【業界動向】
ナスダック・ジャパンが開設、8社が上場申請し6月19日から売買開始
■URL
http://www.ose.or.jp/sijyo/sj_nj.html
http://www.nasdaq.co.jp/
大阪証券取引所とナスダック・ジャパンは8日、この日をもって正式にナスダック・ジャパン市場を開設するとともに新規上場申請第1陣の申請を受け付けたと発表した。これに伴ない、共同記者会見と上場申請受け付けの式典を東京都の宴会場・東京會舘で行なった。
大証の北村理事長は「効率的で利便性の高いワールドワイドな市場を目指す」と語り、上場申請した8社については「既存の市場と同様に速やかに上場の手続きを行なう」と述べた。
一方、ナスダック・ジャパンの佐伯代表取締役社長は「先週、ナスダック・ヨーロッパが発表され、そのなかでも日本は草分け的立場となり、いよいよグローバル市場実現へ向けての第一歩を踏み出すことになる」と述べたが、グローバルトレーディングが実現される時期については明言を避けた。ただ、上場企業数のペースとしては「毎月10社程度の企業がコンスタントに上場することを望んでおり、ソフトバンク関連企業にも積極的に参加してもらいたい」と述べた。
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報道陣が囲むなか、各社が順次北村理事長に申請書を手渡す |
上場を申請した企業とその概要などは以下のとおり(■は公募・売出しを予定)。
■エックスネット
http://www.xnet.co.jp/
システム開発や販売・サポートなどを手掛け、機関投資家を中心に資産運用サービス「XNETサービス」を展開。また、エイベックス・グループのホームページ「avexnet.or.jp」を企画・制作・運営する事業部門を分社化して設立されたエイベックス ネットワークに同社は出資している。吉川征冶取締役社長は「市場にはスター銘柄が必要で、できればそのような企業になりたい」と述べた。
■クリーク・アンド・リバー
http://www.cri.co.jp/
映像やマルチメディアなどのコンテンツ製作活動の管理・運営をプロデュースする。日本でデジタルコンテンツを制作する環境や、それを作り上げるクリエイターの環境ををできる限り整備し、その基盤も構築していくことを目標にしており、フリーランスのクリエイター約1万2,000人、600社とパートナーを組んでいる。井川幸広取締役社長は「国際発展を考えてナスダックを選んだ」と述べた。
■スギ薬局
http://www.drug-sugi.co.jp/
愛知県を中心に82店舗の調剤を併設したドラッグストアを展開。日用雑貨も販売している。米国では当たり前だが、日本では保険調剤施設を併設したドラッグストアは珍しいという。前期の売上高は292億円、経常利益は19億円。杉浦広一取締役社長は「売上高はここ3年で3.3倍とトップクラスの成長。ドラッグストアというと成長イメージをなかなかもってもらえないかもしれないが、高齢化社会を迎えることで10兆円とも20兆円ともいわれる大きな市場で、資金調達をして業容を急拡大していくつもり。また、ナショナルチェーンをつくり世界と競合したい」と述べた。
■デジタルデザイン
http://www.d-d.co.jp/
Linuxを搭載したマイクロサーバーやLinux対応のソフトウェアの企画・開発・販売を手掛ける。寺井和彦取締役社長は「オリジナルな商品やサービスを提供することをモットーとしており、そのためには企業認知度が必要。また、海外への展開も指向しているためナスダックを選んだ」と述べた。
■デジキューブ(店頭:7589)
http://www.digicube.co.jp/
コンビニエンスストアでのゲームソフト・ハードの販売などを手掛ける。ゲーム関連書籍や音楽の制作・販売も行なう。染野正道取締役社長兼COOは「インターネットによりグローバル化がさらに進むなか、グローバルで活発な取り引きが期待できることでナスダックを選んだ。IRに積極的という姿勢も当社と同じで一緒に新市場を作っていきたい」と述べた。
■ドン・キホーテ(東証2部:7532)
http://www.donki.com/
家電や日用雑貨などを販売する小売り業で、長時間営業で有名。今期の利用者は2,500万人、売上高740億円を見込み、期末の店舗数は現在の24店舗から27店舗になる予定。高橋取締役(代表取締役の安田隆夫氏は海外出張)は「ナスダックの国際性や革新性が企業理念と合致した」と述べた。
■ホンダベルノ東海(名証2部:7593)
http://www.vernotokai.com/
ホンダのディーラーだが、インターネットやIT関連に対しての投資も積極的に行なっている。高橋一穂取締役社長は「自動車ディーラーでは成長性が見込めないといわれるが、M&Aを積極的に行なうなど6期連続で増収増益になる予定。ディーラーというよりは、自動車を核としたベンチャー企業だ」と述べた。
■マスターネット(店頭:4697)
http://www.masternet.or.jp/
10円メールやカラオケソフト、金融情報を手掛けているが、基本接続料が無料のインターネット接続サービス「Internet Free Access ゼロ」を7月1日から開始すると同時に、社名もゼロ株式会社に変更する。西久保愼一取締役社長は「株式でもブランドが大切。取引所の創設は100年に1度ぐらいのものでそれに立ち会いたかった。また、海外投資家からの要望も強かった」と述べた。
■モーニングスター
http://www.morningstar.co.jp/
投資信託の情報サービスや格付けなどを行なう。
以上、9社の名前が挙がったが、実際に申請したのはマスターネットまでの8社。上場審査基準別では、収益性や資産性を有し、市場性の見込める企業を対象とするスタンダード第1号基準が、エックスネット、スギ薬局、デジキューブ、ドン・キホーテ、ホンダベルノ東海、売上高や総資産などの企業規模が大きく市場性の著しく見込める企業を対象とする(収益性、資産性は問わない)スタンダード第3号基準がクリーク・アンド・リバー、マスターネット、事業において潜在的な成長性を有し市場性の見込める企業を対象とするグロース基準(ベンチャー基準)がデジタルデザイン。
これら8社は、5月18日までに審査を終了して同日に上場を承認し、6月19日に8社同時上場・売買取引開始の予定となっている。モーニングスターは5月8日の申請が間に合わなかったが、近日中に上場申請し、8社のあとすぐ6月中に上場する予定だという。
なお、上場申請が承認されると速やかに会社概要など上場に伴なう資料が大証のWebサイト上にPDF形式で掲載される予定。
また、エックスネット、クリーク、スギ薬局、デジタルデザインの既存取引市場がないまったく完全な新規上場銘柄に加え、マスターネットの5社が公募・売り出し(ファイナンス)を行なう予定になっている。
東証2部上場のドン・キホーテと名証2部上場のホンダベルノ東海はナスダック・ジャパンとの重複上場となる見込み。しかし、店頭市場のデジキューブとマスターネットは日本証券業協会のルール上認められていないため、店頭登録取り消しとなる。
一方、大阪証券取引所では営業活動などを円滑に進めるために東京事務所を6月1日東京丸の内に開設する予定。
申請した企業は一様に「グローバル」や「ブランド」などをナスダック・ジャパンを選んだ理由に挙げた。確かに、ブランドとしてはすでにかなり強力なものであろう。しかし、実際にナスダック独自のシステムが稼動するまでは、取引の仕組みやルールは大証のものに準じて行なわれるため特別目新しいことはない。欧州や米国とのリンクも詳細はまったくみえていない。来年頃からはこれら「ブランド」以外のものが明らかになってくるはずで、その時点になってはじめてナスダック・ジャパンを評価できるのではないか。
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(2000/5/8)
[Reported by betsui@impress.co.jp]
ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp