1997年10月20日
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○インターネット放送の普及とオンデマンド・サーバー
○Windows98に組み込まれるPCデータ放送機能
○緊急規制緩和策
余談2題:パソコン検定5級/米サン会長、大いに語る
[インターネット放送](レベルB)
○インターネット放送の普及とオンデマンド・サーバー
日経新聞15面には、インターネット放送サービスが本格的に始まったとして、各種サービスを取り上げた記事が特集となっている。
まず、日本ビクターと音楽ソフト子会社のビクターエンタテインメントが共同で、自社のホームページ上でインターネット放送を始め、第1弾として19日に若手アイドルの松本恵が出演するイベントを生中継した件(10月16日のINTERNET
Watchダイジェスト参照)が掲載されている。
次には、NECが来シーズンからホームページ上にプロ野球中継コーナーを設け、球場に独自で5~6台のカメラを設置して試合の中継を始める件が掲載されており、このほかソニーコミュニケーションネットワークや東京インターネットなど大手プロバイダーも、自社で制作した映像コンテンツ配信を始めているらしい。
またこの映像コンテンツ配信を行うための「放送受託サービス」(インターネット放送局のようなもの)として、KDDなどが出資するJストリーム(6月19日のINTERNET
Watch記事参照)や松下電産の「パナソニック・ストリーム・キャスト」(9月16日のNEWS
Watch余談その1参照)などが、配信受託サービスを開始したことや、IIJのIPマルチキャスト(7月1日のINTERNET
Watch参照)が年内にも配信受託サービスを開始する件も掲載されるなど、インターネット放送用の回線混雑対策も進んで来ているいるようだ。
こういったインターネット放送への需要が高まる中、日経産業新聞2面には、松下電産がイントラネットなど広域のネットワークで動画番組を放送しながら、端末からの各種リクエストにも応じることができるサーバーシステム技術「ビデオシャワー バージョ
ン3.0」(90万~867万円)を開発したという記事も掲載されている。同技術を利用した製品第1弾として、子会社の松下コンピュータシステムがサンのワークステーション向けソフトを12月1日に発売するとしており、データの放送型配信とオンデマンド型配信を両立させる技術となっているようだ。
上記もまだイントラネットやLAN内での放送システム構築向け技術なので、低速インターネット回線への適用はこれからになるようだが、一般ユーザー向けネット放送局開設のためには、ストリーミング技術ばかりでなく、この様なオンデマンド機能も重視していく必要があるだろう。
[TV・PCデータ放送][Windows98](レベルB、10月13日のINTERNET
Watchダイジェスト参照)
○米MSとWavePhroe社は、WaveTopをWindows98に組み込むことで合意
日刊工業新聞8面には、米マイクロソフトとコンピュータ間の無線データ通信大手のウェーブフォア(WavePhroe)社が、ウェーブフォアのデータ放送ソフト&サービスである「WaveTop」をWindows98に組み込むことで合意したという記事が掲載されている。既に10月8日付けのマイクロソフト及びウェーブフォアのプレスリリースで公表された内容ではあるが、NewsTop、StockTop(投資金融情報)、KidsTop、TechTop、FamilyTop(主に家庭夫人向け)、FunTop(ゲームや音楽など)といったプッシュ技術を使ったコンテンツ・チャンネル・サービスが、TV電波やCATVを介してPCのOS上にも提供されることになるようだ。10月1日には、MSのInternet
Explorer 4.0のActive Channel向けに、上記ウェーブフォアのWaveTopサービスやビジネス・ニュース配信サービスである同社の「Newscast」サービスを提供すると発表しており、その流れからしてもWindows98への搭載化は比較的スムーズにいくものと思われる。
日本においても、テレビ朝日が今年4月からPC向けTVデータ放送「ADAMS(TV-Asahi Data
and Multimedia Service)」(2月4日のINTERNET
Watch記事参照)を開始しており、TBSも10月1日から、TV地上波データ放送サービス「データパレード」の本格放送を開始し、インタラクティブ・サービス(9月30日のINTERNET
Watch Web記事及び同日のNEWS
Watch参照)も行ってはいる。しかし、上記受信システムは全てWindoews95対応のPC基板やソフトなどで構成され、またTV電波に載せるデータ形式も各々異なることから、(ウェーブフォアのWaveTopサービスがWindows98という次期OSに取り込まれることとなれば)両方式とも日本独自のデータ放送方式として孤立する可能性もあるだろう。今後とも両サービスを普及させていく為には、上記の様な米国の動向への注視も必要となってくる。
○緊急規制緩和策
日刊工業新聞1面と2面には、日本政府は自民党がまとめる緊急経済対策を受けて、11月にも規制緩和策を固めるという記事が掲載された。その中に情報通信に関する項目もあり、電気通信料金の認可制廃止からKDD法廃止、CATV事業への外資規制撤廃や、プロバイダーにも関連する第二種電気通信事業者の回線設備保有や役務の見直しなどがあるようだ。
緊急景気対策ということで通信料金認可制廃止などは、例えば電話事業などの価格自由競争を促進するので、直接通信ユーザーに対しても益となるだろう。しかし、KDD法廃止やCATV事業への外資規制撤廃などは、海外での通信事業者間の激しい競争(MCIを巡る買収合戦はその典型)を国内に招く呼び水にもなるので、施行に関してはそういったことを踏まえたトータルな議論も尽くす必要があるだろう。
余談その1:パソコン検定5級
日経新聞38面には、パソコンに関する能力や知識を評価する「パソコン検定試験」を実施しているパソコン検定委員会が、パソコンにまだ触れたことのない小中高校生などを対象に新たに「5級」を新設し、11月15日に第1回の試験を実施することを決めたという記事が掲載された。この5級はペーパーテストで、パソコンを始めるに当たって必要な知識や用語の理解度をみるらしい。
当試験を主催する旺文社やパソナソフトバンクにとっては、受験者の幅を広げようとしての方策なのだが、PCユーザーの裾野の広がりも期待したいという想いは、日本のPCメーカーにおいても今は同じだろう。
余談その2:米サン会長、大いに語る
日経産業新聞29面の経営欄には、米サン会長のスコット・マクネリー氏のロング・インタビューが掲載されている。今一番ホットな話題であるMSとのJava訴訟の件から、何故オープン化戦略を取るのかまで、彼のエネルギッシュに語る姿勢からも一歩も引かない強気な性格を伺い知ることが出来る。
その中でも特に私が興味を引かれた部分は、彼が米自動車産業界においてそのオープン戦略を学んだ(彼の父親は米自動車メーカーBig
3の幹部だった)というくだりで、彼が言う「オープンなものが成功し、計画経済は破綻する」という仮説も、米自動車メーカーが日本車メーカーから大きな痛手を被った経験から培われており、こんな所(ソフト業界)にもそれが活かされているという事実が分ったことであった。
(それにしても、新聞のイラストにもあるように彼のJavamanとしてのイメージはすっかり定着してしまったようで...(^_^;)
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