皆さんこんにちは。諸般の事情により最終回を迎えることとなりました。前回の連載で「今年も頑張って書いていきます」と言っておきながら本当に申し訳ないのですが、本連載は今回が最終回となります。筆者が新事業の立ち上げに忙しいこともありますが、SEOについての入門、基本的な考え方の部分はこれまでにある程度お伝えできたのではないかと思っています。
拙い連載でしたが、インターネットを通じてこの日本、世界に何人かは、楽しみにして下さった方もいたと思っています。私はもともと筆不精な上に、継続的に何かを提出するというのが苦手でした。しかしこの連載だけは自分の修行と割り切って、決して音を上げない覚悟で取り組んで来たつもりです。
実は1回目、2回目の下書き原稿はボツをいただいていたと記憶しています。周囲にも「そんなに無理してまでやらなくても」と言われたくらいです。しかし、3度目の原稿で担当者のOKが出て、晴れて連載を開始することになりました。
私が言いたいのは、「決してあきらめない」「新しいことに挑戦する」ということです。2度目のボツをもらった時に私があきらめていたら、この連載はありませんでした。
インターネットとは、検索とは、クリックとは、詰まるところ人と人との心の出会いではないでしょうか。言葉はいくらでも取り繕えますし、検索エンジンもやり方次第では騙せてしまうのですから、現実はそんなに甘いものじゃないという見方もあるでしょう。しかし、そういう世界もあっていいのかなと私は思うのです。
■定額給付金とSEO
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Yahoo!のスポンサー検索で、「定額給付金」を検索した結果画面。旅行会社の広告が多いことがわかる
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「定額給付金」で検索してみると、給付額に値段を合わせた目玉商品の広告が出稿されています。動向を眺めてみると、中には1万円、2万円の枠へ無理矢理ねじ込んでいる高額商品のキャンペーンも見受けられます。
ではなぜ彼らはそれを行うのでしょう。私が思うに、定額給付金による消費活動というのは、国を挙げての「お客様囲い込み合戦」だと思うのです。
もしあなたの会社がこれに参戦するのであれば、この1回で利益を得るというのではなく、リピート率の高い商材をお試しで安く提供してみるというのも1つの方法でしょう。給付金額にとらわれず、3000円くらいの品物を販売したって構わないのです。
今後も多くの企業が定額給付金キャンペーンを展開してくるものと予想されます。ネット通販だけでなく、地域性のある実店舗でも広告を使って新規顧客開拓にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
■不況について
私がビジネスをしていてよく見かけるのが、お金がない人ほど浪費をするという現象です。お金に困って知人から借金までしているのに新車を買ってしまった、など良い例です。
1つの家庭が不況を生き抜くためには、世帯を挙げての情報リテラシー、検索リテラシー向上が必要です。
まずは、東京に住んでいると仮定してみましょう。あるCDが欲しいと思った時には、近所のCD屋さんにいきなり行くのではなく、図書館の蔵書検索をWebブラウザで開くのです。
図書館に求める資料があれば、あなたは3000円稼いだことになります。
もし図書館になく、購入することになったとしても、新品を買うよりもアマゾンのマーケットプレイスで買った方が安いのです。これは簡単な作業ですが、最低限の検索力は必要です。
逆に、いらない品物を売る時にはどうしたら良いでしょうか。
これもインターネットを使って需要と供給の格差を利用し、高く売ります。つまり、地方の中古買取屋さんに売るのです。この方が高く売れます。
「そんなせせこましいことをして生活したくない」と思うかもしれません。しかし、昔と違って、足を棒にして実店舗を探し回るような労力は必要ありません。いまや家族が高齢であっても、それぞれがネットサーフィンや、ネット売買を活用し、節約しなければならない時代なのです。
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文京区図書館のサイトで、アカデミー賞受賞で話題の「おくりびと」の視聴覚資料(DVDやCD)があるか検索してみた
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久石譲氏が手がけた「おくりびと」のサウンドトラックCDを発見。貸し出し中だが、サイト上で予約ができる。買わずに無料で借りれば、数千円分のこづかいが浮いたことになる
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■不況に強いビジネス
不景気の世の中で、ビジネスを立ち上げるというのは難しいことなのでしょうか。
しかし、こうしている間にも利益を上げている業種はたくさんあります。そういった不況ならではのビジネスモデルにあなたが入り込めるか、といった点がポイントになるでしょう。
では、それを発見するにはどうしたら良いでしょうか。
簡単ですね。儲かるキーワードには高い値がついているのですから、片っ端から見積計算ツールに突っ込んでみれば良いのです。異常な高値を発見することができれば、それが鉱脈ということになります。
すぐにその業界に参入することはできませんが、SEOの知識を応用してそのジャンルのポータルサイト作成などに挑戦してみるのも良いでしょう。
そこから道が開けるかもしれません。
最近のアルゴリズムを見ると、大手SEO業者が参入しているからうまくいっている、という画一的な状態は、なくなりつつあるように見受けられます。
それよりも1つのサイトを真面目に自分で作り上げた方が近道かもしれません。個人や中小零細にとっては、以前よりチャンスの扉が開いているのだと思います。
なお、不況の時どのような業種が稼げるか、というのはさまざまなサイトや書籍でも取り上げられています。ぜひ調べてみてください。
■SEOのこれから
これからも検索エンジン最適化は続いていくでしょう。
検索エンジンはさまざまに仕様を変えつつも、SEOを無視することはできないと思います。私たちがこれほどまでに1つの技術の解析作業に熱中したのは、SEOが初めてではなかったでしょうか。そうした作業の面白さを知ることにも、SEOの存在意義はあると思います。
それに、検索エンジンのシステムよりもっと複雑なテクノロジーや現象は世の中にたくさんあるのです。SEOをきっかけとして、その技術や現象がどのように成立しているのかを調べたり、優秀なアウトプットを出す他会社の経営分析に役立てたりと、システムの成り立ちを探る喜びをSEO的視点から手に入れて下さい。
私自身もまた、この仕事から多くの学びを得ています。
真実と栄光は、自分で手繰り寄せるしかありません。インターネットで情報収集し、解析し、比較検討して導き出した仮説の実証を繰り返すのです。万感の想いと幾多の苦難を乗り越えて、この連載に幕を閉じたいと思います。
(2009/04/10)
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田村昌士(たむら・まさし)
SEOコンサルタント。PC向け、モバイル向け共に、SEO対策研究の先駆者として活躍。著書に「プロとして恥ずかしくないWEBデザインの大原則
-改訂版-」(共著)等がある。SEO対策の専門家として今まで数多くの企業にソリューションを提供。モバイルSEOは2004年から研究を開始。
(プロフィール最終更新:2009/04/09)
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