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【業界動向】

第2段階に入ったソフトバンク・ファイナンスグループ~第3回事業説明会
不動産、貿易決済、知的財産権市場、地域振興などの新分野も

■URL
http://www.sbfinance.co.jp/
北尾氏

 ソフトバンク・ファイナンスグループ(SBF)が29日、第3回事業戦略説明会を開催した。


 ソフトバンク・ファイナンス代表取締役社長 北尾吉孝氏は「SBF23企業(うち1社はスルガ銀行SB支店で提携企業、SBインベストメント子会社を入れると全部で26企業)のうち、スルガ銀行SB支店を入れて14社がすでに営業を開始し、2社が営業開始予定となっいる」と述べ、順調に展開していることを強調した。
 なお、本年1月27日の第2回説明会の時点では、営業開始済み企業数は8社、営業予定企業数は6社だった。

 各グループ企業の現況などについては以下のとおり。


●既営業開始企業


モーニングスター http://www.morningstar.co.jp/
 投資信託の評価や分析情報の提供サービスを手掛ける。1999年12月決算の売上高は約2億8,900万円、営業利益は約2,500万円、純利益は約1,200万円と黒字決算。
 1999年12月に月刊誌「ファンドインベスター」をWebへ全面的に移管し、2000年4月末現在の月間ページビューは340万となっている。分析対象ファンド数は約1,800本、個別株レポート対象は約500銘柄にのぼっている。iモードやEZWeb、Jフォンでも情報提供を開始した。2000年6月23日にはナスダック・ジャパンに株式上場予定。

イー・トレード http://www.etrade.ne.jp/
 オンライン証券業。イー・トレード・グループの2000年3月決算の営業利益は約45億円、純利益は約14億円と黒字決算となっている。イー・トレード証券の2000年5月25日現在の顧客口座数は、約9万口座。取扱い投資信託の本数は325本で、これは国内最大規模となっている。
 また、ページビューが月間2,000万に達していることなどから2000年5月からはインターネット広告の営業も開始した。ナスダック・ジャパンに対応するため、大阪証券取引所の会員権も取得。オンライン証券では現在唯一といってよいという。2000年8月下旬に株式公開予定。

ソフトバンク・インベストメント http://www.sbinvestment.co.jp/
 ベンチャーキャピタルの運営・管理、公開支援コンサルタント。インベストメント・グループの1999年12月決算は、売上高が96億9,000万円、営業利益が68億6,000万円。新規設立ファンドとしては、1999年7月に総額123億円の「インターネット・ファンド」を設立し、すでに80社に投資している。2000年上半期には、総額およそ1,600~1,700億円(台湾のパートナーが追加出資を求めているため幅をもたせている)の「インターネット・テクノロジー・ファンド」を設立し、これは国内最大規模。
 2000年4月末の既存ファンドの実績は、ソフベン2号のパフォーマンスが536%、IRR(出資者利回り)が80.48%、SVエンジェルが同367%、40.04%。IRRは一般的にベンチャーの平均で5~6%程度だとしている。2000年12月下旬(おそらくクリスマスにあわせて)に株式公開予定。

サイバーキャッシュ http://www.cybercash.co.jp/
 EC店舗やモール向けオンライン決済サービスで、1998年5月から営業開始。大日本印刷やベルシステム21、マイクロソフトなど提携パートナーは約50社あり、サービス導入先はHMV、TBS、フジテレビ、ジャスコ、東京三菱銀行、住友商事、三井不動産などようやく増えてきた。稼動店舗数は1月の約70社から5月には約130店、月刊取引件数は12月の約2万7,000件から4月には約5万件にそれぞれ増加した。
 これまでの説明会では株式公開予定企業に名を連らねていたが、今回の説明会では名前が入っていなかった。

日本コグノテック(旧フォレックスバンク): http://www.forexbank.co.jp/
 2000年5月19日に社名変更したばかり。外国為替自動ディーリングのASPサービスを提供している。現在、同社のサービスを開始している金融機関はドイツ銀行、富士銀行、ウェスト・ドイチェ・ランデスバンク(西ドイツ銀行)の3行。このほか、サービス導入に関し基本合意している金融機関は3行あるという。
 アイルランドに本社を置くCognotecは、本年中に米国Nasdaqと欧州株式市場に上場予定。日本コグノテックも来年度に株式公開予定となっている。

インズウエブ http://www.insweb.co.jp/
 保険商品の比較検索サービスを提供し、2000年3月にオープン。住友海上、大東京、東京海上、三井海上、安田火災、アメリカンホーム、アクサが参加しており、10月以降は生命保険も取り扱う予定になっている。来年度に株式公開予定。

イー・ローン http://www.eloan.co.jp/
 ローン商品の比較検索サービスを提供し、営業開始は2000年1月19日。月間ページビューは約72万件、月間ビジター数は約15万件となっている。富士銀行、三和銀行、東海銀行、スルガ銀行など提携金融機関は16社ある。

イー・アドバイザー http://www.eadvisor.co.jp/
 フィナンシャルプランニングサービスをインターネットで提供し、営業開始は2000年3月から。米国パートナーDirectAdviceの基幹システム以外の開発部分のビジネスモデル特許を3月に出願したという。開設済みの「ライフプラン情報サイト」にて401(k)プランのシミュレーションを実施している。

イー・ネットカード http://www.enetcard.co.jp/
 インターネットを利用した消費者ローン、クレジットカードの顧客化委託業務の委託。1999年12月から営業を開始した。累積申込件数は、2000年1月24日の513件から5月19日には2,758件に大幅増加。貸付実行額は、2000年年初から3月末が6,900万円、4月月初から5月19日まで6,300万円となっている。なお、5月19日現在の貸付残高は1億2,400万円。

ウェブ・リース http://www.weblease.co.jp/
 総合リース業を展開し、2000年2月から営業を開始した。リース契約額は5月25日現在で28件、金額にして6億9,200万円。業績は、本年4月から月次ベースで黒字化しているという。ASPの関連案件やフリーPCなどのIT関連リースの受注が急増している。来年度に株式公開予定。

イー・ファイナンススクール http://www.efs.co.jp/
 オンライントレーディングの教育事業を展開し、2000年2月に開校した。株式入門やインターネット入門、イートレード入門など講座数は現在12講座。受講者数は約300人いる。オンラインでの株式トレーディング講座の準備中。

ソフトバンク・フロンティア証券 http://www.sbfrontier.co.jp/
 未公開株を扱う証券会社で、2000年1月にWebサイトをオープンした。現在、会員企業はベンチャーキャピタル、機関投資家、事業会社など53社。2000年5月25日に第1号未公開株式約5億円の取引を成立させた。今後は、毎月2~3銘柄、年内20銘柄程度の取引を実施する予定になっている。同社も来年度に株式を公開させる予定。

スルガ銀行ソフトバンク支店 http://www.surugabank.co.jp/softbank/
 2000年4月17日に支店を開設した。預金金利をスルガ銀行の店頭表示よりも高くするなど、今後の銀行・金融サービスを考える上でさまざまなことを模索していく実験店の扱い。

イー・ボンド証券
 低流動性債券の私設取引システム(PTS)の運営を行なう予定。1999年10月に資本金7億5,000万円で設立され、資本構成はSBF60%、リーマンブラザース証券40%。「取引市場は私企業がやるべきではないと考えているので、多数の出資者を募り両社とも今後大幅に出資比率を落としていく。これはナスダック・ジャパンにもいえること」(北尾氏)としている。
 2000年3月14日に証券業登録し、4月27日にはPTS認可申請、5月15日に証券業協会に加入した。今までにないPTSという市場のためか、認可が当初予定よりも遅れてはいるものの、7月には開業を予定している。

ソフトバンク・アセット・マネジメント
 イー・トレード証券向けの新商品や401(k)プラン専用の投資信託の企画設定を行なうために、2000年3月に資本金1億5,000万円(SBF100%出資)で設立された。4月28日には助言投資顧問業者として登録。モーニングスターのデータベース、イー・アドバイザーのライフ・プランニング・モデルを活用する。

ソフトバンクファイナンスの主要投資有価証券
社名
持株比率(%)
投資金額(百万ドル)
米国モーニングスター
20.00
91
米国インズウェブ
25.80
39
米国トレードスケープ
12.70
19
欧州コグノテック
17.00
30
米国コンピュバンク
22.10
18
米国トレードカード
3.89
4
米国PLX
8.65
5
#持株比率は潜在株式を含まない
#持株比率、投資金額はソフトバンクファイナンスグループおよびファンドでの保有分含む

●営業開始予定企業や今後の展開・戦略


不動産関連事業
 資本市場を利用した、新しい住宅金融システムを構築していく方針。そのため、ソフトバンクファイナンス内に「不動産事業推進室」を事業部門として新設する。住宅ローンや不動産の証券化や不動産投資信託(REIT)への取り組みを考えていく。
 また、SBFグループはエイブルに33.2%、ソフトバンクインベストメントはアパマンに6.9%(7月には増資に応じて出資比率16%に増加)と、それぞれに出資しており、賃貸情報について両社を最大限に活用し、不動産ポータルも構築する。
 SBFグループについても、不動産証券化商品の評価でモーニングスター、REITなどの販売でイー・トレード証券、商品の企画設定でソフトバンク・アセット・マネジメント、不動産証券化商品のマーケット提供でイー・ボンド証券などを最大限に活用する。

貿易決済事業
 これまでのソフトバンクの取り組みと同様に、すでに米国で成功しているものを日本に導入する。そのため、米国のTradeCardへSBFが3.89%、三菱商事と三井物産がともに2.91%すでに出資しており、日本でのジョイントベンチャー(JV)設立を準備している。
 TradeCardは、国際貿易においてLC(銀行による信用状)を前提とせず、国際貿易交渉、発注輸送手続支持・決済システム、保険など付加価値サービスをインターネットを利用して総合的に提供している。この分野では世界のパイオニア的存在で、ビジネスモデル特許をすでに出願中。
 「伊藤忠と丸紅が同様のことをやろうとしているようだが、TradeCardのビジネスモデル特許に抵触したら彼らはできないだろう」(北尾氏)としている。

知的財産権の取引市場の創設
 インターネット上における知的財産権の取引市場を創設していく。休眠特許を有効活用し、特許データベースを構築し提供することで、時間・コストの削減や新技術開発へ貢献していきたい。
 創設するために、米国のThePatent&License Exchange(PLX)へSBFグループが8.65%、伊藤忠商事が1.73%出資しており、日本でのJV設立を準備している。PLXは、企業の所有する休眠特許をデータベースに登録し、そのライセンスの取得を希望する企業間で、オークション方式によってライセンス価格を決定するシステムを提供している。

オフィスワーク社の設立
 SOHO向けバックオフィス・アウトソーシング化推進事業としてオフィスワーク株式会社(仮称)を設立する予定。経理事務のアウトソーシング、株式公開事務支援、ソリューション・プロデュースなどがサービス内容となる。

ソフィアバンク
新会社ソフィアバンク社長に
就任する田坂広志氏
 6月1日付けでシンクタンク「ソフィアバンク」を設立する予定。資本金は2億円でSBFとソフトバンク・インベストメントが折半出資する。代表取締役会長には北尾吉孝氏、代表取締役社長には多摩大学教授で日本総合研究所・フェロー兼顧問等を務める田坂広志氏が就任。田坂氏は「知識資本主義の時代に入った」とし、「どのようにマーケットが変化しようとニーズを的確に判断し対応できる企業が最強の企業だ」と述べ、新しい社会や産業に関するビジョンや戦略を提言していきたいと語った。

第2段階入りしたソフトバンクファイナンス・グループ
 2000年3月までが第1ステージで、これまではWeb上のワンストップ総合金融サービスの形成に力を入れてきた。4月からは第2ステージと位置付けて「アライアンス」、「グローバル戦略」、「地域振興」、「ベンチャーズ・コンソーシアム」の4つをキーとして、これまでの事業活動への評価で得た社会性を維持するとともに社会貢献活動を積極的に推進することで金融関連には無くてはならない社会的信用力を高めていくという。
 具体的には、グループ内企業の収益力を高めるとともに公開の推進を図り、グループ内外企業とのアライアンスも徹底する。特に、金融と物販は表裏の関係であり、顧客データベースの共有などソフトバンクコマースとの協力関係、結びつきを強化する。
 その関係強化も含めて、事業としては全社的に401(k)など年金に関する総合コンサルティングを実現させていく。
 また、地域振興コンソーシアムの構想も力を入れていく。有望企業への投資や支援を通じて地域経済振興を推進し、生活情報サービスとしてポータルサイトも構築。これらの活動を通じて地域コミュニティーのネットワーク化を図っていく。
 このほか、これまでの成功体験を積極的にアジア各国へ移出していくことも積極化する。
 なお、ソフトバンクファイナンスは2000年3月期決算基準で株式を公開する予定。「SBFはヤフーを超えるようなファイナンシャルポータルをつくっていくつもり」(北尾氏)という。

 最後に北尾氏は更迭の噂や孫正義氏との対立などの観測について「言いたいことははっきり言うタイプなのでそのように誤解される面もあるかもしれないが、例えば公開企業のCEOになる人間がソフトバンクの常務になるのは物理的にもレギュレーション的にも無理なので、常務を辞めることは私から社長に言った。もし、不和、対立、もしくは喧嘩をすれば私はいつまでもいない。即刻やめている」ときっぱり否定し、「ガセネタを流すのはやめて欲しい」と述べた。


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/www/article/2000/0127/sbf.htmt

(2000/5/29)

[Reported by betsui@impress.co.jp]


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