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BOLの田中功社長
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田中氏はまずBOLの現状を説明。オープンした6月から7月はアクセスが今ひとつだったが、テレビやラジオなどのマス展開で認知度を高め、ネットレイティングスのWeb視聴率調査では、8~9月はオンライン書店ジャンルで4位、10月は1位になったと述べ、好調ぶりをアピールした。また独自の企画として、スティーブン・キングの単行本「ライディング・ザ・ブレット」(価格は1,000円)を3種の装丁で販売したことに触れ、「2000部限定のオリジナル装丁版は初日で完売したんですが、その後オークションサイトで1万円で取引されていたのを見かけまして」(田中氏)と苦笑していた。通常装丁になってからも同書は好評で、また次いで発行されたキングの「スタンド」も好調な売れ行きを見せている。
「現在、BOLの売上ランキングは、リアルの書店ベストセラーとほぼ共通した状態です。夜のほうがアクセスは多いですが、極端なピークタイムはなく、オフィスからの注文は30%程度といった状況。また、書店が少ない地域より、多い地域からのほうが注文が多いですね」(田中氏)
マスメディアで積極的に展開し、認知度を高めたといえるBOL。だが、現在この点を含めたコミュニケーション戦略全体について、見直している段階という。「日本の15歳以上の人口が1億800万人、ネット人口が3,000万人とすると、テレビを見ている7割はインターネットを使わないといえます。テレビなどの露出で知名度は上がったが、ここにアピールし続けるのがよいのか、それとももっと絞り込んだほうがよいのかが課題です」(田中氏)。先のキングのような出版社と協力した独自展開は、今後さらに増やしたいという。
現在のBOLは書籍のみだが、2001年夏にはCDやビデオ、DVDなど、他ジャンルの製品も揃う総合メディアショップを目指している。これにはどの国のBOLがモデルになるのかと聞いたところ、「総合メディアショップとしては、グループで最も進んでいるドイツ・イギリスでも、まだ完成したとはいえない。これらの形が正しいかも現時点では断定できないし、また他の国の商習慣に合うかといった問題もあります。BOLでは『InterLocality』という造語を使っています。これはグローバルに展開するが、各国市場にも合わせていくという意味があって、日本でもこの言葉を念頭に置いた展開になります」(田中氏)という。
BOLのトップ。現在はクリスマスキャンペーンを行なっている
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現在、BOLは年内配送料無料サービスを実施中だが、11月にオープンしたAmazonも、オープン記念として同様のサービスを展開している。これは相当意識しているかという質問には、「オンライン書店のパイはまだまだ小さいもの。日本で約3,000万人のインターネット利用者がいるとしても、オンライン書店の利用者は、現状ではその約6%の200万人前後です。それを考えると、Amazonの開設で人々がオンライン書店を知って利用するきっかけができれば、オンライン書店自体の認知度を高められ、パイを大きくできる形になります。数年後は競合になるだろうが、今はむしろ協力相手といえるほど」(田中氏)と、余裕ともいえる発言。Amazonとの違いについては「BOLはあくまでメディアショップ。Amazonは手を広げようという方向ですね。また、うちは配送などはアウトソーシングですが、あちらは配送も自社で行なっています。その点は大きく違ってきますね」(田中氏)と、ビジネスの方向としても違いのある点を強調した。
BOLはグループの設立から約2年、現在、グループ全体でも収益はまだ出ていない。田中氏は「書籍やCDなどのメディア製品は、性質的に利ざやが大きいものではない。事業開始から3~4年は経たないと、単年度の黒字はないだろうと見ています。マスに行くことで、ようやく回収できるもの」と言い、オンラインメディアショップの難しさを指摘した。「BOLジャパンだけでみれば、今のユーザーの約3倍がクリティカルマスになるのではと考えています」(田中氏)と見ている。
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(2000/12/7)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]