皆さんこんにちは。中小零細が苦しい世の中になりつつありますが、そういう時こそこの連載を役立てていただきたいと思います。気づけば足掛け4年、今年も頑張って書いていきます。
■ブログ炎上とSEO
スマイリーキクチさんという芸能人のブログが炎上して、警察沙汰になったのをごぞんじでしょうか。以前から噂が噂を呼んで、収拾のつかない状態となっていたようです。
ITジャーナリストの井上トシユキさんがこの報道の中でブログ炎上についてコメントを求められたのに応じて、「ブログでは極端な表現や差別的表現、エキセントリックな内容を避けるべき。1人でブログを書いていると錯覚を起こしやすいのだが、常に見知らぬ人の前で大声でしゃべっているつもりで書かなくてはいけない」と述べておられますが、的を射た発言だと感じました。
スマイリーキクチさんの場合は、ブログの内容や表現に問題があったわけではなく、まったくいわれのない誹謗中傷が一人歩きしてしまった例ですが、通常「ブログが炎上した」という場合は、ブログの内容がきっかけでコメント欄に意見が殺到する状態を指します。
当たり前のことですが、インターネットで公開するということは、誰が見ているかわからない、非常に多くの人が目にする可能性があるということです。数千km離れたところに住み、生活環境も違えば価値感もまったく違う人が閲覧する可能性も十分にあります。
Webサイトを運用する際には、SEO的な観点からも、不要に反感を招くような表現はなるべく避ける必要があります。
ネットではいったん火がついてしまうと、多くの人が同じキーワードで検索することで、検索サイトで関連検索として、マイナスイメージのキーワードがひも付けされて表示されてしまうことがあります。そうなると、炎上についてまったく知らなかった人も検索サイトを通じて知ってしまうことになり、加速度的にダメージが拡大します。企業にとっては大きなイメージダウンにつながりかねません。
■SEOのコンテンツは安全性に配慮して
それでは、どういったことに気をつければいいのでしょうか。
具体的にはたとえば、この連載は、文章の量としてはあまり多くはありませんが、それなりに時間をかけて執筆しています。書きたいことを「製品化」するという作業を丁寧に行っているつもりです。
その工程は、いうなればメタボ状態の文案をスリムな体型へと変える手続きです。「パブリックな情報サイトでは、誰しも言いたいことを100%は言えない」ということを大前提として、頭に入れておく必要があります。
通常は1日に数百程度のアクセスしかないサイトでも、たまたま目にした人がブログや掲示板に書いたり、ブックマーク共有サービスに登録したりすることでさらに多数の個人ブログに広がっていきます。その結果、何万人、何十万人の人が目にする可能性があるのです。
ですから、どんな人が見ても大きな不快感を感じることがないように、という配慮はつねに必要になってきます。
こうした配慮は必要となりますが、オリジナルな文章を執筆していくことはSEOにとって大きなアドバンテージとなります。社内持ち回りでブログを運営されているとしたら、アップロードして良い記事とダメな記事のガイドライン策定をするのも良いでしょう。
たとえば、ECであれば「製品に関する事実や知識」なら問題は少なそうですね。肯定的な論調の文章も、その逆に比べればはるかにリスクの低いものと言えます。
業界の流れをよく把握しておくことも大切です。自社のビジネスに関連したニュースはRSSで受信しておきましょう。もしも、文章を書くことに慣れていないのならば、時間を空けて何度も推敲を重ねることです。
また、コメント欄やトラックバック機能については、危機管理に対応する体制が取れないのであれば、最初から外してしまってください。
役立つコンテンツなどを提供することでSEO的な効果を上げ、収益アップにつなげようとしているサイトでは、ジャーナリスティックな視点のブログなどとはそもそも目的が違います。大きな反感を招くリスクを冒してまでも世間に広く訴えかける形でテーマに切り込む必要はありません。
自己表現の場と、ビジネスとしてのサイトは分けるべきです。
万一炎上した場合ですが、炎上がどうしても収まらない時には、弁護士や警察に相談をするしかありません。
こんなことを書くと「あなたは当たり障りのない提灯記事を書いているのか」と言われてしまいそうですが、私も「満足感のある記事でトラブルを起こさないもの」を書けるように毎回頭を悩ませています。
■グーグルの障害
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Googleで障害が起こっていた40分の間、Googleのサイトやオバマ氏の公式サイトなどを含め、すべてのサイトが検索結果画面で危険なサイトとして警告が表示された
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さて、グーグルがめずらしく大規模障害を起こしました(ニュース記事)。先月末の深夜数十分間、すべての検索結果に警告メッセージが表示されたのです。夜0時前後という時間帯でしたから、目撃された方も多かったのではないでしょうか。
この障害の影響として、Gmailで一部のメールが迷惑メールと誤判定されるトラブルもありました(ニュース記事)。
Googleの発表によれば、このトラブルの原因は人為的なもので、マルウェアなどが仕込まれた“危険なサイト”のURLリストを更新する際に、手作業によりURLとして“/”が混入してしまったとのことです。その結果、すべてのサイトのURLには“/”を含みますから、検索結果でGoogleサイトも含む全サイトが“危険なサイト”として表示されたということです。
業界最先端の頭脳と技術を持つと自他共に認めるGoogleにおいて、手動作業の単純なケアレスミスが発生したことに驚かされた人が多かったと思います。もしかしたら、検索結果の順位付けも人的要素の割合が増えてくるのかもしれません。
ブログ炎上もグーグルの障害も一種の「危機管理」の問題となります。少し時間ができてしまった時、次の一手が見えない時、そんな時にはこうした危機管理対策に目を向けてみるのも面白いかもしれません。
たとえば、SEO的危機とは何でしょうか。それはもちろん順位の下落です。
サイトというのは、建て増し建て増しで作ってゆくとどこか不自然であったり、言っていることがちぐはぐになる部分が出てきてしまいがちです。
環境の変化という外的要因と、自己の成長という内的要因がありますので過去と未来が一直線に、というのはなかなか難しいのです。しかし、読んでいる方にはそうした経緯はわかりませんし、内容の齟齬について気にされる方も当然おられるでしょうから、修正可能なものであれば統一した方が良いかもしれません。
サイトの細かい改修を重ねた結果、リンクの構造もめちゃくちゃになっているサイトをよく見かけます。景気の良い時にはスピード重視でやってこられたのだと思いますが、後退局面で時間的余裕ができたならば、少し整理をしてみるのも良いでしょう。
■SEOもパーソナライズ
SEOは、目的に応じて手法が多様化しています。短期に上位表示したいのか、長期的な視野で取り組みたいのか、ロングテールを狙うか、ビッグキーワードで攻めるか、地理的な要素があるのか、モバイルなのか等々。
こうした戦略に応じて提案は変わってきますから、今や「王道SEO」のようにひとくくりにまとめるのは、実は大変なことなのです。
そんな中で定石があるとすれば、インターネットというのは不特定多数の方が閲覧されているものですから、前述したロングテールやビッグキーワードなどの手法を組み合わせて「長期的な視野のもとに、ロングテールキーワードとビッグキーワードを並行して狙う」というのが最も無難な道となります。巷にあるSEO関連文書にこの手の内容が多いのも、ひとつにはそういった理由からでしょう。
ですが、これがプライベートなセミナーや個別面談となった場合にはどうでしょうか。もしかするとWeb上の情報とは全くの別世界が見えるかもしれません。
そういう意味で、自前でSEOをしている企業で、「どうせSEO会社なんて」と思っている場合でも、成果にいまひとつ納得がいかない場合は、一度くらいはお試しでアドバイザーを入れてみるのも良いかもしれません。同業他社含め、不特定多数に向けて公開する文章と、相対でお話をするのでは内容の濃さやきめ細かさに違いが出るのは当然です。SEO周りの事情は、企業ごとに千差万別ですから。
(2009/02/20)
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田村昌士(たむら・まさし)
SEOコンサルタント。PC向け、モバイル向け共に、SEO対策研究の先駆者として活躍。著書に「プロとして恥ずかしくないWEBデザインの大原則
-改訂版-」(共著)等がある。SEO対策の専門家として今まで数多くの企業にソリューションを提供。モバイルSEOは2004年から研究を開始。
(プロフィール最終更新:2009/04/09)
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