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【レポート】

円もドルも? eBay Japanはどういうサービスか

■URL
http://www.ebayjapan.co.jp/

 昨年はインターネットオークションが大ブレイクした年だった。国産の「楽天市場」や「MY TRADE」に多くのユーザーが集まり、アメリカ生まれのオークションとして「Yahoo!オークション」が成功した。

 そして、かねてから噂になっていた、やはりアメリカ生まれの「eBay Japan」が2月28日に正式スタートした。本家アメリカの「eBay.com」では、1,000万人近いユーザーが、毎日何かを売買している。たかが不要品のリサイクルと侮ることなかれ! アメリカでは、eBayでの売買で生活している人もいるのだ。そこで、eBay Japanの売買の仕組みを紹介しよう。

●eBay Japanは「円」のサイト、日本人のコミュニティ

 eBay Japanは、日本人向けに独立した個人売買Webサイトであるが、同時にeBay.comの一部でもある。世界中のeBayのすべての商品は同じデータベースで管理されている。これまで、「英語」の壁を乗り越えてeBayへの道を切り開いてきた先輩日本人ユーザーのフィードバック(評価)は、eBay Japanでも有効になる。

 ところで、いままでのeBay.comの貨幣単位は「ドル」である。売買を行なう以上、通貨は売り手と買い手の間で統一されていなければならない。しかし、日本人向け売買サイトを立ち上げるのであれば、通貨は「ドル」よりも「円」のほうが都合いい。どちらのサイトも同じシステムで動かす以上、この差異をどのように埋めるのか?

 eBayでは、英語を公用語とし、世界貨幣であるドルを使用するeBay.comをインターナショナルサイトと位置づけている。一方、日本語を公用語とし、円で売買を行なうeBay Japanをイントラナショナルサイトの一つとして、日本人のコミュニティにしたいという。eBay Japanで出品した商品は、円で売買されるのだ。

 そこで、どのサイトのユーザーなのか見分けるための「サイトID」という分類が取り入れられた。すでに、これまでeBay.comに登録されていた日本人ユーザーに対して、サービス開始の挨拶とともに「サイトIDを日本サイトに変えてください」というメールが送られている。

 サイトIDを日本サイトに変更するということは、自分の本拠地が日本であるということを示すだけではない。ひとたび入札をすると、さまざまな連絡メールがeBayから送られてくる。今までのeBay.comでは、「あなたの入札額が、他の人に抜かれたよ」とか「おめでとう、この商品は君が落札したよ」というメールが、英語で送られて来た。これからは、サイトIDを日本にしておけば、たとえeBay.comで入札した商品であっても、これらのメールは日本語で送られてくるようになるのだ。

●売買のやり方

 それでは、eBay Japanでの売買の仕組みを、売り手と買い手の立場から見てみよう。

<売り手の場合>

 eBay.comとeBay Japanが同じシステムを使用することは、すでに述べた。ということは、売り手は商品をどちらのサイトにも出品することができるのだ。英語が苦手であるとか、日本円で売りたいと思うユーザーは、eBay Japanに出品すればよい。

 なお、出品するにはクレジットカード情報の登録が必要になる。これは、売り手が成人であることと真剣に商品を出品しようとしていることを確認し、無責任な売り手から買い手を保護するためだ。

 さて、出品手数料だが、eBay.comでは出品時に、最初に設定した開始価格によって25セント、50セント、1ドル、2ドルのInsertion Fee(出品料)が徴収される。これはeBay Japanでは、30円、60円、120円、240円になった。また、商品の落札が成立すると、落札金額に応じて1.5~5%の落札料が課せられる。この落札料の算出に関しては複雑な計算式を用いるので、出品者は必ず「ヘルプ」の「売り手ガイド」( http://pages.ebayjapan.co.jp/help/sellerguide/index.html )に目を通しておくことをお勧めする。

<買い手の場合>

 買い手の場合、商品の検索に3つの選択肢がある。「日本円で出品されているアイテム」「日本国内にあるアイテム」「日本から入札可能なアイテム」だ。以下、順々に見ていこう。

1)日本円で出品されているアイテム

これがeBay Japanのデフォルトだ。この場合、売り手は同じ日本人であることが多い(日本語のできる外国人でも構わないのだ)。商品の説明も日本語で書かれているだろう。しかし、売り手は日本に住んでいるとは限らない。アメリカやヨーロッパや南極に住む日本人も出品できるのだ。

2)日本国内にあるアイテム

もし、商品の受け渡しが心配ならば、日本国内に商品があるものだけをピックアップすることもできる。売り手が日本国内に居るということは、おそらく日本語が通じるということでもあるだろう。貨幣は「円」とは限らないが(アメリカ人相手に商売している日本人だっているわけだ)、国内ならば交渉もたやすくできるだろうし、商品の受け取りも海外とのやり取りより簡単だ。

3)日本から入札可能なアイテム

貨幣や商品の所在地に関係なく日本に向けて販売可能なすべてものを探すことができる。例えば、eBay.comに出品されているものの中で「Will Ship International(海外発送します)」と指定してあるものが含まれる。この場合、交渉は英語になる可能性もあるが、努力次第でレアものに出会うことも夢ではない。

<貨幣の表示>

 eBayでは「ドル」と「円」が混在するため、ドル建てのオークションの商品が、日本円だといくらくらいなのかということが気になることもあるだろう。そこで、日本国内にある商品と、日本から入手可能なすべての商品のうち、「ドル」で出品されているものは同時に円に換算した金額が表示される。ただし、この日本円の表示はあくまでも目安であって、「ドル」建てのオークションの入札や支払いは「ドル」で行なわなくてはならない。

<カスタマーサポート>

 オークションで相手と英語でやり取りする場合、たいていは決まったやり取りで済む。それでも、対応しきれない場合があるだろう。その場合、eBayはカスタマーサポートの一環として「翻訳サービス」を提供している。もっとも、カスタマーサポートが、売り手と買い手の間に入って仲介してくれるのではなく、自分が言いたいことの定型サンプルを紹介してくれるのだ。

●eBayは怖いですかって聞いたらね……

 インターネットという世界は、非常に匿名性が高い世界だ。通常の生活圏内では、出会えるはずもない人々と知り合いになることもできるが、気をつけなければだまされてしまうこともある。こうした問題についてeBayではどう考えられているか、米eBayのVice Presidentであるサム大橋氏に聞いてみた。

大橋:日本の女の子にね、eBayは怖いですかって聞いたらね、面白いことに「私の住所を教えたくない」って。しかし、住所を教えなかったらどうやって商品を引き取るんでしょう?(笑)

eBayに限ったことではないが、インターネット上の見知らぬ誰かに自分の名前や住所といった個人情報を教えることや、金銭のやり取りをすることに、不安を感じる人もいるだろう。売り手に商品代金を振り込んだにも関わらず、いつまで経っても商品が送られてこないこともあるかもしれない。これがもし高額商品だったりした日には、泣くに泣けないケースだ。このような問題を回避するためにeBay.comではエスクローサービスを紹介している。

大橋:eBayがエスクローサービスをやっているわけではないですよ。ただ、取引・売買の中の実際のお金のやり取りで安全な場所を提供してくれるサービスをしてくれるところがあれば、ユーザーに紹介するということです。

今のところ、日本でエスクローサービスを提供している企業は少ないが、eBay Japanの開始にあわせて参入したがっている企業も多いらしい。さらに、エスクローだけではなく、個人売買をやりやすくするようなサービス(例えば、クレジットカードによる個人決済サービス。eBay.comでは、「BillPoint」や「PayPal.com」などを紹介している)なども始まるかもしれない。

大橋:あくまでもeBayっていうのは、「場所」なんですよ。システムを提供しているだけ。実際にモノを売っている人は、eBayじゃなくて、売り手なんですよね。だから、彼らが成功してこそ、eBayの成功があるんです。

eBayは、今まで自社のサービスのことを「オークション」と言ったことはない。必ず「(個人間の)売買」と言っている。eBayは、システムとしてオークションを採用しているだけである、と。大橋氏はeBayの成功の秘訣として「ルール」の重要性についても語った。

大橋:他の日本のインターネットオークションサービスを利用しているユーザーがね、そこがあまりにもひどいって言うんですよ。ルールがないでしょ。自由であるけども、ルールがあるということはすごく大事なんですよ。

eBayの主役は売り手である。その売り手を保護するために、ルールを定め、オークションを監視し、サポートサービスを準備することで支援をする。そのために、売り手からは利用料金を徴収する。そうした結果が、落札率50%(出品された商品の2つに1つは売れている)という数字に表れてくるのだという。他のオークションサービスの落札率が14%ということ引き合いに語る大橋氏の満足そうな表情は印象深かった。最後に、eBay Japanは立ち上がってすぐに成功するかと、単刀直入に聞いてみた。

大橋:いや、すぐに成功するかどうかということは重要じゃないですよ。むしろ、ユーザーが毎日使ってくれればいいですね。スティッキネスって言うんですけどね、eBay.comの場合、1ユーザーが1日に約2時間半も繋いでいるんですよ。日本でも、そうなって欲しい。

大橋氏はAmazon.comを引き合いに出しながら答えた。Amazon.comはユーザーを選ばない。しかし、利用回数は月に数回だ。eBayは、中古を嫌がる人はいるけれども、一方でハマる人も多い。そしてハマった人は毎日アクセスする。そうなってくればいいのだ、と。

大橋:クリアに分けるとしたらね、買い手の本性は宝捜しなんですよ。そして、売り手はeBayで生活するような自立性、それがうまくできれば非常にいい形になるんですよ。

冒頭でも少し触れたが、アメリカではeBayを利用した売買だけで生活費を稼いでいる人たちがいるそうだ。例えば、ガレージセールで商品を仕入れてきて販売したり、他人の不要品を代行出品して落札額の半分を手数料として貰うなど、方法はさまざまだ。

大橋:eBay Japanでも、最初は買い手から参加して、慣れてきたら徐々に売り手側に移行すればいい。日本にはアメリカと違って、自分で作ったものを売っている人たちがいるでしょう。そういうコミケ的な売買もeBay Japanでやってくれ、と。売り手を焦って求めてはいないです。スローで行くんです。

インタビュー終了後、大橋氏の写真を撮影しようとしたところ断られてしまった。

大橋:eBayの主役は、売り手と買い手なんです。だから、僕の写真を撮るよりも、彼らが実際にやっているところを使ってください。

eBayはあくまでも裏方、黒子に徹しているということらしい。

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(2000/3/3)

[Reported by okada-d@impress.co.jp / nagasawa@impress.co.jp]


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