁は取り除きたいのが本音なのだろう。
 逆に、持たざる者(国家、又は政府)にとっては、その流通経路からしか税収入を期待出来ないことから、こういった提言を鵜呑みには出来ない事情もあり、アメリカとそれ以外という利益格差が生まれてくるのは必定であろう。
 ソフト・ユーザーにとっては、関税による価格格差が無くなることから、喜ぶべき提唱のように思われるが、圧倒的なソフト大国:アメリカとの情報格差がもっと大きくなることによる将来的な不利益(産業全体としてその国の競争力を削がれるなど)も大いに懸念されるところであろう。


 




[衛星インターネットサービス](レベルB)
○衛星インターネット高速配信する新サービスが11月にスタート


 日経新聞面には、ハイテクベンチャーのインフィネットが通信衛星会社の日本サテライトシステムズ(JSAT)の衛星回線と送信局を借りて、通信衛星を使ってインターネットの情報を家庭やCATV会社に高速配信する新サービスが11月に登場するという記事が掲載されている。マンション住民やCATV会員がインターネット情報を要求する「上り」回線では地上回線を使い、情報供給を受ける「下り」回線では衛星を活用するサービスで、一般家庭向けは初めてらしい。
 記事によると新サービスは、高速回線を張り巡らしたマンションや会員と高速回線で結ばれているCATV会社の屋上に受信機を設置、利用者が要求した情報を衛星経由で配信する仕組みで、ISDNの20倍以上の速度でデータなどが取り寄せることが可能になり、料金はマンション住民の場合で月額5千円以下になる見通し、ということでもあるようだ。
 現在のJSATの衛星インターネット接続サービスでは、主に通信業者やプロバイダー向けのサービスになっており、例えば「ISDNの20倍以上の速度」にあたる1.5Mbpsのサービスでは、送信局側が446.1万円/月・局、受信局側が15.1万円/月・局(昨年の10月31日時点)となっており、「マンション住民の場合で月額5千円以下」でペイさせるには、送信局側費用をインフィネットで持ったとしても、少なくとも一マンションにつき30軒以上に接続サービスする必要が出てきてしまう。JSATのサービスは10月までで試験が終了して、通信料金など価格的な見直しがなされるであろうから、もう少し少数のユーザーでもペイ出来るサービスとなってはいると考えられるが、インターネット・マンション(Ethernet接続やプロバイダー機能を持ったマンション)など、これから新築される物件や、新サービスを初めようとするCATV会社あたりでないと、サービス拡張するには難しい部分がありそうだ。





[セキュリティー&ウィルス対策](レベルB)
○マカフィー・ジェードとローレルインテリジェントシステムズのウイルス対策と暗号・認証の両機能を併せ持つ融合ソフト開発


 日経産業新聞1面には、コンピューターウイルス対策のソフト開発会社のマカフィー・ジェードと暗号・認証製品の開発会社のローレルインテリジェントシステムズは互いの技術を融合した総合セキュリティー製品の開発・販売で提携したという記事が掲載されている。ウイルス対策と暗号・認証の両機能を併せ持つ初めての融合ソフトを開発し、7月末に販売、日本DECと提携して、企業向けのルートを確保するらしい。
 記事には、マカフィーのウィルス対策ソフト製品群をICカードなどを使ってローレルの暗号・認証製品に組み込んだ融合ソフトということで、Windows95/NT対応版で価格は3万円前後からということのようだ。
 このところ、日本でも電子メール添付の書類などからのウィルス感染が猛威を奮いはじめており(6月9日のNEWSWatch余談その4参照)、クラッカー達のコンピューター・システムへの悪さもエスカレートしてきた時期とも重なり、タイムリーな提携と言えそうだ。ソフト業界も、セキュリティーやウィルス対策ソフトが各種発売されたり(5月28日のNEWWSWatch参照)、トレンドマイクロソフトバンクが参画した「ワクチンバンク」の設立(5月14日のNEWSWatch余談その3参照)や、アイ・エス・エス(ISS)ソフトバンクなどが参画したネットワーク・セキュリティ関連の共同販売連合体「セキュリティバンク」の設立(6月12日のNEWSWatch参照)などと、この関連での動きがかなり激しくなっているのだが、2社の提携はワクチンとセキュリティソフトを足した以上の効果が期待できそうだ。
 しかし、それだけセキュリティとワクチン効果が上がる分、ソフトユーザーや用途自体が狭まる危険性も考慮する必要性が出てくるのだろう。




 
余談その1:
   日経産業新聞2面には、野村総研がイントラ/エクストラネット上で図面などイメージ情報を容易に表示できるソフト「パワーバインダーイントラユース」を開発し、7月1日から発売するという記事が掲載された。(6月27日の野村総研のニュースリリースを参照のこと)
 また、日経産業新聞3面には、富士通研究所が、インターネットで3D仮想都市に接続した際、高速に画像を取り込んで画面に表示する技術を開発したという記事も掲載されている。画質が劣化しない1/6程度に画像を圧縮した信号をPCに取り込み、画像を元に戻す処理方法を改良して画像1枚当たりに必要な時間を36%短縮するなど、圧縮した画像信号を効率的に元に戻して画面表示するらしい。
 加えて、日刊工業新聞11面にはベンチャーテック(宇都宮市)が、CD-ROMからの画像・動画読込により、ネットからの画像等の読込の際のストレスが少なくなるWindows対応のブラウザーを開発したという記事まで掲載されている。
 最近インターネット・ユーザーのキーワードは”待ちきれない!”ということなのだろう。
 
余談その2:
 日経新聞15面には、日本の自然を世界に発信する”インターネットマガジン”が7月1日創刊されるという記事が掲載されている。「ネイチャーネット」という、コンサル会社の青木コンセプト事務所と出版社のビー・エヌ・エヌ、広告代理店の読売広告社が共同制作し、創刊号のテーマは「海」ということらしい。  どうも「インターネットマガジン」という言葉は、電子出版の一般名称となりつつあるようなので、インプレス社もマガジン別冊が出しにくい状況となりそうな予感が...




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