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中小企業向け電子メールサービスやホスティングを手掛けるクレイフィッシュ(4747、CRFH)が10日、東証マザーズに新規上場した。マザーズに上場した企業はこれで4社目。
同社はすでに8日、Nasdaqに新規上場しており、初日終値の公募価格に対する上昇(日本では公募価格に対しての初値をみるが米国は終値でみるのが一般的)では米国史上10番目の記録となった。翌日9日の終値は、前日比6ドル高の132ドル。NasdaqではADS(米国預託証券)での取引となっており、1普通株式が5,000ADS。132ドルを邦貨換算し1普通株式あたりに計算するとおよそ7,062万円となる。
さて、この動きを受けて更なる高騰も予想された10日のマザーズでの取引は、朝方から売り気配。公募価格1,320万円に対し、6,500万円の売り気配で始まり、前場終了時には5,360万円の売り気配、大引けでは4,500万円の売り気配で、気配値を大きく下げて結局初日は値段がつかなかった。東証は取引に先立って、取引の上限を当初の5,320万円から9,999万円に変更して過熱人気に備えたが、裏目に出たかたちとなった。初日に値段がつかないのはこれまで通りだが、売り気配となったのはマザーズで初めてのこと。大引けでは、380株の売りに対し113株の買い。
Nasdaqでの高いプレミアムに反したかたちとはなったものの、4,500万円を公募価格と比較するとそれでも3.4倍のプレミアムになっている。もっとも、利が乗っているからこそ、公募で購入した投資家の売りものが出ているともいえるだろうが。
企業
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コード
|
終値
|
前日比(%)
|
クレイフィッシュ
|
4747
|
45,000,000売り気配
|
-
|
光通信 |
9435 |
94,000
|
-31,000 ( -24.80)
|
ソニー
|
6758
|
26,300
|
-1,800 ( -6.41)
|
ソフトバンク
|
9984
|
99,200
|
-14,800 ( -12.98)
|
ヤフー
|
4689
|
133,000,000
|
-7,000,000 (-5.00)
|
インターキュー
|
9449
|
62,500
|
-10,000 ( -13.79)
|
ソフトバンクテクノロジー
|
4726
|
162,000
|
-8,000 ( -4.71)
|
日本オラクル
|
4716
|
94,000
|
+3,000 ( +3.30)
|
メッツ.
|
4744
|
11,300,000
|
-
|
平均株価
|
19,750.40
|
+88.07 ( +0.45)
|
|
TOPIX
|
1,633.30
|
-10.47 ( -0.64)
|
|
JASDAQ |
117.04
|
-0.96 ( -0.81)
|
この日のクレイフィッシュの軟調な展開は、株式市場全体の動きにも影響されたといえる。同社の大株主には光通信が入っている。その光通信はこのところ株価の下落が続いており、この日も社長がインサイダー取引で逮捕された(会社側は否定)との噂・観測から一段安となって、昨年11月5日以来4ヶ月ぶりに10万円の大台を割り込んだ。このほか、東証1部上場が報じられているオラクルが逆行高した以外は、ソフトバンクも10万円の大台を割り込み、プレイステーション2の不具合から一部の製品を回収すると発表したソニー、ヤフー、インターキュー、ソフトバンクテクノロジーなど情報通信関連の値嵩株が相次いで急落した。
こういった全体の動きが心理的にも作用し、大きくプレミアムをつけているクレイフィッシュで利益を確定しておこうとする動きがでてもおかしくはない環境だったのだ。
投資家にとっては株価の動きが気になるだろうが、今回のクレイフィッシュの上場ではもうひとつ考えたい面がある。
先にも述べたが、同社はNasdaqとマザーズに同時上場した。マザーズでは値段がついていないが、最終気配値で考えれば最低投資資金は売買単位が1株なので4,500万円必要になる。一方、米国の場合では9日終値が132ドルで邦貨換算するとおよそ1万4100円。基本的に米国株式市場の場合は1株から投資できるが、現実的に考えれば10株とか20株の注文を出す一般投資家が多いと思われるので、仮に10株(クレイフィッシュの場合でいえば10ADS)投資したとして、最低投資資金は14万1,000円になる。
つまり、米国では14万1,000円あればクレイフィッシュに投資することができるが、日本では最低4,500万円が必要になるわけだ。320倍もの開きがある。
取引が日米とも開始されており値段が動いているため、これではきちんと比較したとはいえないかもしれない。よって、公募価格を使って同じようにみてみると、日本では投資するのに最低1,320万円必要となるが、米国(公募価格24.5ドル)では約2万6,200円あれば投資できる計算になるのだ。504倍もの開き。
こうした状況になってしまうのは、単位株制度が関わってくる。米国には単位株制度はない。では、なぜ日本に単位株制度があるのか、そこのところははっきりとした理由付けは実際分からない。それにもかかわらず、この制度の廃止は考えられてはいないようだ。この制度からみれば「貧乏人は株式に投資するな」といっているようなものであろう。
最低投資資金が高いということは、流動性が相対的に低いことになる。流動性が低ければ、金融市場の基本である「売りたい時に売って、買いたい時に買う」というあたりまえのことができにくくなるわけだ。
マザーズ銘柄では具体的な例がある。ソフトウェア開発・販売のメッツ(4744)は2月18日に上場したが、1ヶ月も経たないうちに流動性を高めるためということで、3月6日に1→3株の大幅株式分割を発表した(実際には3月31日時点の株主に対し5月19日付で実施)。株式分割では、その割合にあわせて株価を調節するので、投資家が保有する持株が増加するだけで価値は上がらない。流動性を高める手段として使われ、通常は好感される。メッツにしても、基本的には好感できる発表だが、なぜ上場時からこうした姿勢が取れないのか非常に疑問ではある。
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(2000/3/10)
[Reported by betsui@impress.co.jp]