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【音楽著作権】

アーティスト自身の声が「著作権仲介業務の独占」を崩すか

MAA、著作権仲介業務法改正「中間まとめ」に対する意見書を公開

■URL
http://www.maa.gr.jp/opinion/ (MAAの意見書)
http://www.jasrac.or.jp/jhp/ikensho/ikensho.htm (JASRACの意見書)
http://www.monbu.go.jp/singi/chosaku/00000260/ (中間まとめ)

 音楽家の坂本龍一氏らの発起によるメディア・アーティスト協会(MAA)が、'99年7月に著作権仲介業務法の改正に向けて文化庁著作権審議会から発表された「中間まとめ」に対する意見書を文化庁に提出した。

 「中間まとめ」は、文化庁の著作権審議会内に組織される専門部会「集中管理小委員会専門部会」により発表されたもの。仲介業務制度を含む著作権の集中管理に関する規制緩和などを提言しており(本誌7月6日号参照)、各関連団体/関係者からの意見を募集していた。MAAによる意見書は、「中間まとめ」への評価、問題点の提示といった内容で、文化庁と同時に、日本音楽著作権協会(JASRAC)にも提出した。なお、JASRACは、「中間まとめ」に真っ向から反論する意見書を9月に提出している(本誌9月16日号参照)。

 意見書によると、アーティスト本人達で組織されるMAAは、著作権の集中管理のあり方について“著作者としての”意見を述べることのできる数少ない団体であるとしており、制度改革にあたっては、「著作者の人権」という観点が重要な視点であるとしている。つまりは、アーティストには、作品を「いつ、どこで、どのような方法で」発表、流通させるかを決める自由があり、現状で、(集中管理団体、また、著作物管理を含め)著作者に選択の自由がない状態、さらに、デジタル化/ネットワーク化が進む現在において、その管理団体の対応が緩慢であることは、「著作者の基本的人権である営業の自由、財産権のみならず、表現の自由などの精神的自由の制限として重要な憲法問題を惹起するものである(意見書より)」としている。

 それらの背景を踏まえた上で、MAAでは、「中間まとめ」で、規制緩和・競争原理の導入や作品や支分権ごとの選択権を認める必要があるとしたことは「賛成である」としている。ただし、実際に集中管理団体の参入が自由化が認められても、整備等の問題から、当面はJASRACに権利の管理を委託せざるを得ないと予測しており、現行の著作権信託契約約款が維持されるのならば問題は解決されないとしている。こういったことから「中間まとめ」においては、「JASRAC側で、現行著作権信託契約約款を自主的に変更しないときは、その強制変更等の強制措置を実施することが不可欠であるという観点が盛り込まれなければならない」と提言している。また、JASRACによる既成秩序を保護すべき要請があるとしても、インターネットなどの新しいメディアでは、そもそも既成の秩序は生成されていない状態であり「JASRACの既得権を主張させる理由は乏しいものというべきである」としており、JASRACに対し、自動公衆送信分野における著作権信託の自由の実現を要求することを明記している。

 そのほか、意見書では、「単一の管理団体による効率的な管理」「単一管理団体による利用者への便宜」「効率優先の考え方を持ち込むのは危険」といった、JASRACが9月に提出した「中間まとめ」に対する意見書での主張に対して、両者の見解の具体的な差異を述べ反論している。

 「中間まとめ」に対する意見書は、JASRACのほかに、デジタルメディア協会(AMD)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会らが提出しているが、その分野的な問題から、いずれも、「音楽以外の分野において、かえって規制が強化されるのではないか」との懸念を示すものであった。音楽分野においてはJASRACが意見書を提出したが、その意見を音楽著作者全体の意見として重要視されることをMAAは危惧し、今回の意見書提出に至った。通常から「私どもは音楽著作者の代表」といった立場を強調するJASRACであるが、坂本龍一氏ら音楽家本人達から提出された意見書にJASRACと意を同じくする部分は少ない。最終的な取りまとめを行なう文化庁がそれをどう判断するか注目だ。

('99/10/22)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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