■URL
http://www.janis.or.jp/adsl/
長野県の川中島町有線放送(KUHK)と県内のプロバイダー「JANISネット」は、9月1日から、商用ADSL高速インターネット接続サービスを開始すると発表した。ADSL技術を利用した商用の接続サービスとしては国内初となる。
サービスの対象地域は、長野市川中島町有線地区。通信速度は、上りが最高で272kbps、下りが最高で1.5Mbpsの常時接続型のサービスだ。料金は「プライベートコース基本接続サービス」で月額料金5,500円(入会金20,000円)。サービスには、ADSLモデム、LANケーブルの貸与のほか、10MBのホームページエリアサービスなども含まれている。
長野市川中島町有線放送では、'98年2月に有線放送電話施設を利用した「xDSL」の公開利用実験を行なっている('98年2月9日号参照)。有線放送電話網とは、昭和30年代から主に農山村地域での通信媒体として利用されているもの。銅線による通信網のため、同じく銅線を利用して高速通信を可能にするxDSL技術に応用できるとして、ほかには、長野県伊那市や上田市で利用実験が実施されている。
今回のサービスは、実験で得られたノウハウを基に、セキュリティ等を強化して商用化したもの。バックボーンと接続している「JANIS県センター」から、「JAグリーン長野本所」、3つの支局を介してユーザーにインターネット接続環境を提供する。JANIS県センターとJAグリーン長野本所との接続には、NTTの専用回線サービス「ディジタルアクセス1500」を利用するが、JAグリーン長野本所から支局3拠点は、自前の回線を利用し、HDSLによる上下1.5Mbpsの通信速度で接続するという。
サービス体系については、「プライベートコース基本接続サービス」のほかに、入会金20,000円、月額料金10,000円の「ビジネスコース基本接続サービス」がある。また、「独自ドメインサーバ公開サービス」もオプションで用意されている。これは、一般的に専用線IP接続サービスに相当するもので、月額2,000円で利用できる(ドメイン取得料等は別途必要)。同社によると、将来的には「NCTV」などのセットトップボックスの貸与も組み合わせたサービスを構想しているとのこと。
商用のADSLによる接続サービスについては、新会社「東京めたりっく通信株式会社」が今秋のサービス開始を発表している(7月30日号参照)。東京めたりっく通信の出資会社であるソネット株式会社は、xDSL技術の開発を進めている会社で、伊那市、上田市、川中島町で行なわれていた有線放送電話網を使ったDSL実験にも参加していた。ソネットでは、新会社の設立とxDSLサービスの提供開始に関して、「最大の功労者は、私たちの勝手な実験依頼を引き受けてくれ、またDSL技術の習得の場を提供してくれた農村有線放送電話組合の方々だ」としている(設立に関する報道資料より)。
東京めたりっく通信のサービスは、NTTによる主配電盤(MDF)の開放が必須。都市部で通常の電話回線を利用することもあり、今後、NTTの公衆電話回線網を介さない、ドライカッパーを利用した通信サービスの全国展開への突破口となる可能性がある。長野の例は、農村有線放送電話網の利用という点では、応用範囲は限られているが、国内初のADSL技術を利用した一般向け商用サービスということで注目を集めそうだ。
('99/8/4)
[Reported by okiyama@impress.co.jp]